逆行列の固有値

  行列 $A$ が逆行列を持つとき、 $A$ の固有値が $a$ であるならば、 $A^{-1}$ の固有値は、$\frac{1}{a}$ である。 すなわち、
逆行列の固有値00
が成立する。 ここで、 $\mathbf{\lambda}_{a}$ を $A$ の固有ベクトルとした。

  解説

正則行列の固有値が0でないこと (準備)
  行列 $A$ が正則行列(逆行列を持つ行列)であり、 固有値 $a$ を持つ固有ベクトルを $\mathbf{\lambda}_{a}$ と表す。 すなわち、
逆行列の固有値01
とする。 ここで、${\lambda}_{a} \neq 0$ である。 この式は、
逆行列の固有値02
と表せる。 これは、 係数行列を $a I -A$ とする同次連立一次方程式であり、 ${\lambda}_{a} \neq 0$ の解を持つことと、行列式が $0$ であることが同値であることが知られている。 すなわち、
逆行列の固有値03
が成立する。
  これより、 固有値 $a$ が $0$ であるならば、 $A$ の行列式が $0$ である。 すなわち、
逆行列の固有値04
である。
  これの対偶をとると、 $A$ の行列式が $0$ でないならば、 固有値は $0$ ではないことが分かる。 すなわち、
逆行列の固有値05
が成立する。
  ところで、 $A$ が正則行列であることの必要十分条件は、 $A$ の行列式が $0$ でないことである。 すなわち、
逆行列の固有値06
が成立する。
  これらから、
逆行列の固有値07
が成立することが分かる。 すなわち、 行列 $A$ が正則行列であるならば、 固有値が $0$ ではない。


証明
  正則行列 $A$ の固有値 $a$ を持つ固有ベクトルを $\mathbf{\lambda}_{a}$ と表す。 すなわち、
逆行列の固有値08
とする。 $A$ が逆行列を持つので、 両辺に $A^{-1}$ を掛けることができ、
逆行列の固有値09
となる。
  ここで、 $a\neq 0$ であるので(上の議論を参考)、 両辺を $a$ で割ることができることから、
逆行列の固有値10
を得る。 ゆえに、 逆行列の固有値は、 もとの行列の固有値の逆数である。 また、 $A$ と $A^{-1}$ は共通の固有ベクトルを持つ。