シグモイド性質と公式
シグモイド関数の定義
次の関数
を
シグモイド関数(sigmoid function)という。
この関数には以下のような性質がある。
単調増加性
シグモイド関数は単調増加関数である。
すなわち、正の数 $a$ に対して、
が成り立つ。
証明
$a$ が正の数であるとき、
が成り立つ。最後の不等号では、$e^{-a} \lt 1$ と $e^{-x}>0$ を用いた。
したがって、
である。
$\pm \infty$ における極限
シグモイド関数の $\pm \infty$ における極限はそれぞれ
である。
証明
まず
であるので、
である。
これと
関数の商の極限により、
である。
一方で、
であるので、
である。これと
関数の商の極限により、
である。
シグモイド関数の対称性
シグモイド関数は、点 $(0, \frac{1}{2})$ に対して点対称な関数である。
すなわち、
が成り立つ (下図参考)。
シグモイド関数の微分
シグモイド関数の微分は
である。
シグモイド関数の積分
シグモイド関数の積分は、
である。
証明
とする。
$t = e^{-x} + 1$ と置くと、
であるので、置換積分によって、
である。
最後の行で
分数の対数関数の性質を用いた。
この結果は
シグモイド関数の定義によって、
と表すこともできる。
シグモイド関数の逆関数
シグモイド関数を
とするとき、
である。すなわち、シグモイド関数の逆関数は
である。
証明
と置くと、
$y>0$ であるので、
と表すことができ、
これより、
であるので、
対数関数の定義から、
と表せる。
ここで $0 \lt y \lt 1$ であることを用いた。
変曲点が $(0, \frac{1}{2})$
シグモイド関数には唯一つの変曲点 $(0, \frac{1}{2})$ がある。
証明
シグモイド関数の微分は、
であるので、
商の微分の公式を用いると、
二階の微分は、
であることが分かる。
したがって、
であるので、
$S(x)$ は $x=0$ のときにのみ変曲点を持つ ($S'(x)$ の符号が入れ替わる)。
$S(0) = \frac{1}{2}$ であるので、
$S(x)$ の唯一つの変曲点は $(0, \frac{1}{2})$ である。
双曲線関数との関係
双曲線関数
と
シグモイド関数の間には、
の関係がある。
ステップ関数 (階段関数) との関係
シグモイド関数を一般化し、$a>0$ に対して、
と定義するとき、
この関数は
$a \rightarrow +\infty$ の極限において、
ステップ関数に近づく。
$a=1$ の場合 (
赤色)
$a=3$ の場合 (
オレンジ色)
$a=8$ の場合 (
茶色)
階段関数 (
青色)
解説
$x > 0$ のとき、
であるので、
である。
一方で、
$x \lt 0$ のとき、
であるので、
である。
したがって、$S(a, x)$ は、
の極限を持つ関数である。
この性質と
階段関数の定義
を比べると分かるように、
十分に大きな $a$ に対するシグモイド関数は、
階段関数の良い近似となる。
補足
シグモイド関数は深層学習システムの中で、
各層から出力される中間データを変換する活性化関数として利用されることがある。