積の微分、商の微分、和の微分
準備
はじめに、本ページの証明で用いる定義と定理を記す。
$(0)$ 次の極限
が収束する
(特定の値を持つ)
とき、
$h(x)$ が $x=a$ で
微分可能であるといい、
その極限値を次のように表す。
$(1)$
関数の和の極限は極限の和に等しい
$(2)$
関数の定数倍の極限は極限の定数倍に等しい
$(3)$
関数の積の極限は極限の積に等しい
$(4)$
関数の商の極限は極限の商に等しい
$(5)$
微分可能な関数は連続
積の微分の公式
関数 $f(x)$ と $g(x)$ が区間 $A$ において
微分可能であるとき、
積 $f(x)g(x)$ もまたその区間で微分可能であり、
が成り立つ。
証明
任意の $a \in A$ において
$$
\tag{2.1}
$$
が成り立つ。
ここで、2つめの等号では
$(1)$ を、
3つめの等号では
$(2)$
と
$(3)$
を、
4つめの等号では
$(0)$
と
$(5)$ を用いた。
$f(x)$ と $g(x)$ が区間 $A$ で微分可能であるので、
$f'(a)$
と
$g'(a)$
が存在するため
(何らかの値であるため)、
$(2.1)$
の極限は収束する。
したがって、
関数 $f(x)g(x)$
は
$x=a$
で微分可能である。
そこで
$(0)$
に従って
と表すと、上の関係は
と表される。
任意の $a \in A$ に対して、
この関係が成り立つので、
である。
例題:
関数 $x \cos x$ に対し、
$f(x)=x$、$g(x)=\cos x$ と置くと、
となる。
商の微分の公式
関数 $f(x)$ と $g(x)$ が区間 $A$ において
微分可能であるとき、
関数の商 $\frac{f(x)}{g(x)}$ もまたその区間で微分可能であり、
が成り立つ。ただし、$g(x) \neq 0$ とする。
証明
任意の $a \in A$ において、
$g(a) \neq 0$ のとき、
$$
\tag{3.1}
$$
が成り立つ。
ここで、3つめの等号では
$(2)$
を、
4つめの等号では
$(3)$
を、
5つめの等号では
$(1)$
と
$(2)$
と
$(4)$
を、
6つめの等号では
$(0)$
と
$(5)$
を用いた。
$f(x)$ と $g(x)$ が区間 $A$ で微分可能であるので、
$f'(a)$
と
$g'(a)$
が存在し
(何らかの値であり)、
$g(a) \neq 0$ であるので、
$(3.1)$
の極限は収束する。
したがって、関数 $\frac{f(x)}{g(x)}$
は
$x=a$
で微分可能である。
そこで
$(0)$
に従って
と表すと、上の関係は
と表される。
任意の $a \in A$ に対して、
この関係が成り立つので、
である。
例:
関数 $\frac{\cos x}{x}$ に対し、
$f(x)=\cos x$、$g(x)= x$ と置くと、
となる。
和の微分の公式
関数 $f(x)$ と $g(x)$ が区間 $A$ において
微分可能であるとき、
積 $f(x)+g(x)$ もまたその区間で微分可能であり、
が成り立つ。
証明
任意の $a \in A$ において
$$
\tag{4.1}
$$
が成り立つ。
ここで、1つめの等号では
$(1)$
を、
3つめの等号では
$(0)$
を用いた。
$f(x)$ と $g(x)$ が区間 $A$ で微分可能であるので、
$f'(a)$
と
$g'(a)$
が存在するため
(何らかの値であるため)、
$(4.1)$
の極限は収束する。
したがって、関数 $f(x)+g(x)$
は
$x=a$
で微分可能である。
そこで、
$(0)$
に従って
と表すと、上の関係は
と表される。
任意の $a \in A$ に対して、この関係が成り立つので、
である。
例:
関数 $x+\sin x$ に対して、 $f(x)=x$、$g(x)=\sin x$ と置くと、
となる。
定数倍の微分
関数 $f(x)$
が区間 $A$
において
微分可能であるとき、
定数倍 $C f(x)$ もまたその区間で微分可能であり、
が成り立つ。
証明
任意の $a \in A$ において
$$
\tag{5.1}
$$
が成り立つ。
ここで、
2つめの等号では
定数倍の極限の性質を用いた。
$f(x)$
が区間 $A$ で微分可能であるので、
$f'(a)$
が存在するため
(何らかの値であるため)、
$(5.1)$
は収束する。
したがって、関数 $C f(x)$ は
$x=a$
で微分可能である。
そこで、
$(0)$
に従って
と表すと、上の関係は
と表される。
任意の $a \in A$ に対して、この関係が成り立つので、
である。