連立一次方程式の一般的性質

最終更新 2018年 11月25日
  連立一次方程式の一般的な性質を記したページです。 具体的な計算方法を知りたい方は、 「連立一次方程式の6つの例題」を参考にして下さい。
一般論
- 諸定義
- 解が存在するための必要十分条件
- 解が唯一つであるための必要十分条件
- 同次連立一次方程式の解空間の次元
変数の数 = 式の数の場合
- 解が唯一つ $\Longleftrightarrow$ 係数行列が正則行列
- 列が線形独立 $\Longleftrightarrow$ 自明な解のみ
- 自明な解以外のを持つ $\Longleftrightarrow$ 係数行列の行列式 = 0
- クラメルの公式
諸定義
  変数の数が $n$ で式が $m$ 個の連立一次方程式
連立一次方程式
$$ \tag{1} $$ に対して、 行列 $A$ とベクトル $\mathbf{x}$ と $\mathbf{b}$ を
係数行列
と定義すると、 連立一次方程式 $(1)$ を
と表すことができる。 このとき $A$ を $(1)$ の係数行列という。 また、行列 $A$ の列ベクトルに $\mathbf{b}$ を追加して定義される行列
を $(1)$ の 拡大係数行列 という。 また、 $\mathbf{b}=0$ の場合の連立一次方程式
同次連立一次方程式という。
解の存在 $\Longleftrightarrow \hspace{1mm} \mathrm{rank}(A) = \mathrm{rank}\left( \left[A \hspace{1mm} \mathbf{b} \right] \right)$
  連立一次方程式
が解を持つための必要十分条件は、係数行列 $A$ と 拡大係数行列 ランクが等しいことである。 すなわち、
連立一次方程式の解が存在するための必要十分条件
が成り立つ。
  これを ルーシェ・カペリの定理 (Rouche-Capelli theorem) という。

証明
準備
  連立一次方程式
$$ \tag{1} $$ の 係数行列 $A$ の列ベクトルを
と表すと、 拡大係数行列は、
である。 $[A \hspace{1mm} \mathbf{b}]$ は、 $A$ よりも $1$ 列だけ列ベクトルの多い行列である。
  いま、 $A$ の列ベクトルに $r$ 個の線形独立なベクトルが含まれているとすると、 $[A \hspace{1mm} \mathbf{b}]$ の列ベクトルには、 $r+1$ 個の線形独立なベクトルが含まれているか、 $r$ 個の線形独立なベクトルが含まれているかのどちらかである。
  このことは、 行列のランクの定義
を用いて次のように書き直せる。 すなわち、 $A$ のランクが $r$ であるならば、 $[A \hspace{1mm} \mathbf{b}]$ のランクは $r+1$ であるか、$r$ であるかのどちらかである。 式で表すと
である。 以下では、 これらのうちの
$$ \tag{2} $$ が連立一次方程式 $(1)$ が解を持つための必要十分条件であることを証明する。
「$(2) \hspace{1mm} \Longrightarrow \hspace{1mm} (1)$ が解を持つ」の証明
  連立一次方程式 $(1)$ に対して、
が成り立つと仮定する。
  この仮定は、 行列 $A$ に $\mathbf{b}$ を追加して、 $[A \hspace{1mm} \mathbf{b} ]$ としてもランクが変わらないことを表している。 行列のランクとは、その行列に含まれる線形独立な列ベクトルの数であるので、 $A$ に $1$ 列追加してできる行列のランクが変わらないならば、 $A$ の列ベクトルと $\mathbf{b}$ が線形従属でなくてはならない (もしも線形独立であるならば、$[A \hspace{1mm} \mathbf{b} ]$ のランクの方が $A$ のランクよりも $1$ だけ大きくなる)。 このことは、 $\mathbf{b}$ が $A$ の列の線形結合によって表せることを意味する。 すなわち、
を満たす係数 $t_{1}, t_{2}, \cdots, t_{n}$ が存在する。 この式は、$ \mathbf{t} = [t_{1}, t_{2}, \cdots, t_{n} ]^{T}$ と定義することにより、 次のように言い表される。すなわち、
を満たす $\mathbf{t}$ が存在する。 これは、 連立一次方程式 $ A \mathbf{x} = \mathbf{b} $ が解 $\mathbf{x} = \mathbf{t}$ を持つことを表している。
「$(1)$ が解を持つ $\hspace{1mm} \Longrightarrow \hspace{1mm}$ $(2)$ 」の証明
  連立一次方程式
が解を持つと仮定する。
  連立一次方程式が解を持つとは、
を満たす $\mathbf{t}$ が存在することである。 ここで、 $ \mathbf{t} = [t_{1}, t_{2}, \cdots, t_{n} ]^{T}$ である。 この式は、 $A$ の列ベクトル $\mathbf{a}_{1}, \cdots \mathbf{a}_{n}$ によって、
と表されるので、 $A$ の列ベクトルと $\mathbf{b}$ は、 互いに線形従属である。
  よって、 ベクトルの組
に $\mathbf{b}$ を追加して、
としても、 互いに線形独立なベクトルの数は変わらない。
  ゆえに、 ランクの定義( = 列ベクトルの中に含まれる線形独立なベクトルの数)から、
が成り立つ。
  以上より、 連立一次方程式
が解を持つために必要十分条件は、
が成立することである。

