四面体の体積など
四面体
$4$ つの三角形を各面に持つ多面体を
四面体という。
三角錐とも呼ばれる。
基本的特徴
-
頂点数 = 4
-
辺の数 = 6
-
面の数 = 4
-
凸図形:
なお、全ての面が正三角形のとき、正四面体という。
四面体の体積 ($\frac{1}{3}$ ×底面積×高さ)
底面積が $S$、
高さが $h$ の四面体の体積 $V$ は、
である。
証明
問題を分かり易くするため、
四面体 $OABC$ の $O$ を原点に持ち、
三角形 $OAB$ を含む平面を $XY$ 平面に持つ座標系を用いる (下図)。
三角形 $OAB$ を底面と見なし、その面積を $S$ とする。
高さ $h$ は $XY$ 平面と点 $C$ との距離であり、
点 $C$ の $Z$ 座標の絶対値である。
$ \vec{OA} $ と $ \vec{OB} $ の成す角を $\theta_{AB}$ とすると、
$S$ の面積は、
$$
\tag{1}
$$
である。
ここで $\| \cdot \| $ はベクトルの長さ(ノルム)を表す記号である。
続いて、
平面 $z=t$ $(0 \leq t \leq h )$
と辺 $OC$ との交点を $O'$、
辺 $AC$ との交点を $A'$、
辺 $BC$ との交点を $B'$とする。
断面 $O' B' A'$ を成す各辺の長さは、
である。
したがって、
断面 $O' B' A'$ の面積 $S(t) $ は、
である。
四面体の体積 $V$ は断面積 $S(t)$ を $0$ から $h$ まで積分したものであるので、
を得る。
四面体の体積 (スカラー三重積)
四面体 $OABC$ の体積 $V$ は、
各辺を成すベクトルからなる
スカラー三重積の絶対値の
$\frac{1}{6}$ 倍に等しい。
すなわち、
が成り立つ。
ここで $(\cdot, \cdot)$ は
内積を表す記号である。
証明
三角形 $OAB$ を四面体 $OABC$ の底面と見なすと、
底面積 $S$ は
である
(
三角形の面積を外積で表すを参考)。
ここで $\| \cdot \|$ はベクトルのノルムを表す記号である。
三角形 $OAB$ を含む平面の法線ベクトルを $\mathbf{n}$ とする。
また、
$\mathbf{n}$ の向く方向に頂点 $C$ があるものとする(下図)。
$\mathbf{n}$ と $\vec{OC}$ の成す角を $\theta$ とすると、
四面体の高さ $h$ は、
である(上図を参考)。
底面積が $S$、高さが $h$ の四面体の体積 $V$ は
$
V = \frac{1}{3} S h
$
であるので
(証明は
こちら)、
$$
\tag{1}
$$
である。
ところで、
$ \mathbf{n} $ は
$OAB$ を含む面と直交するので、
外積 $\vec{OA} \times \vec{OB}$ と平行なベクトルである
(
外積の直交性を参考)。
この外積は $\mathbf{n}$ と同じ向きを向くか、
反対の方向を向くかの二つの場合がある(下図)。
同じ向きの場合、
$\mathbf{n}$ と $\vec{OC}$ の成す角 $\theta$ と
$\vec{OA} \times \vec{OB}$ と $\vec{OC}$ の成す角が等しいので、
が成り立つ (
内積とコサインの関係を参考)。
反対の向きを向く場合、
$\vec{OA} \times \vec{OB}$ と $\vec{OC}$ の成す角 が
$ \pi - \theta $ であるので、
が成り立つ。
したがって、いずれの場合にも、
が成り立つ。
これと $(1)$ から
を得る。
スカラー三重積の循環性を用いれば、
と表すこともできる。
四面体の体積 (行列式)
四面体 $OABC$ の体積 $V$ は、
各辺ベクトルを列ベクトルに持つ行列式の絶対値の $\frac{1}{6}$ 倍に等しい。
すなわち、
が成り立つ。
ここで $ \det $は
行列式を表す記号である。
それぞれのベクトルを成分によって
と表し、
$3\times 3$の行列式を各成分を用いて表すと、
である。
具体例 (体積)
次の4点
から成る四面体の体積を求める。
計算例
初めに
公式
を用いて、体積を求める。
三角形 $OAB$ を底面と見なすと、底面積 $S$ は、
である。高さは $h=3$ であるので、
四面体 $OABC$ の体積は、
である。
続いて、
公式
を用いて求める。
であり、
外積の定義と
内積の定義から、
であるため、
を得る。
続いて、
を用いて求める。
3x3 の行列式の定義から、
であるので、
を得る。
四面体の外接球
四面体の $4$ 頂点に接する球を
外接球という。
三角錐とも呼ばれる。
