逆行列の固有値
行列 $A$ が逆行列を持つとき、
$A$ の固有値が $a$ であるならば、
$A^{-1}$ の固有値は、$\frac{1}{a}$ である。
すなわち、
が成立する。
ここで、
$\mathbf{\lambda}_{a}$ を $A$ の固有ベクトルとした。
解説
正則行列の固有値が0でないこと (準備)
行列 $A$ が
正則行列(逆行列を持つ行列)であり、
固有値 $a$ を持つ固有ベクトルを $\mathbf{\lambda}_{a}$ と表す。
すなわち、
とする。
ここで、${\lambda}_{a} \neq 0$ である。
この式は、
と表せる。
これは、
係数行列を $a I -A$ とする同次連立一次方程式であり、
${\lambda}_{a} \neq 0$ の解を持つことと、行列式が $0$ であることが同値であることが知られている。
すなわち、
が成立する。
これより、
固有値 $a$ が $0$ であるならば、
$A$ の行列式が $0$ である。
すなわち、
である。
これの対偶をとると、
$A$ の行列式が $0$ でないならば、
固有値は $0$ ではないことが分かる。
すなわち、
が成立する。
ところで、
$A$ が正則行列であることの必要十分条件は、
$A$ の行列式が $0$ でないことである。
すなわち、
が成立する。
これらから、
が成立することが分かる。
すなわち、
行列 $A$ が正則行列であるならば、
固有値が $0$ ではない。
証明
正則行列 $A$ の固有値 $a$ を持つ固有ベクトルを $\mathbf{\lambda}_{a}$ と表す。
すなわち、
とする。
$A$ が逆行列を持つので、
両辺に $A^{-1}$ を掛けることができ、
となる。
ここで、
$a\neq 0$ であるので(上の議論を参考)、
両辺を $a$ で割ることができることから、
を得る。
ゆえに、
逆行列の固有値は、
もとの行列の固有値の逆数である。
また、
$A$ と $A^{-1}$ は共通の固有ベクトルを持つ。