解が唯一つ $\Longleftrightarrow \hspace{1mm} \mathrm{rank} (A) = n$
  連立一次方程式
の解が存在するとき、 解が唯一つであるための必要十分条件は、 $A$ のランクが $A$ の列の数に等しいことである。 すなわち、
が成り立つことである。 ここで $n$ は $A$ の列の数である。

証明
 
準備
  連立一次方程式
$$ \tag{1} $$ の係数行列 $A$ を簡約化した行列を $A^{e}$ とし、 それぞれの列ベクトルを、
$$ \tag{2} $$ と表す。また、 $n$ 個の基本ベクトル $\mathbf{e}_{i}$ を
と定義する。 $(1)$ の $\mathbf{x}$ を、
と表すと、$(1)$ は、
$$ \tag{3} $$ と表される。 この式は、拡大係数行列
$$ \tag{4} $$ の列ベクトルの間に成立する一次関係を表している。
  $(4)$ を行基本変形し、$1$ 列から $n$ 列までを簡約化すると、 $(4)$ の $A$ の部分が簡約化され、
$$ \tag{5} $$ と表される行列になる。ここで、$\mathbf{b}^{e}$ は、 行基本変形の結果として現れた列ベクトルである。
  一般に 行基本変形によって行列の列ベクトルの一次関係は不変に保たれるので、 $(5)$ の列ベクトルは、 $(4)$ の列ベクトルの間で成立する一次関係 $(3)$ と同一の一次関係を持つ。 すなわち、
$$ \tag{6} $$ が成り立つ。
  これらを踏まえて証明に入る。 $(1)$ の解が存在する場合のみ議論するので、
が成立するものと仮定する。 この条件は、解が存在するための必要十分条件である。
「 $\mathrm{rank} (A) = n$ $\hspace{2mm} \Longrightarrow \hspace{2mm} (1)$ の解がただ一つ 」の証明
  はじめに
$$ \tag{7} $$ を仮定する。
  行列のランクは簡約化した行列の主成分の数に等しいので、 $(7)$ であるならば、 $A^{e}$ は $n$ 個の主成分を持つ。 したがって $A_{e}$ は
の形を持つ行列である。ここで $*$ はどんな値でもよいことを表している。 また、 簡約化行列は主成分が $1$ であり、 階段状に並ぶことを用いた。
  加えて、 簡約化行列の主成分を持つ列ベクトルの主成分を除く成分は $0$ であるので、 簡約化行列の列ベクトルは基本ベクトルである。 したがって、 $A^{e}$ は $n$ 個の異なる基本ベクトルを列ベクトルに持つ次の形の行列になる。
 
これと $(2)$ より、
であるので、$(6)$ は、
と表される。 これより、
が成り立つ。 この式は、$(1)$ の解がただ一つだけ求まっていることを表している。 ゆえに、 「$\mathrm{rank} (A) = n$ $\hspace{2mm} \Longrightarrow \hspace{2mm} (1)$ の解がただ一つ 」 が成り立つ。
「 $(1)$ の解が唯一つ $\hspace{2mm} \Longrightarrow \hspace{2mm} \mathrm{rank} (A) = n$ 」の証明
  方針としては、
を仮定し、
$$ \tag{8} $$
の対偶である
$$ \tag{9} $$ を成り立つことを示し $(8)$ の証明とする。
  係数行列を $A$ とする同次連立一次方程式の解を $\mathbf{y}$ とする。すなわち、
$$ \tag{10} $$ とする。 $(10)$ と $(1)$ を足し合わせることにより、
$$ \tag{11} $$ が成立する。よって、$\mathbf{x} - \mathbf{y}$ もまた、$(1)$ の解である。
  一般に $n$ 列の係数行列を持つ同次連立方程式の解空間の次元は、 $n$ から係数行列のランクを引いたものであるので、 $(10)$ の解空間の次元は、
である。このことは、$(8)$ の解 $\mathbf{y}$ が $n-\mathrm{rank} (A)$ 個の線形独立なベクトルの線形結合で表されることを意味する。すなわち、
と表される。ここで、$\mathrm{rank} (A) = r$ であり、$\alpha_{1}, \cdots, \alpha_{n-r}$ は任意の数である。 また、$\mathbf{b}_{1}, \cdots, \mathbf{b}_{n-r}$ は $n-r$ 個の線形独立なベクトルである。
  これより、 $(11)$ は、
と表される。これは、$(1)$ の解が、
$$ \tag{10} $$ と表され、$n-r$ 個の任意の数 $\alpha_{1}, \cdots, \alpha_{n-r}$ に依存していることを意味する。 $\alpha_{1}, \cdots, \alpha_{n-r}$ がどんな値であっても、 $(10)$ が $(1)$ の解であることから、 $(1)$ の解は一つだけではない。 ゆえに $(9)$ が成立する。 $(9)$ は $(8)$ の対偶であるので、 $(8)$ が成立する。
  以上から、
が成り立つ。

