ユニタリー行列はエルミート行列の指数関数
任意のユニタリー行列 $U$ には、
が成り立つエルミート行列 $H$ が存在する。
以下に証明を記す。
証明
$U$ を $n$ x $n$ のユニタリー行列とする。
すなわち、
を満たす $n$ 次正方行列であるとする。
この定義の
の部分から分かるように、
$U$ は
正規行列である。
一般に
正規行列はユニタリー行列によって対角化可能である。
したがって、 $U$ には、
を満たすユニタリー行列 $V$ と対角行列 $\Lambda$ が存在する。
また、一般に
対角化された行列の対角成分はその行列の固有値に等しい。
したがって、 $U$ の固有値を $\lambda_{1} \cdots \lambda_{n}$ とすると、
$\Lambda$ は
と表される行列である。
ところで、
$U$ がユニタリー行列であることから、
固有値 $\lambda_{j}$ は大きさ $1$ の複素数である。
そこで、
各固有値を
と表すと $
(j=1,2,\cdots,n)$、
$(2)$ の $\Lambda$ は
と表され、
$(1)$ から、
が成り立つことが分かる。
この式は、
各 $e^{i \theta_{j}}$ をテーラー展開して、
と表すと、
と表される。
また、
対角行列 $\Theta$ を
と定義すると、
であるので、
と表される。
この関係と、
$V$ がユニタリー行列であること
を用いると、
と表せるが、
累乗のユニタリー変換がユニタリー変換の累乗に等しいこと
から、
が成り立つので、
と表される。
ここで
と置くと、
となるが、
行列 $H$ は、
を満たすので、エルミート行列である。
ここで、
行列 $\Theta$ が
を満たすこと、
および、
随伴行列の性質
を用いた。
したがって、
$(3)$ はユニタリー行列 $U$ をエルミート行列 $H$ によって表した式である。
このとき、
行列の指数関数をテーラー展開にならって
と定義すると、
$(3)$ は
となる。
このように任意のユニタリー行列 $U$ は、
エルミート行列 $H$ の指数関数として表される。