半正定値行列の満たす諸性質と証明

最終更新 2018年 3月4日
半正定値行列の定義
  任意のベクトル $\mathbf{x}$ に対して、 実対称行列 $P$ が
半正定値行列の定義
を満たすとき、 $P$ を半正定値行列 (positive semi-definite matrix) という。
  半正定値行列の固有値
  $P$ を半正定値行列、 $\lambda$ を $P$ の固有値、 $\mathbf{x}_{\lambda}$ を固有値 $\lambda$ を持つ固有ベクトルとするとき、 すなわち、
とするとき、
半正定値行列の固有値
である。
  つまり、 半正定値行列の固有値は $0$ 以上である。

証明
  $P$ を半正定値行列とする。 どんな正方行列にも固有値と固有ベクトルが存在するので、
を満たす のベクトル $\mathbf{x}_{\lambda}$ ($\mathbf{x}_{\lambda} \neq 0$) と複素数 $\lambda$ が存在する。
  $P$ が半正定値行列であるから、
が成り立つ。
  左辺を書き直すと、
となるので、
が成り立つ。
  最後に $\| \mathbf{x}_{\lambda} \|^{2} \neq 0$ であるので、
を得る。

  半正定値行列の分解
  任意の半正定値行列 $P$ は、 正方行列 $Q$ とその転置行列 $Q^{T}$ によって、
半正定値行列の分解
と分解することが出来る。
半正定値行列の同値条件
  次の $(1)(2)(3)$ は、同値である。
$(1)$ 任意のベクトル $\mathbf{x}$ に対して、 実対称行列 $P$ が $$ \left(\mathbf{x}, \hspace{1mm} P \mathbf{x} \right) \geq 0 $$ を満たす (半正定値行列の定義)。
$(2)$ 半正定値行列 の固有値 は $0$ 以上である。
$(3)$ 任意の半正定値行列 $P$ は、 正方行列 $Q$ とその転置行列 $Q^{T}$ によって、 $$ P = Q^{T}Q $$ と分解することが出来る。
 

証明
 
● $(1) \Longrightarrow (2)$ は、半正定値行列の固有値を参考。
● $(2) \Longrightarrow (3)$ は、半正定値行列の分解 を参考。
● $(3) \Longrightarrow (1)$
  $P=Q^{T}Q$ と表されるならば、任意のベクトル $\mathbf{x}$ に対して、  
半正定値行列の同値条件
が成り立つ。 2行目の等号では内積と転置行列の関係を用いた。
  以上から $(1)(2)(3)$ は、同値である。

半正定値行列のトレース
  半正定値行列 $P$ のトレースは 0 以上である。 すなわち
半正定値行列のトレース
である。

証明
  $n$ 次正方行列 $A$ の作用するベクトル空間の任意の正規直交基底を $\{\mathbf{e}_{1}, \mathbf{e}_{2}, \cdots, \mathbf{e}_{n} \}$ と表すとき、 $A$ のトレースは、
と表せる (トレースの正規直交基底による表現を参考)。
  $A$ が半正定値行列の場合、 任意のベクトル $\mathbf{u}$ に対して、
が成り立つので、
である。 したがって
が成り立つ。

トレースが $0$ の半正定値行列は $0$
  半正定値行列 $P$ のトレースが $0$ であるならば、 $P$ も $0$ である。 すなわち、
半正定値行列が0になる条件
である。