ロドリゲスの回転公式
ロドリゲスの回転公式
任意の軸のまわりに角度 $\theta$ だけ回転させる回転行列は
と表される。
ここで
は、大きさ $1$ の回転軸ベクトルである。
また、
である。
この表現を
ロドリゲスの回転公式
(Rodrigues' rotation formula)と呼ぶ。
証明
ある点 $P$ を 任意の回転軸 $\mathbf{n}$ のまわりに角度 $\theta$ だけ回転して得られる点を $Q$ する。
回転軸 $\mathbf{n}$ は点 $O$ を通り、
点 $P$ の回転軸 $\mathbf{n}$ 上への
投影を $O'$ とする (図)。
原点を $O'$ とし、
$ \overrightarrow{O'P}$ の方向に $x$ 軸、
$\mathbf{n}$ の方向に $z$ 軸、
それらと直交し、
右手系をなす方向に $y$ 軸を持つ座標系を $C'$ とする。
$C'$ の $x$ 軸、$y$ 軸を向く単位ベクトルをそれぞれ $\mathbf{e}_{x}$、$\mathbf{e}_{y}$ とすると、
$$
\tag{1}
$$
は、
右手系の
正規直交基底をなす。
$ \overrightarrow{O'Q}$ と $\mathbf{e}_{x}$ の成す角が回転角 $\theta$ であるので、
が成り立つ
(上図参)。
ここで
$ \| \cdot \|$ は
ノルムを表す記号であり、
そのベクトルの長さを表す。
$\overrightarrow{O'Q}$ は $ \overrightarrow{O'P}$ を回転させたベクトルであるので長さは変わらない。
すなわち、
が成り立つので、
と表せる。
$\mathbf{e}_{x}$ は
$\overrightarrow{O'P}$ と同じ方向の単位ベクトルであるから、
$$
\tag{2}
$$
と表せる。
これより、
である。
ここで
$$
\tag{3}
$$
を用いた。
$O'$ は
$P$ の回転軸 $\mathbf{n}$ 上への
投影点であるので、
$$
\tag{4}
$$
である。
ここで $(\cdot, \cdot)$ は
内積を表す記号である。
これより、
と表せる。
$(1)$ が
右手系をなすことから、
が成立する。
ここで $\times$ は
外積を表す記号である。
よって、
と表せる。二つ目の等号では再び $(2)$ を用いた。
三つめの等号では $(3)$ を用いた。
ここで、
$\mathbf{n}$ と $\overrightarrow{OO'} $ が平行であることから
が成立する。
よって、
と表せる。
この式から
を得る。二つ目の等号では $(4)$ を用いた。
ここで
と表すことにすると、
この式は
$$
\tag{5}
$$
と表される。
右辺の内積と外積をそれぞれ
と表す。
ここで
$\epsilon_{ijk}$
は
Levi-Civita の記号である。
これらより、
$(5)$ 式の第 $i$ 成分は、
と表せる。ここで $\delta_{ij}$ は
によって定義される
クロネッカーのデルタである。
ここで行列 $R$ を
によって定義することにより、
上の式は
とまとめられる。
この式は
回転前の位置
$ \mathbf{r}$
に行列 $R$ を掛けると、
回転後の位置 $ \mathbf{r}'$ が得られることを表している。
すなわち、$R$ が回転行列であることを表している。
と置いて、
$R_{ij}$ の各成分を具体的に表すと、
であり、
行列表現すると、
と表される。
この行列 (または $(5)$) を
ロドリゲスの回転公式と呼び、
任意軸回転後の位置をもとの位置で表すときに使われる。
例: 3軸回転
回転軸が3軸方向を向いている場合、つまり
の場合、
上に記したロドリゲスの公式によって、
回転行列 $R$ の各成分は
\begin{eqnarray}
R_{11} &=& c + n_{1}^{2} \left( 1- c \right)
\\
&=& c
\\
R_{12} &=& n_{1}n_{2} \left( 1- c \right) - n_{3} s
\\
&=& -s
\\
R_{13} &=& n_{1}n_{3} \left( 1- c \right) + n_{2} s
\\
&=& 0
\\
R_{21} &=& n_{2}n_{1} \left( 1- c \right) + n_{3} s
\\
&=& s
\\
R_{22} &=& c + n_{2}^{2} \left( 1- c \right)
\\
&=& c
\\
R_{23} &=& n_{2}n_{3} \left( 1- c \right) - n_{1} s
\\
&=& 0
\\
R_{31} &=& n_{3}n_{1} \left( 1- c \right) - n_{2}s
\\
&=& 0
\\
R_{32} &=& n_{3}n_{2} \left( 1- c \right) + n_{1}s
\\
&=& 0
\\
R_{33} &=& c + n_{3}^{2}\left( 1- c \right)
\\
&=& 0
\end{eqnarray}
と求められる。
行列で表すと、
である。