証明
「A が正則行列」
$\Longrightarrow$ 「$A$ の列ベクトルが線形独立」
$A$ が
正則行列であるので、$A$ には
を満たす $A^{-1}$ が存在する。
このとき
$
A \mathbf{x} =\mathbf{0}
$
を満たす $\mathbf{x}$ は
である。
すなわち、
$
A \mathbf{x} =\mathbf{0}
$
には
自明な解しかない。
$A$ を $n \times n$ 行列であるとし、
列ベクトル
$\mathbf{a}_{i}$
によって、
と表わす。
また $\mathbf{x}$ を成分によって
と表すと、
$A\mathbf{x}=0$ は、
と表される。
ゆえに、
$A\mathbf{x}=0$ の解が $\mathbf{x}=0$ のみであることは、
と表される。
これは、
ベクトルの組 $\mathbf{a}_{1}, \mathbf{a}_{2}, \cdots, \mathbf{a}_{n}$
が
線形独立であることの定義そのものである。
従って
$A$ の列ベクトルは互いに線形独立である。
「A が正則行列」
$\Longleftarrow$ 「$A$ の列ベクトルが線形独立」
一般に列ベクトルが互いに線形独立な行列を
行基本変形によって
簡約化した行列は、
の形になることが知られている
(証明は「
列ベクトルが線形独立な行列の簡約化」を参考)。
すなわち、
簡約化された行列は、
基本ベクトル
が順に並ぶ行列になる。
従って、
$A$ の列ベクトルが線形独立であるならば、
$A$ を簡約化した行列 $A^{r}$ は
単位行列 $I$ になる。
すなわち、
$$
\tag{1}
$$
になる。
これを踏まえて、
$A$ を係数行列とする $n$ 次の連立一次方程式
に着目する。
ここで、
$\mathbf{u}$ は方程式の解であり、
$\mathbf{b}$ はどんな $n$ 次ベクトルであっても構わない。
$A \mathbf{u} = \mathbf{b} $ は、
$n$ 個の式から成る連立一次方程式であるが、
(a) 式の順番を入れ替える
(b) 式を定数倍する
(c) 式同士を足し合わせる
という操作を行ったとしたとしても解は変わらない。
また、
これらの操作は行うことは、
係数行列 $A$ を
行基本変形させることに相当する。
すなわち、
$A \mathbf{u} = \mathbf{b} $ に
(a)-(c) の操作の実行した連立一次方程式は、
その操作に対応する行基本変形を $A$ に対して行って得られる行列 $A'$ によって、
と表される。
ここで、
$\mathbf{b}'$ は
$A$ から
$A'$ が得られるときに実行した行基本変形を
$\mathbf{b}$ に対して行って得られるベクトルである。
ところで、
一般に
簡約化された行列は、もとの行列を行基本変形して得られる。
よって、
$A \mathbf{u} = \mathbf{b} $ に対して
(a)-(c) の操作を $A$ が簡約化されるように組み合わせて行うと、
$A^{r}$ を係数行列とする連立一次方程式
が得られる。
ここで、
$\mathbf{b}^r$ は
$A$ から
$A^r$ が得られるときに実行した行基本変形を
$\mathbf{b}$ に対して行って得られるベクトルである。
これと
$(1)$
から
を得る。
すなわち、
連立一次方程式
$A \mathbf{u} = \mathbf{b}$ の解は
$\mathbf{b}^{r}$ である。
$\mathbf{b}^{r}$ は、
$\mathbf{b}$ を行基本変形して得られるベクトルであるので、
任意の $\mathbf{b}$ に対して、
唯一つだけ存在するベクトルである。
したがって、
連立一次方程式
$A \mathbf{u} = \mathbf{b}$ は、
唯一つの解を持つ。
このことは $\mathbf{b} = \mathbf{e}_{i}$ の場合であっても成り立つので、
連立一次方程式
を満たす解 $\mathbf{u}_{i}$ は、
それぞれの $i$ に対して唯一つ存在する。
このような $\mathbf{u}_{i}$ によって、
$n$ 次正方行列 $U$ を
と定義すると、
$U$ は
を満たす。
ここで、
$I$ は
単位行列であり、
$\mathbf{e}_{i}$ が基本ベクトルであることを用いた。
これより
が成り立つので (証明は
逆行列は片側のみで定義可能を参考)、
$U$ は $A$ の逆行列である。
このように
$A$ には逆行列が存在するので、
正則行列である。