スターリングの公式
自然数 $N$ が十分に大きい場合に、$N$ の階乗の対数は
と近似される。
この近似をスターリングの公式 (Stirling's formula) という。
最終更新 2015年 11月 29日
証明
次の積分
積分区間を幅が $\frac{1}{2}$ の区間に分けて

右辺を奇数項と偶数項に分けると、

ここで積分


これより、左辺と右辺の差によって、$\alpha^{(+)}_{n}$ を





$\alpha^{(+)}_{n}$ と $\alpha^{(-)}_{n}$ を用いると、積分 $I$ は

この式をさらに

$(1)$ より、積分 $I$ の値は、


右辺の対数の和は、


ここで $\delta_{N}$ を



これより

この結果をウォリスの公式

すると左辺が


後で示すように $N \rightarrow \infty$ の極限で $\delta_{N}$ は収束するので、極限を $\delta$ と定義する。すなわち、


この結果から $(2)$ の右辺は十分に大きな $N$ に対して

以上から

この式から




補足: 総和 $\delta_{N}$ の収束について
上で定義した総和
各項は

各項の大きさを比較するために、幾つかの点を定義する(下図参考)。 点A、点B、点D をそれぞれ座標値が $(n-\frac{1}{2}, \log n)$、 $(n-\frac{1}{2}, \log (n-\frac{1}{2}))$、 $(n, \log n)$ の点とする。 点D における $\log x$ の接線と $x= n-\frac{1}{2}$ との交点を C とする。 $x= n+\frac{1}{2}$ との交点を H とする。 点E、点G、点I、点J をそれぞれ座標値が $(n+\frac{1}{2}, \log n)$、 $(n+\frac{1}{2}, \log (n+\frac{1}{2}))$、 $(n+\frac{1}{2}, \log (n+1))$、 $(n+1, \log (n+1))$ の点とする。 点D と点J を通る直線と $x= n+\frac{1}{2}$ との交点を F とする。


$\triangle$DCA と $\triangle$DHE は合同な三角形なので、互いの面積は等しい。 それを

$\alpha^{(+)}_{n}$ は曲線 DG 線分 GE と線分 ED とで囲まれる領域の面積である。 $\log x$ が凸関数であることから、その面積は、$\triangle$DHE よりも小さい。 それを

また、$\log x$ が凸関数であることから、 $\alpha^{(+)}_{n}$は、$\triangle$DFE の面積よりも大きい。 それを

$\triangle$DFE と $\triangle$JFI は合同な三角形なので、互いの面積は等しい。 それを

$\alpha^{(-)}_{n}$ は曲線 JG と線分 GI と線分 IJ と で囲まれる領域の面積である。 図からわかるように、これは $\triangle$JFI の面積よりも小さい。 それを

以上の$(2)(3)(4)(5)(6)(7)$ により、任意の $n \geq 2$ に対して

同様に $\alpha^{(+)}_{1}>\alpha^{(-)}_{1}$ も成立するので、

また $\alpha^{(+)}_{n}$ と $\alpha^{(-)}_{n}$ は、$n \rightarrow \infty $ の極限で 0 に収束する。 こういった性質を持つ交代級数は一般に収束するので、$\delta_{N}$ は収束する。