テイラーの定理

最終更新 2018年 3月3日
テイラーの定理と解説
  関数 $f(x)$ が区間 $(a,b)$ で $n$ 階微分可能であるとき、 区間 $(a,b)$ に含まれる $c$ と 任意の $x \in (a,b)$ に対して、
テイラーの定理
を満たす $\xi$ が $c$ と $x$ の間に存在する。 これをテイラーの定理 という。

  解説
  テイラーの定理は関数の多項式近似を与える式になっていることを説明する。
  関数 $f(x)$ の $x=c$ における接線 $f_{1} (x)$ は、
である。
$f(x)$ と 接線 $f_{1}(x)$ の差を $R_{2} (x)$ とすると、
であり、 $f(x)$ は
と表される。 この式は $n=2$ の場合のテイラーの定理と第二項まで一致する。
  この式から分かるように、 $R_{2}(x)$ を良い精度で近似する二次関数が求まれば、 それによって $f(x)$ を二次関数で近似することが可能になる。
  そこで $R_{2}(x)$ の次の性質に着目する。 すなわち、 $R_{2}(x)$ が $R_{2}(c)=0$ かつ $R_{2}'(c) = 0$ を満たすので、 $x=c$ において $x$ 軸と接する関数であることに着目する。
$x=c$ において $x$ 軸と接する二次関数は一般的に
と表されるので、 $f_{2}(x)$ が $x=c$ において $R_{2}(x)$ と同じ二階微分を持つことを課すと、 すなわち、
を課すと、
が得られる。 これより、
である。
  このように得られた $f_{2}(x)$ は、 $x=c$ において $x$ 軸と接し、 同じ二階微分を持つという意味で $R_{2} (x)$ をよく近似する二次関数になっている。 一方、 $f_{2}(x)$ は $R_{2} (x)$ と等しいわけではないので、 両者の違いを
と定義すると、 $f(x)$ は
と表される。 これは $n=3$ の場合のテイラーの定理と第三項まで一致する。
  このような考察を繰り返して行くと、
という式が現れる。 この式は第 $n$ 項までテイラーの定理と一致する。 これまでの考察から分かるように、 第 $n$ 項までの式は、関数 $f(x)$ を $n-1$ 次関数で近似した式と解釈される。
  ゆえにテイラーの定理は、 関数 $f(x)$ を $n-1$ 次関数で近似した式と $f(x)$ との差を表す $R_{n}(x)$ が、 $x$ と $c$ の間にある数 $\xi$ によって
と表されることを示す定理である。
  なお、一般に $R_{n}(x)$ を剰余項と呼ぶ。

テイラーの定理の証明
  $x=c$ の場合、明らかに
は成り立つ。 そこで以下では、 $x \neq c$ の場合のみを考察する。
  関数 $F(x)$ と $G(x)$ をそれぞれ
と定義し、 $a \lt x \lt c < b$ の場合の証明を行う。
  $f(x)$ が区間 $(a,b)$ で $n$ 階微分可能であることから、 これよりも内側の区間 $[x,c]$ において関数 $F(x)$ は連続でかつ微分可能である (微分可能ならば連続を参考)。 $G(x)$ もこの区間で連続かつ微分可能であるので、 コーシーの平均値の定理 により
を満たす $x_{1}$ が区間 $(x, c)$ の中に存在する。
  $F(c)=G(c)=0$ であることから、
である。
  同じように、 $f(x)$ が区間 $(a,b)$ で $n$ 階微分可能であることから、 これよりも内側の区間 $[x_{1},c]$ において関数 $F'(x)$ は連続かつ微分可能である。 $G'(x)$ もこの区間で連続かつ微分可能であるので、 コーシーの平均値の定理 により
を満たす $x_{2}$ が区間 $(x_{1}, c)$ の中に存在する ($F^{(2)}$ と $G^{(2)}$ は二階微分) 。
$F'(c)=G'(c)=0$ であることから、
である。
  以上から
を得る。 ここで $x_{2}\in(x, c)$ である。
  同様の手続きを $F^{(n)}$ が現れるまで繰り返すことによって
を満たす $x_{n}\in(x, c)$ が存在することが示される。
  この式は、
であることから、
と表される。
  左辺の $F(x)$ を定義を用いて書き直し、 $x_{n} = \xi$ とすると、
と表されるので、 $f(x) =$ の形に書き直すと、
となる。 ここで $\xi \in (x,c)$ ($\xi$ は $x$ と $c$ の間の数) である。
  以上より $a \lt x \lt c \lt b$ の場合にテイラーの定理が証明された。
  $a \lt c \lt x \lt b$ の場合も、 同様の考察によって証明される。
:
  $f(x) = \sin x$ のとき、
であることから、 $n=5$ かつ $c=0$ の場合のテイラーの定理により、
を満たす $\xi$ が $0$ と $x$ の間に存在する。
  これと $\cos \xi \leq 1$ を用いると、$x \geq 0$ ならば
が成り立つことが分かる。
有限テイラー展開
  関数 $f(x)$ が区間 $(a,b)$ で $n$ 階微分可能であるならば、 区間 $(a,b)$ に含まれる $c$ と 任意の $x \in (a,b)$ に対して、 $f(x)$ を
と表すことができる。 ここで $o(\cdot )$ はランダウ記号である。 この表現を有限テイラー展開という。

  証明
  $f(x)$ が区間 $(a,b)$ で $n$ 階まで微分可能であるならば、 テイラーの定理によって、 区間 $(a,b)$ に含まれる $c$ に対して、
を満たす $\xi$ が $c$ と $x$ の間に存在する。
  最後の項 (剰余項) に着目し、
と表し、 最後の項を
と定義すると、 テイラーの定理は
と表される。
  ここで、極限
を考えると、 $\xi$ が $x$ と $c$ の間の数であるので、 $0<\theta <1$ を満たす $\theta$ によって、 $\xi = c + \theta(x-c)$ と表せることから
が成立する。 従って $g(x)$はランダウ記号 $o(\cdot)$ によって、
と表せる関数である。
  ゆえに、 テーラーの定理を
と表すことができる。