以下ではどんな四面体にも外接球が存在することを証明する。
証明
四面体 $ABCD$ の辺 $AB$ の
垂直二等分平面を
$P_{AB}$ とする。$P_{AB}$ は $AB$ の中点 $M_{AB}$ を通り、
ベクトル $\overrightarrow{AB}$ を法線ベクトルとする平面である。
同じように
辺 $AC$ の垂直二等分平面を
$P_{AC}$ とし、$AC$ の中点を $M_{AC}$ とする。
辺 $CD$ の垂直二等分平面を
$P_{CD}$ とし、$AC$ の中点を $M_{CD}$ とする。
また、
$3$ 平面 $P_{AB}$, $P_{AC}$, $P_{CD}$ の交点を $O$ とする。
点 $O$ が外接球の中心になることを以下のように証明する。
線分 $OM_{AB}$ は垂直二等分平面 $P_{AB}$ 上の線分であるので、
ベクトル $\overrightarrow{M_{AB}A}$ と直交する。
したがって、ピタゴラスの定理により、
が成り立つ。
ここで $\| \cdot \|$ は長さ(ノルム)である。
同じように、
が成り立つ。
$M_{AB}$ は中点 $AB$ の中点であるので、
が成り立つ。
以上から、
が成り立つ。
同様の考察から、
が成り立つこと分かる。
したがって、点 $A$,$B$,$C$,$D$ は点 $O$ から等距離にある点であるので、
一つの球上にある $4$ 点である。
すなわち、$4$ 点 $A$,$B$,$C$,$D$ を通る球 (四面体 $ABCD$ の外接球) が存在する。
外接球の中心 (外心)
四面体 $ABCD$ の外接球の中心の位置 $\mathbf{r}_{O}$ は
ここで、$\mathbf{r}_{A} $, $\mathbf{r}_{B}$,
$\mathbf{r}_{C}$, $\mathbf{r}_{D}$
はそれぞれ頂点 $A$, $B$, $C$, $D$ の位置ベクトルである。また
$\| \cdot \|$ はベクトルの長さ(ノルム)を表す記号である。
証明
上の議論から分かるように、
四面体 $ABCD$ の外接球の中心 $O$ は、
辺 $AB$ の
垂直二等分平面 $P_{AB}$ と、
辺 $AC$ の垂直二等分平面 $P_{AC}$ と、
辺 $CD$ の垂直二等分平面 $P_{CD}$
の交点である。
したがって、
中心の位置
$\mathbf{r}_{O}$ は $3$ つ平面 $P_{AB}$ と $P_{AC}$ と $P_{CD}$ 上の点であるので、
$$
\tag{1}
$$
を満たす (
垂直二等分平面の方程式を参考)。
また $(\cdot, \cdot)$ は
内積を表す記号である。
$(1)$ は $3$ 変数の
連立一次方程式を成す。
行列を用いて表すと、
$$
\tag{2}
$$
である。ここで $3 \times 3$ の行列 $A$ とベクトル $\mathbf{b}$ を
と定義すると、$(2)$ は
と表される。
$A$ には逆行列 $A^{-1}$ が存在する
(
下記補足を参考)。
すなわち、
を満たす行列 $A^{-1}$ が存在する。
ここで $I$ は
単位行列である。
これらを用いると以下のように外心の位置 $\mathbf{r}_{O}$ が求まる。
補足
行列 $A$ に逆行列が存在することを示す。
$A$ の
転置行列
の3つの列ベクトル
は
線形独立なベクトルである。
なぜなら、これらの $3$ つのベクトルは四面体の辺を成すベクトルであるため、
同一平面上にない。
したがって、
どれか一つを他の二つの線形結合によって表すことができない。
たとえば、
とする $\alpha$ と $\beta$ は存在しない (もし存在すれば線形従属なベクトル)。
$A^{T}$ は列ベクトルは互いに線形独立なであるので、
逆行列が存在する
(
「列ベクトルが線形独立⇒正則行列」を参考)。
$A$ は $A^{T}$ の転置行列であるので、
$A$ にも逆行列が存在する (
「転置行列の逆行列」を参考)。
外接球の半径
四面体 $ABCD$ の外接球の半径 $r$ は
である。
ここで、$\mathbf{r}_{A} $, $\mathbf{r}_{B}$,
$\mathbf{r}_{C}$, $\mathbf{r}_{D}$
はそれぞれ点 $A$, $B$, $C$, $D$ の位置ベクトルである。また
$\| \cdot \|$ はベクトルの長さ(ノルム)を表す記号である。
証明
上の議論によると、
四面体 $ABCD$ の外接球の中心位置 $\mathbf{r}_{O}$ は、
である。
四面体の外接球の半径は中心位置から各頂点までの距離である。
そこで頂点 $A$ から 点 $O$ の間の距離を求めると、
を得る。