射影行列の定義と7つの大切な性質

最終更新 2018年 4月15日
 
目次
- 射影行列の定義
-
- 正規直交基底による表現
- $1-P$ も射影行列
- 固有値
- 半正定値行列
- 積が $0$ と部分空間の直交性
- 交換可能な積
- スペクトル分解
定義
  正方行列 $P$ が
射影行列の定義
を満たすとき、 $P$ を実ベクトル空間上の射影行列という。

  次の行列
射影行列の例
は射影行列である。 実際に計算してみると、
が成り立つ。
正規直交基底による表現
  任意のベクトル $\mathbf{x}$ に射影行列 $P$ を作用した $P \mathbf{x}$ の全体は、部分空間を成す。 この部分空間の正規直交基底を $\{ \mathbf{e}_{1}, \mathbf{e}_{2}, \cdots, \mathbf{e}_{m} \}$ とするとき、 $P$ は、
射影行列の性質01
と表される。
$1-P$ も射影行列
  $P$ が射影行列のとき、 $1-P$ も射影行列である。 また、任意のベクトル $\mathbf{x}$ に $P$ を掛けたものと、 $1-P$ を掛けたものは直交する。 すなわち、
射影行列の直交性
が成り立つ。

証明
  $1-P$ も射影行列
  射影行列の定義から、
が成り立つ。 したがって、 $1-P$ もまた射影行列である。
直交性
  任意のベクトル $\mathbf{x}$ に対して、 射影行列の定義内積と転置行列の関係によって、
射影行列の直交性
が成り立つ。 したがって、 $P\mathbf{x}$ と $(1-P)\mathbf{x}$ は直交する。

射影行列の固有値
  射影行列の固有値 $\lambda$ は、
射影行列の固有値
である。

証明
  $P$ の固有値を $\lambda$、 $\mathbf{x}_{\lambda}$ を固有値 $\lambda$ を持つ固有ベクトルとする。 このとき、
が成り立つ。 これより、 $P\mathbf{x}_{\lambda}$ 同士の内積は、
と表される。 一方、 射影行列の定義内積と転置行列の関係をにより、
とも表せる。 これらから、
であるので、
が成り立つ。 ここで $\mathbf{x}_{\lambda}\neq 0$ ( $ \left\| \mathbf{x}_{\lambda} \right\|^2 \neq 0 $ ) を用いた。 これを整理すると、
であるので、
である。

半正定値行列
  射影行列 $P$ は、半正定値行列である。すなわち、
射影行列は半正定値行列5
が成り立つ。

証明
    射影行列 $P$ と 実ベクトル空間の任意のベクトル $\mathbf{x}$ を用いた内積 $(\mathbf{x}, \hspace{1mm}P\mathbf{x})$ には、 定義内積と転置行列の関係によって

  ところで、 任意のベクトル $\mathbf{x}$ に対して、
を満たす行列 $M$ を半正定値行列であるという。
  したがって、 $(3)$ は、 $P$ が半正定値行列であることを表している。

積が $0$ と部分空間の直交性
  部分空間 $V_{1}$ 上への射影行列 $P_{1}$ と、 部分空間 $V_{2}$ 上への射影行列 $P_{2}$ の積が $0$ であるならば、 部分空間 $V_{1}$ と $V_{2}$ は直交する。 すなわち、
射影行列と部分空間の直交性
である。
  また、 その逆も成立する。
交換可能な積
  部分空間 $V_{1}$ 上への射影行列 $P_{1}$ と、 部分空間 $V_{2}$ 上への射影行列 $P_{2}$ が交換可能な場合、 すなわち、
交換可能な射影行列の積
の場合には、 $P_{1}P_{2}$ が $V_{1}$ と$V_{2}$ の共通部分の上への射影行列になる。
スペクトル分解
正規行列 $A$ は、 固有値 $\overline{\lambda}_{i}$ の固有空間 $E_{\overline{\lambda}_{i}}$ 上への射影行列 $P_{\overline{\lambda}_{i}}$ によって、
スペクトル分解と射影行列
と表すことができる。 ここで、$r$ は、値の異なる固有値の数である。 これを行列のスペクトル分解と呼ぶ。