3行3列の行列を対角化する例題

最終更新 2018年 3月 13日
  行列
3行3列の行列を対角化する例題
を対角化せよ。
  また、$A$ を対角化する正則行列を求めよ。

  解答例

  一般に行列の対角化とは、 正方行列 $A$ に対し、
を満たす対角行列 $\Lambda$ を求めることである。 ここで、 $P$ は正則行列であり、 $A$ を対角化する行列と呼ぶ。
  今回の例題では、 正方行列 $A$ を
とし、 対角行列 $\Lambda$ を求め、 その後、正則行列 $P$ を求める。
● 対角行列 $\Lambda$ の導出
  一般に、 対角化された行列は、 対角成分がもとの行列の固有値になることが知られている。 よって、 $A$ の固有値を求めて、 対角成分に並べれば、 対角化した行列 $\Lambda$ が得られる。
  $A$ の固有値 $\lambda$ を求めるには、 固有多項式
を $\lambda$ について解けばよい。 左辺は3行3列の行列式であるので、
である。 よって、 $(1)$ は、
と表される。 3次方程式であるので、 解くのは簡単ではないが、 左辺を因数分解して表すと、
となるため、 解は
である。 固有値が求められたので、 対角行列 $\Lambda$ は、
である。
● 対角する正則行列 $P$ の導出
  一般に対角化可能な行列 $A$ を対角化する正則行列 $P$ は、 $A$ の固有ベクトルを列ベクトルに持つ行列である (対角化可能のための必要十分条件の証明の $(\mathrm{S}3) \Longrightarrow (\mathrm{S}1)$ の部分を参考)。
  よって、 $A$ の固有値 $\lambda= -1,1,2$ に対するそれぞれの固有ベクトルを求めれば、 $P$ が得られる。
$\lambda=-1$ の場合 :
  固有ベクトルは、
を満たすベクトル $\mathbf{x}$ である。
と置いて、具体的に表すと、
である。 各成分ごとに表すと、 連立一次方程式
が現れる。 これを解くと、
である。 これより、 固有ベクトルは、
である。 $x_{3}$ はどんな値であってもよい(補足を参考)。 ここでは、 便宜上 $x_{3}=1$ とし、
とする。
$\lambda=1$ の場合:
  固有ベクトルは、
を満たすベクトル $\mathbf{x}$ である。
と置いて、 具体的に表すと、
である。 各成分ごとに表すと、 連立一次方程式
が現れる。 これを解くと、
である。 これより、 固有ベクトルは、
である。 $x_{3}$ はどんな値であってもよい(補足を参考)。 ここでは、 便宜上 $x_{3}=1$ とし、
とする。
$\lambda=2$ の場合:
  固有ベクトルは、
を満たすベクトル $\mathbf{x}$ である。
と置いて、 具体的に表すと、
である。各成分ごとに表すと、 連立一次方程式
が現れる。 これを解くと、
である。 これより、 固有ベクトルは、
である。 $x_{3}$ はどんな値であってもよい(補足を参考)。 ここでは、 便宜上 $x_{3}=1$ とし、
とする。

  上で述べたように、 行列 $A$ を対角化する正則行列 $P$ は、固有ベクトルを列ベクトルに持つ行列であるので、 $(2)(3)(4)$ より、
である。

  結果の確認

  $(5)$ で得られた行列 $P$ が実際に行列 $A$ を対角化するかどうかを確認する。 すなわち、 行列 $P$ と 対角行列 $\Lambda$ が
を満たすかどうか確認する。
  そのためには、 $P$ の逆行列 $P^{-1}$ を求めなくてはならない。
逆行列 $P^{-1}$ の導出:
  掃き出し法によって逆行列 $P^{-1}$ を求める。 そのためには、 $P$ と単位行列 $I$ を横に並べた次の行列
を定義し、 行基本変形によって、 左半分の行列を単位行列にすればよい。
その結果として右半分に現れる行列 $X$ が $A$ の逆行列になる (証明は掃き出し法による逆行列の導出を参考)。
  この方針に従って、 上の行列の行基本変形を行うと、
である。 よって、 逆行列 $P^{-1}$ は、
である。
  これより、 $P^{-1}AP$ は、
となるので、 確かに行列 $P$ は、 行列 $A$ を対角化する行列になっている。
 補足:   連立一次方程式の解が不定になることについて
  固有ベクトルを求めるときに現れた連立一次方程式の解には、 任意性が含まれていたが、 これは次のような理由による。
  固有ベクトルを求めるときには、 連立一次方程式
を固有多項式
の条件のもとで導出する。
  一般に、 行列式が 0 でないことと列ベクトルが互いに線形独立ではないことは必要十分条件であるので、 行列 $\lambda I -A$ の列ベクトルは互いに線形独立ではない。 また、 行列のランクの定義から分かるように、 互いに線形独立でない列ベクトルを持つ正方行列のランクは、 その行列の列の数よりも少ない。 ゆえに、
が成立する。
  ところで、 連立一次方程式の解が唯一つにならないための必要十分条件は、 係数行列のランクが列の数よりも少ないことであるから、 $(7)$ によって、 連立一次方程式 $(6)$ の解が唯一つにならない(任意性を持つ)ことが示される。
  このように、 固有ベクトルを求める連立一次方程式の解は、 いつでも任意性を持つことになるが、 必要に応じて、 固有ベクトルに対して、 条件を課し、任意性を取り除くことがある。 そのとき、 最も使われる条件は、規格化条件
である。 ただし、 これを課した場合には、 大きさ 1 の数の分だけの任意性が残されるので、 それぞれの問題に相応しいように、 その任意性を決めなくてはならない。