直交行列の定義と大切な性質

最終更新 2018年 2月6日
目次
- 直交行列の定義
- 直交行列の積
- 直交行列の逆行列
- 直交行列は群を成す
- 直交行列の行列式
- 直交行列の固有値
- 直交行列は角度と距離を一定に保つ
- 直交行列の列ベクトルは正規直交基底
- 直交行列は片側のみで定義可能
- 実対称行列の対角化
- QR分解
- 極分解
直交行列の定義
  正方行列 $R$ が
直交行列の定義
を満たすとき、 直交行列という。 ここで、 $T$ は行列の転置を表す。
直交行列の積
    $R$ と $S$ が直交行列であるとき、 これらの積 $RS$ もまた直交行列である。 すなわち、
直交行列の積
が成り立つ。

証明
  $R$ と $S$ を直交行列とする。 すなわち、
を満たす行列であるとする。 このとき、 行列の積の転置行列が 積の順番を逆にした転置行列の積に等しい という性質
を用いると、
が成立し、 また、
が成立する。 ゆえに、
が成立するので、 積 $RS$ もまた直交行列である。

直交行列の逆行列
  直交行列 $R$ の逆行列は 転置行列である。 すなわち、
直交行列の逆行列
である。

証明
  一般に正方行列 $A$ の逆行列とは、
逆行列の定義
を満たす行列 $B$ である。 このような $B$ を
と表すことになっている。
  これを踏まえて、 直交行列の定義
を見てみると、 $R^{T}$ が $R$ の逆行列であることが分かる。 すなわち、
である。

直交行列は群を成す
    $n$ x $n$ の直交行列全体の集合は、 行列の積に対して以下の3つの性質を持つ。
1.   積もまた直交行列になる。
2.   単位元がある。
3.   逆元がある。
このことから、 $n$ x $n$ の直交行列の集合全体が群を成すことが分かる。 これを直交群と呼び、$\mathrm{O}(n)$ と表される。
直交行列の行列式
  $R$ を直交行列とするとき、 $R$ の行列式は
直交行列の行列式
である。
直交行列の固有値
  $R$ を直交行列とするとき、 直交行列 $R$ の固有値を $\lambda$、 固有ベクトルを $\mathbf{x}_{\lambda}$ とする。
このとき、
である。
直交行列は距離と角度を不変に保つ
  $R$ を直交行列、 $\mathbf{u}$ と $\mathbf{v}$ を任意のベクトルとするとき、
直交行列は距離を不変に保つ
直交行列は角度を不変に保つ
が成立する。
  上の式は、 変換前後で距離が保たれることを意味し、 下の式は、 角度が保たれることを意味する。
直交行列の列ベクトルは、正規直交基底を成す
  行列 $R$ の列ベクトルを
直交行列の列ベクトル
と表すとき、 $R$ が直交行列であることと、 これらが正規直交基底を成すこと
直交行列の列ベクトルは正規直交基底
は、 互いに必要十分条件である。
片側のみで定義できる
正方行列 $R$ が $R^{T}R=I$ を満たすとき、$RR^{T} = I$ が成立する。 すなわち
直交行列は片側のみで定義可能
が成立する。
  このことから、直交行列は
の条件だけで定義できる。

証明
  $R$ を直交行列とすると、 定義から \begin{eqnarray} R^{T}R=I \end{eqnarray} $$ が成り立つ。 これより、$ R^{T}R$ の行列式は \begin{eqnarray} | R^{T}R| = 1 \end{eqnarray} である。
  一般に行列の積の行列式は行列式の積に等しいので、 \begin{eqnarray} |R^{T}| \hspace{1mm}|R| = 1 \end{eqnarray} が成立する。 また、 転置行列の行列式ともとの行列式は等しいので、 \begin{eqnarray} |R^{T}| = |R| \end{eqnarray} が成立する。 したがって \begin{eqnarray} |R^{T}|^{2} = 1 \end{eqnarray} である。 これより、 \begin{eqnarray} |R^{T}| \neq 0 \end{eqnarray} である。
  一般に行列式が 0 でない行列は逆行列を持つので、 \begin{eqnarray} (R^{T})^{-1} R^{T} = R^{T}(R^{T})^{-1} = I \end{eqnarray} を満たす行列 $(R^{T})^{-1}$ が存在する。 これより
が成立する。 以上から、
である。

実対称行列の対角化
  任意の実対称行列 $A$ は、 直交行列によって対角化可能である。 すなわち、 $$ R^{-1} A R = \Lambda $$ を満たす対角行列 $\Lambda$ と直交行列 $R$ が存在する。
QR分解
  任意の正則行列 $X$ は、 直交行列 $R$ と上三角行列 $T$ の積に分解できる。 すなわち、
QR分解
と分解できる。 この分解をQR分解 (QR-decomposition)という。
極分解
  任意の実正方行列 $M$ は、 直交行列 $R$ と半正定値行列 $P$ の積に分解するできる。 すなわち、
行列の極分解
と分解できる。 この分解を極分解 (polar decomposition)という。