右手系と左手系について
右手系と左手系
3次元ベクトル空間の
正規直交基底
$ \{ \mathbf{e}_{1}, \mathbf{e}_{2}, \mathbf{e}_{3} \} $ が
を満たすとき、
この正規直交基底が成す座標系を
右手系という。
一方で
正規直交基底
$ \{ \mathbf{e}'_{1}, \mathbf{e}'_{2}, \mathbf{e}'_{3} \} $ が
を満たすとき、この正規直交基底が成す座標系を
左手系という。
以下で簡単な解説と例を述べる。
確かめる方法
3次元ベクトル空間の座標系が与えられたときに、
それが右手系であるか、
左手系であるかを確かめるには、
単純に座標系を構成する
正規直交基底が
を満たすのか、
を計算すればよい (「
外積の定義」を参考)。
しかし、実際にはこのような計算の手間を省くため、
次のような直観的な描像が良く使われる。
すなわち、
右手系の場合には、
右手を使って $\mathbf{e}_{1}$ から $\mathbf{e}_{2}$ を握り締め、
親指を突き出した方向が $\mathbf{e}_{3}$ になっていれば、
その座標系が右手系であると確かめる (図)。
一方、同じことを左手で行って成功するならば、
その座標系は左手系である (図)。
右手系と左手系の違い
違い
右手系と左手系の違いを見るためには、
両者の基底のうち二つが同一の場合を考えると分かり易い。
たとえば
$\mathbf{e}_{1} = \mathbf{e}_{1}'$ かつ
$\mathbf{e}_{2} = \mathbf{e}_{2}'$ の場合、
下図のようになる。
これを見ると右手系と左手系では、
二つの基底ベクトルが同一であったとしても、
もう一つのベクトルの方向が反対方向を向くことが分かる。
回転して一致させられない
上の例からも分かるように両者の座標系を回転して一致させることは出来ない。
たとえば、
右手系を回転させて左手系に一致させることは出来ない。
その代わり、
右手系に対して鏡に写す変換 ( 鏡映変換 )を施すと、
左手系に変換される (下図)。
例
右手系の例
基底ベクトル
から成る座標系 $\{\mathbf{e}_{X}, \mathbf{e}_{Y}, \mathbf{e}_{Z}\}$ は右手系を成す。
実際に計算すると、
が成り立ち(「
外積の定義」を参考)、
直感的にも右手系を成すことが分かる(下図)。
左手系の例
基底ベクトル
から成る座標系 $\{\mathbf{e}_{X}', \mathbf{e}_{Y}', \mathbf{e}_{Z}'\}$ は左手系を成す。
実際に計算すると、
が成り立ち、直感的にも左手系を成すことが分かる(下図)。
補足
上の議論では右手系の定義を
が成り立つこととしたが、
この中の二つの式だけでも十分である。
例えば
だけでも十分である。
なぜなら、
ベクトル四重積の恒等式
と
スカラー三重積の循環性
によって、
上の二つの式から、
が導かれるからである。
なお最後の等式で
$\mathbf{e}_{1}$ が
正規直交基底であるので、
を満たすこと、および
同じベクトル同士の外積が $0$ になること
を用いた。