補足:   解が一つでない必要十分条件
  一般に $m \times n$ の行列 $A$ のランクは $n$ 以下であるから、
である。 解が存在する場合に、 解が一つであるための必要十分条件が
であるので、 解が一つではない必要十分条件は、
である。
同次連立一次方程式の解空間の次元
  同次連立一次方程式
の解空間の次元 $D$ は、 係数行列 $A$ の列の数とランクの差である。 すなわち、
同次連立一次方程式の解空間の次元
である。

証明
  同次連立一次方程式
$$ \tag{1} $$ の解空間の次元を求める。 係数行列 $A$ とベクトル $\mathbf{x}$ をそれぞれ
と表すとき、$(1)$ は次のように表される。
このように定数項が $0$ になっている(右辺が $0$ になっている)連立一次方程式を同次連立一次方程式という。
  ここで $A$ の列ベクトルを $\mathbf{a}_{1}, \mathbf{a}_{2}, \cdots, \mathbf{a}_{n}$ と表す。
このとき $(1)$ は、次のように表される。
$$ \tag{2} $$ また、 行列 $A$ を簡約化した行列を $A^{e}$ とし、 $A^{e}$ の列ベクトルを $\mathbf{a}_{1}^{e}, \mathbf{a}_{2}^{e}, \cdots, \mathbf{a}_{n}^{e}$ と表す。 すなわち、
とする。
  簡約化された行列は、もとの行列を行基本変形したものである。 また、 行基本変形は列ベクトルの一次関係を不変に保つ。 したがって、 簡約化された行列の列ベクトルともとの行列の列ベクトルは同一の一次関係を持つ。 それゆえ、 $A^e$ の列ベクトルには $(2)$ と同じ一次関係
$$ \tag{3} $$ が成り立つ。
  一般に、簡約化された行列は 1 行から順に右に向かって一段ずつ主成分が下がってゆく階段状の行列である(たとえば、下のような行列)。
また、定義により、 主成分の値が $1$ であり、 主成分を持つ列ベクトルでは、 主成分以外の成分が全て $0$ である。 その結果、 主成分を持つ列ベクトルは、 次の基本ベクトルのどれかになっている。
ここで、$A^{e}$ に含まれる主成分の数が $r$ 個であるとした。
  いま、基本ベクトル $\mathbf{e}_{j}$ が $A^{e}$ の $k_{j}$ 列目の列ベクトルであるとする。すなわち、
$$ \tag{4} $$ とする。 これらは主成分を持つ列ベクトルであるが、 その一方、 $A^e$ の列ベクトルには、 主成分を持たない列ベクトルがある。 主成分を持つ列の数を $r$ 個としたので、 主成分を持たない列の数は、$n-r$ 個である。 これらのそれぞれが $A^{e}$ の列の中で $s_{1}, s_{2}, \cdots, s_{n-r}$ 番目にあるものとする。 すなわち、
$$ \tag{5} $$ が主成分を持たない列ベクトルであるとする。
  既に述べたように、 簡約化された行列は 1 行から順に右に向かって一段ずつ主成分が下がってゆく階段状の行列である。 したがって、$r$ 個の主成分を持つ簡約化された行列には、 $r+1$ 行以降に主成分が現れない ( たとえば $r+1$ 行に主成分があると、主成分の数が $r+1$ 個になってしまう) 。 そのためには、行列の $r+1$ 行以降の成分が全て $0$ でなくてはならない (主成分の定義を参考) ので、 $A^{e}$ の列ベクトルは必ず $r+1$ 行以降の成分が $0$ になっている。すなわち、
の形をしている。 従って、$(5)$ の列ベクトルの $r+1$ 行以降の成分は全て $0$ である。
  ゆえに、$(5)$ に含まれる列ベクトルは必ず基本ベクトル $(4)$ の線形結合によって表すことが出来る。 そこで、
$$ \tag{6} $$ と表す。 ところで、$(4)$ と $(5)$ を合わせた列ベクトルの集合
$A^{e}$ の列ベクトルの全体であるので、
の順番を入れ替えたものに過ぎない。 従って、一次関係 $(3)$ を
と表すことができる。
  $(6)$ を用いると、この関係は、
と表される。この式を $\mathbf{a}_{k_{j}}^e$ ごとにまとめると、
である。
  $(4)$ により、 $\mathbf{a}_{k_{1}}^e, \cdots, \mathbf{a}_{k_{r}}^e $ はそれぞれが異なる基本ベクトルであるので、 互いに線形独立なベクトルである。 したがって、上式の各係数は $0$ である。 すなわち、
$$ \tag{7} $$ である。 ここで $\mathbf{x}'$ を
と置くと、 $(7)$ を用いて
$$ \tag{8} $$ と表せる。 ここで現れたベクトル
線形独立であるので、 $(8)$ は $\mathbf{x}'$ が $n-r$ 個の線形独立なベクトルの線形結合によって書けることを表している。
  ところで、$\mathbf{x}'$ は $\mathbf{x}$ の成分の順番を入れ替えただけのベクトルである。 ゆえに、$\mathbf{x}'$ が $n-r$ 個の線形独立なベクトルの線形結合で表されるならば、 $\mathbf{x}$ もまた $n-r$ 個の線形独立なベクトルの線形結合によって表される。
  このことは、$\mathbf{x}$ が(すなわち、$(1)$ の解が) $n-r$ 個の線形独立なベクトルを基底とするベクトル空間を構成することを表している。 このベクトル空間を 連立一次方程式 $(1)$ の解空間という。 また、独立なベクトルの数 $n-r$ を解空間の次元という。
  ところで、簡約化された行列の主成分の数はもとの行列のランクに等しいことから、
である。 したがって、 連立一次方程式 $(1)$ の解空間の次元 $D$ は、
である。

