関数の和の極限・積の極限・商の極限

最終更新 2018年 12月 1日
関数の極限とは
  関数の極限を表す記号
関数の極限
とは、次の命題が成り立つことを表している。
  すなわち、 任意の正の数 $\epsilon$ に対して、 ある正の数 $\delta$ が存在し、
$$ \tag{1} $$ を満たす全ての $x$ に対して
$$ \tag{2} $$ が成り立つ (下図)。
関数の極限の図
$\epsilon$ は任意の正の数であるので、 $(1)$ の幅は幾らでも小さく考えてもよい。 そういう意味で関数の極限は次のように解釈できる。 すなわち、関数 $f(x)$ は、 $x$ を $a$ に近づけてゆけば $\alpha$ を中心とするどんな小さな幅の中にも収まる。
  $(1)$ と $(2)$を書き直すと、それぞれ
であるので、 極限の定義を論理記号を用いて、
と表すことができる。 ここで $\forall$ は「任意の」を表し、$\exists$ は「存在する」を表す。
  この性質を満たす $\alpha$ を関数 $f(x)$ の $x \rightarrow a$ における 極限(値)という。
和の極限
  関数の和の極限は、それぞれの極限値の和に等しい。 すなわち、
が成り立つ。

証明
  はじめに
であるとすると、極限の定義より 任意の正の $\epsilon_{f}$ と $\epsilon_{g}$ に対して、 ある正の数 $\delta_{f}$ と $\delta_{g}$ が存在し、 $|x-a| < \delta_{f}$ であるならば
$$ \tag{1} $$ が成り立ち、 $|x-a| < \delta_{g}$ であるならば、 であるならば
$$ \tag{2} $$ が成り立つ。
  したがって、
と $\delta$ を定義すると、 $|x-a| < \delta $ であるならば、 $|x-a| < \delta_{f} $ かつ $|x-a| < \delta_{g} $ であるので、 $(1)$ と $(2)$ と 三角不等式により、
$$ \tag{3} $$ が成り立つ。
  ここで $\epsilon_{f}$ と $\epsilon_{g}$ は任意の正の数であるので、 $(3)$ は
$$ \tag{4} $$ の場合でも成り立つ。 すなわち、 $(4)$ で定義された $\epsilon_{f}$ と $\epsilon_{g}$ に対して、 $(3)$ を成り立たせる正の数 $\delta$ が存在する。
  ゆえに、 $|x-a|<\delta$ であるならば、
が成り立つ正の数 $\delta$ が存在する。 したがって \begin{eqnarray} \lim_{x \rightarrow a} (f(x) + g(x)) = \alpha + \beta \end{eqnarray} である。

積の極限
  関数の積の極限は、それぞれの極限値の積に等しい。 すなわち、
が成り立つ。

証明
 
であるとすると、 極限の定義より 任意の正の $\epsilon_{f}$ に対して、 ある正の数 $\delta_{f}$ が存在し、 $|x-a|<\delta_{f}$ であるならば、
$$ \tag{1} $$ が成り立つ。 $(1)$ は
と表されるので、 $|f(x)|$ は $|\alpha + \epsilon_{f}|$ よりも小さいか、 $|\alpha - \epsilon_{f}|$ よりも小さいかのどちらかである。 したがって、これらのうちの大きい方を $M$ と定義すると、 すなわち、
とすると、
$$ \tag{2} $$ が成り立つ。
  一方、
であるとすると、 極限の定義より 任意の正の $\epsilon_{g}$ に対して、 ある正の数 $\delta_{g}$ が存在し、 $|x-a|<\delta_{g}$ であるならば、
$$ \tag{3} $$ が成り立つ。
  したがって、
と $\delta$ を定義すると、 $|x-a| < \delta$ であるならば、 $|x-a| < \delta_{f}$ かつ $|x-a| < \delta_{g}$ であるので、 $(1)$ $(2)$ $(3)$ と三角不等式により、
$$ \tag{4} $$ が成り立つ。
  $\epsilon_{f}$ と $\epsilon_{g}$ は任意の正の数であるので、 $(4)$ は
$$ \tag{5} $$ の $\epsilon_{f}$ と $\epsilon_{g}$ に対しても成り立つ。 すなわち、 $(5)$ で定義された $\epsilon_{f}$ と $\epsilon_{g}$ に対して、 $(4)$ を成り立たせる正の数 $\delta$ が存在する (ここで $\beta\neq 0$ としたが、 $\beta=0$ の場合には $\epsilon_{g}$ を任意の正の値とする)。
  ゆえに、 $|x-a|<\delta$ であるならば、 任意の正の数 $\epsilon$ に対して
が成り立つ正の数 $\delta$ が存在する。 よって、
である。

商の極限
  関数の商の極限は、それぞれの極限値の商に等しい。 すなわち、
が成り立つ。 ただし、$\beta \neq 0$ とする。

証明
  $\beta \neq 0$ とする。
が成り立つとすると、 極限の定義より、 任意の正の $\epsilon_{g}$ に対して、 ある正の数 $\delta_{g}$ が存在し、 $|x-a|<\delta_{g}$ であるならば、
$$ \tag{1} $$ が成り立つ。 $(1)$ は
と表されるので、 $|g(x)|$ は $|\beta - \epsilon_{g}|$ よりも大きいか、 $|\beta + \epsilon_{g}|$ よりも大きいかのどちらかである。 したがって、 これらのうちの小さい方を $L$ と定義すると、 すなわち、
とすると、
$$ \tag{2} $$ が成り立つ。
  これらを踏まえて初めに
を証明する。 $|x-a| < \delta_{g}$ を満たす $x$ には、 $(1)$ と $(2)$ より、
$$ \tag{3} $$ が成り立つ。 $\epsilon_{g}$ は任意の正の数であるので、
$$ \tag{4} $$ の場合でも $(3)$ は成り立つ。 すなわち、 $(4)$ で定義された $\epsilon_{g}$ に対して、 $(3)$ を成り立たせる正の数 $\delta_{g}$ が存在する
  ゆえに、 $|x-a|<\delta_{g}$ であるならば、 任意の正の数 $\epsilon$ に対して
が成り立つ正の数 $\delta_{g}$ が存在する。 よって、
$$ \tag{5} $$ である。
  続いて
を証明する。 $(5)$ において $\frac{1}{g(x)} = h(x)$ とすると、
である。 ここで
が成り立つとすると、 関数の積の極限の性質より、
である。 $\frac{1}{g(x)} = h(x)$ であったので、
である。