正則行列と逆行列の諸性質

最終更新 2018年 9月24日
一般的性質
- 正則行列と逆行列の定義
- 正則行列 $\Longleftrightarrow$ 行列式 $\neq$ 0
- 正則行列 $\Longleftrightarrow$ 列ベクトルが線形独立
- 正則行列 $\Longleftrightarrow$ 自明な解のみ
- 正則行列 $\Longleftrightarrow$ 解が唯一つ
- 逆行列は一つだけ
- 余因子行列による表現
- 積の逆行列
- 逆行列の行列式
- 逆行列の固有値
- 正則行列との積のランク
- 片側のみで定義可能
- QR分解

様々な逆行列
- 転置行列の逆行列
- 随伴行列の逆行列
- ユニタリー行列の逆行列
- 直交行列の逆行列
- 上三角行列の逆行列
定義
  正方行列 $A$ に対して、 正方行列 $B$ が
正則行列の定義
を満たすとき、$B$ を $A$ の 逆行列といい、$$B = A^{-1}$$ と表す。 逆行列を持つ行列を正則行列という。
正則行列 $\Longleftrightarrow$ 行列式が 0 でない
  $A$ が正則行列であることと行列式がゼロでないことは同値である。すなわち、
正則行列と行列式
が成立する。
正則行列 $\Longleftrightarrow$ 列ベクトルが線形独立
  $A$ が正則行列であることと、$A$ の列ベクトルが線形独立であることは同値である。すなわち、
正則行列と列ベクトル
が成立する。
正則行列 $\Longleftrightarrow$ 自明な解のみ
  $A$ が正則行列であることと、 $A\mathbf{x}=0$ の解が自明な解のみであることは同値である。すなわち、
正則行列と自明な解
が成立する。
正則行列 $\Longleftrightarrow$ 解が唯一つ
  $A$ が正則行列であることと、 $A\mathbf{x}=\mathbf{b}$ が唯一つの解を持つことは同値である。すなわち、
正則行列と唯一つの解
が成立する。
逆行列は一つだけ
    正則行列 $A$ は、逆行列を一つだけ持つ。二つ以上持たない。

証明
    正則行列 $A$ の逆行列を $X_{1}$ と $X_{2}$ とし、これらが等しいことを証明する。
  $X_{1}$ と $X_{2}$ が逆行列であるので、
が成立する。ここで $I$ は単位行列である。
  これらより、
逆行列は一つだけ
である。
  ゆえに行列 $A$ の逆行列は一つだけである。

余因子行列による表現
  逆行列 $A^{-1}$ は、 行列式の逆数 $\frac{1}{|A|}$ と余因子行列 $\tilde{A}$ の積に等しい。すなわち、
逆行列の余因子行列による表現
と表される。

証明
  正方行列 $A$ の余因子行列を $\tilde{A}$ とする。 一般に正方行列とその余因子行列の積は行列式と単位ベクトルの積に等しいので、
が成り立つ。
  逆行列が存在する場合 $|A|\neq 0$ であるので、上の式から

が成り立つ。
  逆行列の定義 により、この式は $\frac{1}{|A|}\tilde{A}$ が $A$ の逆行列であることを表している。 すなわち、
である。

積の逆行列
  正則行列 $A$ と $B$ の積 $AB$ の逆行列は、$B^{-1}A^{-1}$ である。 すなわち
行列の積の逆行列
である。

証明
  行列 $A$, $B$ の逆行列をそれぞれ $A^{-1}$, $B^{-1}$ とする。 すなわち、
を満たす行列とする。 これらより、
が成立する。
  よって、 $B^{-1}A^{-1}$ は $AB$ の逆行列 である。 すなわち、
である。

逆行列の行列式
  逆行列の行列式は、 行列式の逆数に等しい。すなわち、
逆行列の行列式
が成立する。
逆行列の固有値
  正則行列 $A$ の固有値が $a$ であるならば、 $A^{-1}$ の固有値は、$\frac{1}{\lambda}$ である。 すなわち、
逆行列の固有値
が成立する。
正則行列との積のランク
  行列に正則行列を掛けてもランクは変わらない。 すなわち、行列 $A$ と正則行列 $B$, $C$ に対して、
正則行列との積のランク
が成り立つ。

証明
  はじめに、正則行列 $B$ に対して、
が成り立つことを証明する。
  一般に行列の積のランクは積を構成する行列のランク以下になるので、
$$ \tag{1} $$ が成り立つ。 また、$B$ が正則行列であるので、
と表せる。 ここで $I$ は単位行列である。
  ここで右辺は、 再び行列の積のランクは積を構成する行列のランク以下になることから、
を満たす。 したがって、
$$ \tag{2} $$ が成り立つ。
  $(1)$ と $(2)$ より、
を得る。


  続いて、正則行列 $C$ に対して、
が成り立つことをを証明する。
  行列の積のランクは積を構成する行列のランク以下になることから、
$$ \tag{3} $$ が成り立つ。 また $C$ が正則行列であるので、
と表せる。 ここで右辺は、 再び行列の積のランクは積を構成する行列のランク以下になることから、
を満たす。 したがって、
$$ \tag{4} $$ が成り立つ。
  $(3)$ と $(4)$ より、
が成立する。

逆行列は片側のみで定義可能
  正方行列 $A$ と $B$ が $AB=I$ を満たすとき、$BA = I$ が成立する。 すなわち
正則行列は片側だけで定義可能
が成立する。
QR分解
  任意の正則行列 $X$ は、直交行列 $Q$ と上三角行列 $R$ の積に分解できる。 すなわち、
正則行列とQR分解
と分解できる。
転置行列の逆行列
  正則行列 $A$ の転置行列 $A^{T}$ の逆行列は、$(A^{-1})^{T}$ である。 すなわち
転置行列の逆行列
である。
随伴行列の逆行列
  正方行列 $A$ の随伴行列 $A^{\dagger}$ の逆行列は、 逆行列の随伴行列である。 すなわち、
随伴行列の逆行列
が成り立つ。
直交行列の逆行列
  直交行列 $R$ の逆行列は 転置行列である。 すなわち、
直交行列の逆行列
である。
ユニタリー行列の逆行列
  ユニタリー行列 $U$ の逆行列は 随伴行列である。 すなわち、
ユニタリー行列の逆行列
である。
上三角行列の逆行列
  上三角行列の逆行列もまた上三角行列である。