解答例
下三角行列 $C$ を
と表すと、
$$
\tag{1.2}
$$
である。
$A= CC^{T}$
とすると、
$(1.1)$
と
$(1.2)$
から、
である。
各成分を比べると、
である。第一式から $a_{11}=\pm \sqrt{3}$
である。$a_{11}=+ \sqrt{3}$ と選ぶと、
第二式から
$a_{21} = -\frac{1}{\sqrt{3}}$
である。第三式から
$a_{22}^2 = \frac{2\sqrt{2}}{\sqrt{3}}$
である。
$a_{22} = + \frac{2\sqrt{2}}{\sqrt{3}}$
を選択すると、
を得る
(別の解もある)。
$
A = CC^{T}
$
が成り立つこと、
すなわち、
は直接の計算によって確かめられる。
証明
$A$ を $n\times n$ の正方行列とし、帰納法を用いて証明する。
$n=1$
の場合、
$A$ は正定値行列であるので、
唯一つの成分が正の値を持つ。
すなわち、
と表せる。ここで、
とすると、
であるので、
と表せる。よって、
$A$ はコレスキー分解可能である。
$n=k$
の場合にコレスキー分解可能であるとする。
$(k+1) \times (k+1)$ 行列 $A$ を次のように分割する。
ここで $A_{k}$ は
$k \times k$ の行列、
$\mathbf{a}$ は
$n \times 1$
の行列、
$\mathbf{b}$ は
$1 \times n$
の行列、
$\alpha$ は
$1 \times 1$
の行列である。
$A$ は
正定値行列であるので、
実対称行列である。
したがって、
$\mathbf{b} = \mathbf{a}^{T} $ が成り立つ。
そこで、$A$ を
$$
\tag{2.1}
$$
と表す。
$A$ が正定値行列であるので、
$A_{k}$ もまた正定値行列である
(証明は「
小行列もまた半正定値行列」を参考)。
よって、$A_{k}$ は
コレスキー分解可能であるので、
$$
\tag{2.2}
$$
を満たす下三角行列 $C_{k}$ が存在する。
これを用いて、
$(k+1)\times (k+1)$
行列
を定義する。ここで
$\mathbf{0}$ は 全ての成分が $0$ である
$n \times 1$ の行列である。
$D$ の逆行列は
である。
なぜなら、
$D^{-1}D=I$
が成り立つ。
ここで $I$ は
単位行列である。
また、
$C_{k}$ には逆行列 $C_{k}^{-1}$ が存在する(「
分解後の逆行列」を参考)。
これと
$(2.1)$ と
$(2.2)$ から
$$
\tag{2.3}
$$
が成り立つ。ここで
$C_{k}^{-1}\mathbf{a} = \mathbf{d}$
とした。
また、
とすると、
である
(なぜなら
$E^{-1}E=I$
が成り立つ)。これと
$(2.3)$ より、
$$
\tag{2.4}
$$
である。左辺は
$F=(E^{-1}D^{-1})^{T}$
とすると、
と表されることから分かるように、
$A$ と
合同な行列である。
一般に正定値行列と合同な行列もまた正定値行列である
(「
半正定値行列の合同な行列も半正定値」を参考)。
よって、
$(2.4)$
の右辺は正定値行列である。
また、
$(2.4)$
の右辺は
対角行列でもある。
対角行列の固有値は対角成分そのものである。
そして、正定値行列の固有値は正
(「
半正定値行列の固有値」を参考)
である。
以上から
$(2.4)$
の右辺の対角成分はすべて正の値である。よって、
が成り立つ。これより、
と定義すると、
$(2.4)$ より、
である。これと
転置行列の積の性質から
である。$D$ と $E$ と $G$ は下三角行列である。
下三角行列の積もまた下三角行列であるので、
$DEG$ は下三角行列である。
したがって、$A$ はコレスキー分解された。
以上から帰納法によって、
正定値行列 $A$ がコレスキー分解であることが示された。