射影行列の正規直交基底による表現  

最終更新 2018年 2月3日
  正方行列 $P$ が
射影行列の定義
を満たすとき、 $P$ を実ベクトル空間上の射影行列という。
  任意のベクトルを $\mathbf{x}$ とするとき、$P \mathbf{x}$ の全体は、部分空間を成す。 この部分空間の正規直交基底を $\mathbf{e}_{1}, \mathbf{e}_{2}, \cdots, \mathbf{e}_{m}$ とするとき、 $P$ は
射影行列の表現
と表される。

  証明

 
部分空間を成すこと
  正方行列 $P$ が射影行列であるとする。すなわち、
を満たすとする。
  $P$ の作用するベクトル空間を $V$ とし、 $V$ の全ての元に $P$ を作用して得られる集合を $M$ とする。 すなわち、
とする。
  このとき、$M$ の任意の二つの元を $\mathbf{y}_{1}, \mathbf{y}_{2}$ とし、 これらの写像元となっているベクトルを $\mathbf{x}_{1}, \mathbf{x}_{2}$ とする。 すなわち、
とする。 このとき、
が成立し、 $ \mathbf{x}_{1} + \mathbf{x}_{2} \in V $ であるので、 $(3)$ から、
である。
  同じように、 $M$ の任意の元を $\mathbf{y}$ とし、 写像元となっているベクトルを $\mathbf{x}$ とする。 すなわち、
とすると、 任意の複素数 $\alpha$ に対して、
が成立する。 $\alpha \mathbf{x} \in V$ であるので、 $(3)$ から、
である。 以上の $(4)$ と $(5)$ から、$M$ はベクトル空間 $V$ の部分空間を成す。
射影行列の表現
  上の議論から、 ベクトル空間 $V$ の任意のベクトル $\mathbf{x}$ に対し、
によって定義される $\mathbf{y}$ は、 部分空間 $M$ の元となる。
  $M$ が部分空間を成すことから、 $M$ の元である $\mathbf{y}$ は、 $M$ の正規直交基底
の線形結合によって表すことができる。 すなわち、
と表せる。 ここで $\beta_{i}$ は線形結合の係数であり、 $m$ は $M$ の次元である。 また、 $\{\mathbf{e}_{i} \}$ が正規直交基底であることから、
が成立する。 $\delta_{ij}$ はクロネッカーのデルタであり、 $i,j=1,2,\cdots,m$ である。
  $\mathbf{e}_{j}$ と $\mathbf{y}$ との内積を考えると、 $(7)$ と $(8)$ から、
となる。 これより $(7)$ は、
と表せる。 また、$(6)$ から、この式は、
と表せる。 ここで、 内積と転置行列の関係と $(2)$ から、
が成立するので、 $(9)$ は、
と表せる。
  ここで、 $\mathbf{e}_{i}$ が 部分空間 $M$ のベクトルであることから、
となる $V$ のベクトル $\mathbf{z}_{i}$ が存在し ($(3)$ 付近を参考)、 これと $(1)$ から、
が成立する。
  よって、 $(10)$ を
と表せる。
  $\mathbf{x}$ が任意のベクトルであるので、 この式から、
が成立する ( 任意のベクトルに二つの行列を作用した結果、 それらが等しいベクトルになるならば、 作用した行列同士が等しいことを用いた)。
  以上から、 射影行列は、部分空間の正規直交基底によって、 $(11)$ のように表される。
必要十分条件であること
  上の議論とは逆に、$(11)$ を $P$ の定義とすると、
と、
が成立するので、 $P$ は射影行列である。 ここで内積が $(\mathbf{e}_{i}, \mathbf{e}_{j}) = \mathbf{e}_{i}^{T} \mathbf{e}_{j}$ で定義されていることを用いた。
  よって、 $(11)$は、 $P$ が射影行列であるための必要十分条件である。
簡単な例
  基本ベクトル
のうち、 $\{\mathbf{e}_{1}, \mathbf{e}_{2} \}$ は、 3次元ベクトル空間の部分空間を構成する正規直交基底である。 これらによって行列 $P$ を
と定義すると、 上の議論から、 $P$ は射影行列である。
  具体的に表すと、
である。
  この行列を任意のベクトル
に作用すると、
となり、 部分空間の成分だけが抽出される(下図)。
射影行列の定義と表現の図00