証明
掃き出し法によって逆行列を求めるには、
行列 $A$ と
単位行列 $I$ を横に並べた次の行列
を定義し、
行基本変形によって、
左側半分の行列を単位行列にすればよい。
すなわち、
と変形すればよい。
その結果として右側半分に現れる行列 $X$ が $A$ の逆行列になる
(証明は
掃き出し法による逆行列の導出を参考)。
ここで縦に引かれた点線は左側と右側を区別するための便宜のものに過ぎない。
この方針に従って、上の行列の基本変形を行うと、
を得る。
従って、$A$ の逆行列は、
である。
補足: 逆行列の存在
行列は必ずしも逆行列を持つわけではない。
逆行列の存在を確かめるためには、
行列式がゼロになるかどうかを確かめればよい。
上の行列の場合には、
3行3列の行列式を計算することになり、
と行列式が $0$ でないことが確かめられるので、
逆行列が存在する。
証明
掃き出し法によって逆行列を求めるには、
行列 $A$ と
単位行列 $I$ を横に並べた次の行列
を定義し、
行基本変形によって、
左半分の行列を単位行列にすればよい。
すなわち、
と変形すればよい。
その結果として右半分に現れる行列 $X$ が $A$ の逆行列になる
(証明は
掃き出し法による逆行列の導出を参考)。
ここで縦に引かれた点線は左側と右側を区別するための便宜のものに過ぎない。
この方針に従って、上の行列の行基本変形を行うと、
を得る。
したがって
$A$ の逆行列 $A^{-1}$ は、
である。
解説
$n \times n$ の
正則行列 $A$ の逆行列とは
満たす行列 $X$ である。
(これより $XA=I$ も成り立つ 「
逆行列は片側のみで定義可能」を参考)。
ここで基本ベクトル $\mathbf{e}_{i}$ $(i=1,2,\cdots,n)$ を
と定義することにより、$n \times n$ の
単位行列 $I$ を
と表し、
$X$ の列ベクトルを $\mathbf{x}_{i}$ を $(i=1,2,\cdots,n)$ と表すことによって、
$X$ を
と表すと、$AX=I$ は、
と表される。これより、
が成立する。
両辺のそれぞれの列ベクトルが等しいので、
$$
\tag{*}
$$
が成立する。
$(*)$ は連立一次方程式である。
これを解いて
$\mathbf{x}_{i}$ を求めると、
$A$ の逆行列
が得られる
(因みに
$A$ は正則行列であるので、
$(*)$ は
唯一つの解を持つので、
解が不定になったり、不能になったりすることはない)。
連立一次方程式 $(*)$ を解く一つの方法が掃き出し法である
(
「連立一次方程式の例題」を参考) 。
掃き出し法によると、
拡大係数行列
$
\left[
A\hspace{2mm} \mathbf{e}_{i}
\right]
$
を
行基本変形によって、
と変換した結果として現れる $\mathbf{c}_{i}$ が解 $\mathbf{x}_{i}$ に等しい。
このように変換するためには、
行列 $A$ を単位行列 $I$ へと変換する
行基本変形を行えばよい。
したがって、それぞれの $i$ について上記の掃き出し法を行えば、
$\mathbf{x}_{i}$ が求まり、逆行列 $X$ が得られることが分かった。
それぞれの $i$ に対して掃き出し法を実行するので、
$n$ 回の掃き出し法計算が必要になるが、
次のような $n \times 2n$ の行列
と変換した
を定義し、行列 $A$ を単位行列 $I$ へと変換する行基本変形を行うと、
一度の行基本変形によって全ての $\mathbf{c}_{1}\hspace{2mm} \mathbf{c}_{2}\hspace{2mm} \cdots\hspace{2mm} \mathbf{c}_{n}$ が求められる。
すなわち、
という行基本変形が可能である
(この部分が $(*)$ を個別に解くことよりも計算の効率化につながる)。
先ほど述べたように、各 $\mathbf{c}_{i}$ は $A\mathbf{x}_{i} = \mathbf{e}_{i}$ の解 $\mathbf{x}_{i}$ に等しいので、
これらから
と行列 $A$ の逆行列が求まる。