固有値、固有ベクトルの性質

最終更新 2018年 2月12日
目次
- 定義
- 存在証明
- 線形独立性
- 固有値の積が行列式
- 対角化された行列の対角成分は固有値
- 対角化可能な行列の固有空間の次元 = 固有方程式の重複度
- 正規行列の固有値の異なる固有ベクトルは直交する
- 正規行列の固有ベクトルで構成される正規直交基底の存在
- 摂動論
- 実対称行列の固有値は実数
- 逆行列の固有値
- 直交行列の固有値
- ユニタリー行列の固有値
- 半正定値行列の固有値は 0 以上
- 射影行列の固有値は、1 または 0
- 転置行列の固有値
- 随伴行列の固有値
固有値と固有ベクトルの定義
  正方行列 $A$ に対し、
固有値・固有ベクトルの定義
の関係を満たす数 $\lambda$ と、 0 でないベクトル $\mathbf{x}_{\lambda}$ を、 それぞれ $A$ の固有値固有ベクトルという。
固有値と固有ベクトルの存在
  任意の正方行列 $A$ には、固有値と固有ベクトルが存在する。すなわち、
固有値・固有ベクトルの存在
を満たす複素数 $\lambda$ と ベクトル $\mathbf{x}_{\lambda}\neq 0$ が存在する。
固有ベクトルは線形独立
  固有値の異なる固有ベクトルは、互いに線形独立である。 すなわち、固有値の異なる固有ベクトルをそれぞれ $\mathbf{x}_{\lambda_{1}}, \mathbf{x}_{\lambda_{2}}, \cdots, \mathbf{x}_{\lambda_{n}}$ とするとき、
固有ベクトルは線形独立
が成立する。
固有値の積は行列式
  任意の正方行列 $A$ の行列式は、$A$ の固有値を全て掛けた積に等しい。すなわち、
固有値の積は行列式に等しい
が成立する。
  ここで、$A$ は、$n$ 次正方行列であり、$\lambda_{1}, \lambda_{2}, \cdots, \lambda_{n}$ は、その固有値である。
対角化された行列の対角成分は固有値
  $A$ を対角化可能な行列とするとき、すなわち、
対角化された行列の対角成分は固有値
を満たす対角行列 $\Lambda$ と正則行列 $R$ が存在するとき、 $\Lambda$ の対角成分は$A$ の固有値である。
対角化可能な行列の固有空間の次元は固有方程式の重複度
  行列が対角化可能であるならば、 任意の固有値の固有空間の次元が、 その固有値に対応する固有方程式の重複度に等しい。 すなわち、
固有空間の次元と固有方程式の重複度は等しい
が成立する。
  ここで $E_{\lambda_{i}}$ は、 固有値 $\lambda_{i}$ の固有空間であり、 $m$ は、 固有方程式における $\lambda_{i}$ の重複度である。
正規行列の固有値の異なる固有ベクトルは直交する
  正規行列 $A$ の任意の固有値を $\lambda_{i}$ とし、 固有値 $\lambda_{i}$ を持つ任意の固有ベクトルを $\mathbf{x}_{\lambda_i}$ とする。
また、 $\lambda_{i}$ とは異なる $A$ の任意の固有値を $\lambda_{j}$ とし、 固有値 $\lambda_{j}$ を持つ任意の固有ベクトルを $\mathbf{x}_{\lambda_j}$ とする。
このとき、$\mathbf{x}_{\lambda_i}$ と $\mathbf{x}_{\lambda_j}$ は、直交する。 すなわち、
正規行列の固有値の異なる固有ベクトル
が成立する。 ここで、 $(\cdot, \hspace{1mm} \cdot )$ は、 複素ベクトルの内積である。
正規行列の固有ベクトルで構成される正規直交基底の存在
  $n$ 次正方行列 $A$ が正規行列であるならば、 $A$ の 固有ベクトルの中に正規直交基底を成す $n$ 個のベクトルが存在する。 すなわち、
固有ベクトルの正規直交基底
を満たす $A$ の固有ベクトル $\mathbf{x}_{\lambda_1}, \mathbf{x}_{\lambda_2}, \cdots, \mathbf{x}_{\lambda_n}$ が存在する。
固有値と固有ベクトルの摂動論
  行列 $A$ の固有値 $\lambda_{i}$ と固有ベクトル $\mathbf{x}_{i}$ が既に分かっているとき、 $A$ と僅かに異なる行列 $A + \delta A$ の固有値 $\lambda_{i}'$ と固有ベクトル $\mathbf{x}_{i}'$ は、 それぞれ
固有値問題の摂動論
と近似的に表される。
  ただし、 $A$ は 固有値の異なる固有ベクトルが直交し、 固有ベクトルが正規直交基底を成す行列であるとする(例えば正規行列が典型的な例である)。 また、 $A$ のそれぞれの固有値の重複度が $1$ である(縮退がない)ものとする。
実対称行列の固有値は実数
  正方行列 $A$ が
を満たし、全ての成分が実数であるとき、実対称行列であるという。
  このとき、$A$ の固有値 $\lambda$ は実数である。すなわち
実対称行列の固有値
が成立する。
逆行列の固有値
  行列 $A$ が逆行列を持つとき、 $A$ の固有値が $\lambda$ であるならば、 $A^{-1}$ の固有値は、$\frac{1}{\lambda}$ である。 すなわち、
逆行列の固有値
が成立する。
直交行列の固有値
  直交行列 $R$ の固有値 $\lambda$ は
である。
ユニタリー行列の固有値
  ユニタリー行列 $U$ の固有値を $\lambda$、 固有ベクトルを $\mathbf{x}_{\lambda}$ とする。
ユニタリー行列の固有値
このとき、 固有値 $\lambda$ は大きさ $1$ の複素数である。 すなわち
ユニタリー行列の固有値
を満たす値である。
半正定値行列の固有値は 0 以上
  $P$ を半正定値行列、 $\lambda$ を $P$ の固有値、 $\mathbf{x}_{\lambda}$ を固有値が $\lambda$ の固有ベクトルとするとき、 すなわち、
とするとき、
半正定値行列の固有値
である。
射影行列の固有値は、1 または 0
  $P$ を射影行列、 $\lambda$ を $P$ の固有値、 $\mathbf{x}_{\lambda}$ を固有値が $\lambda$ の固有ベクトルとするとき、 すなわち、
とするとき、
射影行列の固有値
である。
転置行列の固有値
  行列 $A$ の 転置行列 $A^{T}$ の固有値は、 $A$ の固有値に等しい。
随伴行列の固有値
  行列 $A$ の 随伴行列 $A^{\dagger}$ の固有値は、 $A$ の固有値の複素共役である。