対角行列の性質
対角行列の定義
$n \times n $ の正方行列 $A$ の各成分を $a_{ij}$ と表すとき、
を満たす行列を
対角行列という。
行列で表すと、対角成分を除く成分が $0$ である次のような形行列になる。
具体例: (対角行列)
以下の行列は対角行列である。
以下の行列は対角行列ではない。
対角行列の積と可換性
対角行列同士の積は対角行列になる。
しかも対角成分が個々の対角行列の対角成分の積になる。
すなわち、
のとき、
の形の行列になる。
また、
対角行列同士の積は
可換である。
すなわち、
が成り立つ。
証明
行列 $A$ と $B$ を
対角行列とする。
すなわち、
$$
\tag{1}
$$
を満たす行列であるとする。
行列 $AB$ の $i$ 行 $j$ 列成分 $(AB)_{ij}$ は、
$ i \neq j $ の場合、
行列の積の定義と $(1)$ から
$$
\tag{2}
$$
であるので、$AB$ は対角行列である。
一方、対角成分 $(AB)_{ii}$ は
$$
\tag{3}
$$
であるので、
$AB$ 対角成分が $A$ の対角行列と $B$ の対角成分の積に等しい。
また、
$BA$ について $AB$ と同様に考えると、
$ i \neq j $ の場合、
であり、
$i=j$ の場合、
である。
これらと $(2)$ と $(3)$ から、
が成り立つ。
したがって、
対角行列 $A$ と $B$ の積は可換 ($AB=BA$) である。
対角行列の行列式
対角行列の
行列式は対角成分の積に等しい。すなわち
が成り立つ。
対角行列の逆行列
対角行列
の逆行列 $A^{-1}$ は、
対角成分が $A$ の対角成分の逆数に等しい対角行列である。
すなわち、
の形をした行列である。
ここで $a_{ii} \neq 0$ $(i=1.2.\cdots,n)$ とした。
対角行列の固有値
対角行列
の固有値 $\lambda$ は、
$A$ の対角成分のいずれかに等しい。
証明
$A$ の固有値を $\lambda$ とすると、
$\lambda$ は
固有方程式
$$
\tag{1}
$$
の解である。
ここで $\lambda I - A$ は
の形をした対角行列であるので、
対角行列の行列式の性質により、
である。これより
$(1)$ は
と表されるので、
である。すなわち、対角行列 $A$ の固有値は $A$ の対角成分のいずれかである。