テイラー展開の大切な性質と例

最終更新 2018年 3月10日
  テイラー展開の定義を紹介するための準備としてテーラーの定理を紹介する。
テイラーの定理
  関数 $f(x)$ が区間 $(a,b)$ で $n$ 階微分可能であるとき、 区間 $(a,b)$ に含まれる $c$ と 任意の $x \in (a,b)$ に対して、
テイラーの定理
を満たす $\xi$ が $c$ と $x$ の間に存在する。 これをテイラーの定理 という。
剰余項は誤差
  テイラーの定理の右辺の第 $n$ 項までの和は、 関数 $f(x)$ の $n-1$ 次近似式である ( テイラーの定理の解説 を参考)。 したがって、最後の項
は関数 $f(x)$ と $n-1$ 次近似式との誤差を表しており、 剰余項と呼ばれる。
 
続いてテイラーの級数の定義とテイラー展開との関連性について述べる。
テイラー級数
  $x=c$ において無限回微分可能な関数 $f(x)$ によって定義される次の級数
テイラー級数という。
  テイラーの定理の式
テイラーの定理
において、
と定義すると、
と表される。 したがって、 もしも剰余項が $n \rightarrow \infty$ の極限において、
となるならば、
が成り立つ。 右辺は、
であるので、テーラー級数に等しい。
  したがって、 剰余項の極限が $0$ である場合には、 テーラーの定理の極限がテーラー級数に等しくなる。 このような場合に次の定義が成される。
テイラー展開の定義
  $x=c$ において 無限回微分可能な関数 $f(x)$ がテイラー級数に等しいとき、 すなわち、
が成り立つとき、 右辺を $x=c$ における関数 $f(x)$ のテイラー展開という。 また、このように表せるとき、 $f(x)$ はテイラー展開可能であるという。
例 1
  $f(x)=\cos x$ についてテーラー展開可能であることを確認した上で、 実際にテーラー展開を表す。
 
であるので、 剰余項は
である。 剰余項の絶対値の $n \rightarrow \infty$ の極限を考えると、
が任意の $x, c \in (a,b)$ に対して成り立つ (最後の等式については補足を参考)。 これより $f(x)=\cos x$ はテイラー展開可能である。
  実際に $x=0$ におけるテイラー展開を表してみると、
であることから、
である。
  このように 関数がテイラー展開可能かどうかを判定するためには、 その関数の剰余項の極限が $0$ になるかどうかを見ればよい。 その一方で、 次の定理はさらに見通しのよい方法を与える。
テイラー展開可能性
  関数 $f(x)$ が区間 $( c-r, c+r )$ で無限回微分可能であり、 この区間の全ての $x$ において
を満たす連続関数 $g(x)$ があるとき $f(x)$ は $x=c$ でテイラー展開可能である。すなわち、
と表せる。

証明
  区間 $(c-r, c+r)$ を $I$ と表し、 関数 $f(x)$ が区間 $I$ で無限回微分可能であり、 この区間の全ての $x$ において
を満たす連続関数 $g(x)$ が存在すると仮定する ($n=0,1,2,\cdots$ )。
  $f(x)$ が区間 $I$ において無限回微分可能であることから、 テイラーの定理によって、
を満たす $c$ と $x$ の間にある数 $\xi$ が存在する。
  最後の項(剰余項)を
と表すと、 $R_{N}$ の絶対値は
を満たす。
  右辺の $ |f^{(N)}(\xi)| $ に着目する。 $\xi$ は $x$ と $c$ の間の数であるので、 区間 $I$ に含まれる。 ゆえに、仮定から
を満たす連続関数 $g(x)$ が存在する。
  $g(x)$ は区間 $I$ で定義される連続関数であるので、 $I$ の内部に含まれる閉区間 $[\xi-\alpha, \xi+\alpha]$ において連続関数である ($\alpha$ は十分に小さな値)。 ゆえに $g(x)$ は、この閉区間の中に最大値を持つ (補足2)。その最大値を $M$ とすると
である。 これより、
が成り立つ。
  ところで $x \in I$ であるので ($ c-r < x < c+r $ を満たすので)、
である。 ゆえに
が成立する。
  ここで数列 $a_{N}$ を
と定義すると、 この数列には
の関係がある。 十分に大きな $N$ に対しては、$\frac{r}{N}<1$ であることから、 $N \rightarrow \infty $ の極限において、$a_{N}$ はゼロに収束する (補足1 参考)。 すなわち、

である。 これより
となる。 したがって
である。
  これより、
を得る。
  左辺の $f(x)$ は $N$ に依らないので、 上の式は、
と表せる。 右辺の極限を
と略記することにより、
と表せる。 これは $x=c$ でのテイラー展開そのものである。

例 2
  関数 $f(x) = e^{x}$ とする。 $ f^{(n)}(x) = e^{x} $ であるので、
が成り立つ。 右辺の $e^{x}$ は連続関数であるから、上の定理によって $f(x)$ はテーラー展開可能であることが分かる。
  実際に $x=0$ においてテイラー展開してみると、 $ f^{(n)}(0) = 1 $ であるので、
となる。
マクローリン展開
  $x=0$ におけるテイラー展開
マクローリン展開という。
  上の $f(x) = e^{x}$ の例は、 $f(x)$ のマクローリン展開である。
補足1:
  任意の正の実数 $\alpha$ に対して、
が成り立つことを証明する。
  はじめに $\alpha$ よりも大きな自然数を $N$ とする (このような自然数が存在することは実数のアルキメデス性 (証明略) によって保障される)。 このとき $n > N$ であるならば、
と表した時の右辺の後半の
の部分は定数であり、 前半の
の部分は、$n \rightarrow 0$ の極限で $0$ になる。 したがって、
が成り立つ。
補足2:
  閉区間内で連続な関数には、その区間の中に最大値と最小値が存在する。これを連続関数の最大値・最小値の定理という。