解が唯一つ $\Longleftrightarrow$ 係数行列が正則行列
  係数行列 $A$ が正方行列 (行の数=列の数)である場合、 連立一次方程式 $$ A \mathbf{x} = \mathbf{b} $$ が唯一つの解を持つことと、 $A$ が正則行列であることは同値である。 すなわち、 \begin{eqnarray} && A\mathbf{x}= \mathbf{b} \hspace{2mm} \smallが唯一つの解を持つ \\ && \Longleftrightarrow \hspace{3mm}A \hspace{1mm} \smallが正則行列 \end{eqnarray} が成り立つ。
列ベクトルが線形独立 $\Longleftrightarrow$ 自明な解のみ
  同次連立一次方程式 $$ A \mathbf{x} = 0 $$ の解が自明な解 $\mathbf{x} = 0$ のみであることと、$A$ の列ベクトルが互いに線形独立であることは同値である。 すなわち、 \begin{eqnarray} && A\mathbf{x}=0 \hspace{1mm} の解が自明な解 \normalsize \hspace{1mm} x=0 \hspace{1mm} \small のみ \\ && \Longleftrightarrow \hspace{2mm} A \hspace{1mm} \small の列ベクトルが互いに線形独立 \end{eqnarray} が成立する。
自明な解以外のを持つ $\Longleftrightarrow$ 係数行列の行列式 = 0
  係数行列 $A$ が正方行列である同次連立一次方程式 $$ A \mathbf{x} = 0 $$ が自明でない解 $\mathbf{x} \neq 0$ を持つことと、 $A$ の行列式が $0$ であることは、同値である。 すなわち、 \begin{eqnarray} && A \mathbf{x} = 0 \hspace{2mm} が \hspace{1mm} x\neq 0 \hspace{1mm} の解を持つ \\ && \Longleftrightarrow \hspace{3mm} |A| = 0 \end{eqnarray} が成立する。
クラメルの公式
  係数行列 $A$ が正方行列である連立1次方程式 $$ A \mathbf{x} = \mathbf{b} $$ の解は、 $$ x_{k} = \frac{1}{|A|} \left| \mathbf{a}_{1}, , \cdots, \mathbf{a}_{k-1}, \mathbf{b}, \mathbf{a}_{k+1}, \cdots, \mathbf{a}_{n} \right| $$ によって与えられる。 ここで、$x_{k}$ は、$\mathbf{x}$ の第 $k$ 番目の成分である。 また、$\mathbf{a}_{i}$ は、行列 $A$ の $i$ 番目の列ベクトルであり、 $|A|\neq 0$ とする。
  この公式は、クラメルの公式(Cramer's rule)と呼ばれる。