ヴァンデルモンドの行列式  

最終更新 2017年 6月22日
  $n$ 次正方行列 $V$ を実数 $\lambda_{1}, \lambda_{2}, \cdots, \lambda_{n}$ によって次のように定義する。
ヴァンデルモンド行列
このとき、$V$ の行列式をヴァンデルモンドの行列式 (Vandermonde determinant) という。
  ヴァンデルモンドの行列式 $|V|$ は、
ヴァンデルモンド行列式
である。 これを総乗の記号 $\prod$ を用いてまとめると、
ヴァンデルモンドの行列式
と表される。

  証明

  一般に行列の各行に他の行の定数倍を加えても行列式の値は変わらない。 この性質を用いると、 行列
ヴァンデルモンド行列
の $n-1$ 行の $\lambda_{1}$ 倍
ヴァンデルモンド行列
を $V$ の $n$ 行から引いても行列式の値は変わらないことから、
である。
  同じように、 右辺に現れた行列
から、 $n-2$ 行の $\lambda_{1}$ 倍
を $n-1$ 行から引いても行列式は変わらないことから、
が示される。
  この操作を 1 列の 2 行の成分が $0$ になるまで繰り返すことにより、
を得る。
  右辺の行列式は、1 列の 2 行以降の成分がゼロである。 従って、 1 列についての余因子展開することにより、 行列式が 2 行 2 列より右下部分の部分行列の行列式に等しいことが分かる。 すなわち、
である。 右辺の行列は $n-1$ 次行列であり、 もとの行列から次数が一つ下がっている。 また、 行列式の 1 列の第 2 成分以降が 0 の場合、 その行列式が 2 行 2 列より右下部分の部分行列の行列式に等しいことを用いても同じ結果が得られる。
  ここで、右辺の 1 列の全ての成分に $\lambda_{2}-\lambda_{1}$ が掛けられていることに着目する。 一般に、列が定数倍されている行列の行列式は、もとの行列の行列式の定数倍に等しいという行列式の性質から、 $|V|$ の 1 列にある定数 $\lambda_{2}-\lambda_{1}$ を行列式の外側に出して、次のように表すことができる。すなわち、
と表すことができる。
  同じようなことが 2 列目以降にも当てはまる。 すなわち、 2 列以降の各列には、 共通の係数がある($k$ 列の全ての成分には $\lambda_{k+1}-\lambda_{1}$ が掛けられている)ので、 それぞれの係数を行列式の外に出すことが可能である。 よって、
と表すことができる。
  この式の右辺に現れた行列式
は、 $ \lambda_{2}, \lambda_{3}, \cdots, \lambda_{n}$ に対する $n-1$ 次のヴァンデルモンド行列式である。よって、 $(1)$ は $n$ 次のヴァンデルモンド行列式と $n-1$ 次のヴァンデルモンド行列式を結ぶ関係式(漸化式)になっている。 これを使うと次数の低いヴァンデルモンド行列式を順に導くことが可能になる。
  例えば、 上の $n-1$ 次のヴァンデルモンド行列式に対し、 $(1)$ の導出した議論を適用すると、 今度は $n-2$ 次のヴァンデルモンド行列式が現れる。 すなわち、
と表せる。
  これと $(1)$ から、 n 次のヴァンデルモンド行列式 $|V|$ が
と表される。 右辺には、 $n-2$ 次のヴァンデルモンド行列式が現れているので、 それを $n-3$ 次のヴァンデルモンド行列によって表すことができる。
  以下このような操作を、$2$ 次のヴァンデルモンド行列式が現れるまで繰り返すと、
となる。
  右辺の 2 次の行列式を計算すると、
が示される。
  この式は、 総乗の記号 $\prod$ を用いると、
とまとめて表すことができる。
  より正確な証明を望む場合は、 数学的帰納法を用いると良い。