有界・上界・下界とは?

上に有界・下に有界・上界・下界
  集合 $S$ に含まれる全ての数がある一つの数 $M$ よりも大きくないとき、 $S$ は上に有界であるといい、 $M$ を上界という。 言い換えると、全ての $x \in S$ に対して、 \begin{eqnarray} x \leq M \end{eqnarray} が成り立つとき、$M$ を $S$ の上界といい、$S$ が上に有界であるという。
  同様に、 集合 $S$ に含まれる全ての数がある一つの数 $m$ よりも小さくないとき、 $S$ は下に有界であるといい、 $m$ を下界という。 言い換えると、全ての $x \in S$ に対して、 \begin{eqnarray} m \leq x \end{eqnarray} が成り立つとき、$m$ を $S$ の下界といい、 $S$ が下に有界であるという。
  集合 $S$ が上に有界であり、かつ、下に有界であるとき、 $S$ を有界な集合という。 したがって、$S$ が有界なとき、 $S$ に含まれる全ての数 $x$ に対して、 \begin{eqnarray} m \leq x \leq M \end{eqnarray} が成り立つ $m$ と $M$ が存在する。
具体例
  以下の集合が下に有界であるか、上に有界であるか、有界であるか。

$(1)$   $S_{1} = \{1,2,3,4,5,6 \}$

$(2)$   $S_{2} =$ {自然数全体}

$(3)$   $S_{3} =$ {整数全体}

$(4)$   $S_{4} = ( -2, 0 \hspace{0.5mm}]$

$(5)$   $S_{5} = [ -2, \infty \hspace{0.5mm} )$
解説
$(1)$   $S_{1} = \{1,2,3,4,5,6 \}$
  集合 $S_{1}$ に含まれる任意の数 $x$ が \begin{eqnarray} 1 \leq x \leq 6 \end{eqnarray} を満たすので、 $S_{1}$ は上に有界であり、かつ、下に有界である。 すなわち、 $S_{1}$ は有界である。 また、$1$ 以下の数はどれでも $S_{1}$ の下界であり、 $6$ 以上の数はどれでも $S_{1}$ の上界である。


$(2)$   $S_{2} =$ {自然数全体}
  集合 $S_{2}$ が \begin{eqnarray} S_{2} = \{ 1,2,3, \cdots \} \end{eqnarray} であるので、 $S_{2}$ に含まれる任意の数 $x$ は \begin{eqnarray} 1 \leq x \end{eqnarray} したがって、 $S_{2}$ は下に有界である。 また、$1$ 以下の数はどれでも $S_{2}$ の下界である。


$(3)$   $S_{3} =$ {整数全体}
  集合 $S_{3}$ が \begin{eqnarray} S_{3} = \{\cdots, -2,-1, 0,\hspace{1mm}1,\hspace{1mm}2, \cdots \} \end{eqnarray} であるので、上にも下にも有界ではない。


$(4)$   $S_{4} = ( -2, 0 \hspace{0.5mm} ]$
  $S_{4}$ は $-2$ よりも大きく、$0$ 以下の実数の集合である。 したがって、 集合 $S_{4}$ に含まれる任意の数 $x$ は \begin{eqnarray} -2 \leq x \leq 0 \end{eqnarray} を満たすので、$S_{4}$ は有界である。 また、$-2$ 以下の数はどれでも $S_{4}$ の下界であり、 $0$ 以上の数はどれでも $S_{4}$ の上界である。


$(5)$   $S_{5} = [ -2, \infty \hspace{0.5mm} )$
  $S_{5}$ は $-2$ 以上の実数の集合である。 したがって、 集合 $S_{5}$ に含まれる任意の数 $x$ は \begin{eqnarray} -2 \leq x \end{eqnarray} を満たすので、$S_{5}$ は下に有界である。 また、$-2$ 以下の数はどれでも $S_{5}$ の下界である。

有界な数列
  数列 $a_{n}$ の全てが上に有界であるとき、 上に有界な数列という。 下に有界であるとき、下に有界な数列という。 上に有界であり、かつ、下に有界であるとき、 単に有界な数列という。
  以下の数列は上に有界であるか、下に有界であるか、有界な数列であるか。

$(1)$   $a_{n} = 2n$

$(2)$   $b_{n} = - \frac{1}{n}$

$(3)$   $c_{n} = (-1)^{n}$
解説
$(1)$   $a_{n} = 2n$
  \begin{eqnarray} a_{n}&=& 2,4,6,\cdots \\ &\geq & 2 \end{eqnarray} を満たすので、 $a_{n}$ は下に有界な数列である。


$(2)$   $b_{n} = - \frac{1}{n}$
  \begin{eqnarray} b_{n}&=& -1, -\frac{1}{2}, -\frac{1}{3}, \cdots \\ &\leq & 0 \end{eqnarray} を満たすので、 $b_{n}$ は上に有界な数列である。


$(3)$   $c_{n} = (-1)^{n}$
  \begin{eqnarray} c_{n}&=& -1, 1, -1, 1 \cdots \end{eqnarray} であるので、 \begin{eqnarray} -1 \leq c_{n} \leq 1 \end{eqnarray} を満たす。 したがって、 $c_{n}$ は有界な数列である。

収束列 ⇒ 有界列
  収束する数列は、有界な数列である。
証明
  数列 $\{ a_{n} \}$ が収束し、 極限値が $\alpha$ であるとする。 すなわち、
であるとする。 このとき、 任意の正の $\epsilon$ に対して、 自然数 $N_{\epsilon}$ が存在し、
が成り立つ。 当然同じことが $\epsilon=1$ の場合にも成り立つ。 すなわち、 $\epsilon = 1$ に対して、 自然数 $N_{1}$ が存在し、
が成り立つ。書き換えると、
である。 さらに書き下すと、
$$ \tag{4.1} $$ である。そこで
$$ \tag{4.2} $$ と最小値と最大値を定義すると、 $(4.1)$ より、
が成り立つ。また、 $(4.2)$ から
が成り立つ。よって、 任意の自然数 $n$ に対して、
が成り立つので、 $\{ a_{n} \}$ が成り立つ。

有界な関数
  集合 $S$ で定義された関数の $f(x)$ の値の集合 \begin{eqnarray} \big\{ f(x)\hspace{1mm} | \hspace{1mm} x \in S \hspace{1mm}\big\} \end{eqnarray} が上に有界のとき、 上に有界な関数という。 下に有界なとき、下に有界な関数という。 上に有界であり、かつ、下に有界であるとき、 単に有界な関数という。
  以下の関数は上に有界であるか、下に有界であるか、有界な関数であるか。

$(1)$   $f_{1}(x) = -|x| \hspace{5mm} (-\infty \leq x \leq \infty)$

$(2)$   $f_{2}(x) = \frac{1}{x} \hspace{5mm} (0 \lt x )$

$(3)$   $f_{3}(x) = x^2 \hspace{5mm} (-1 \leq x \lt 2) $
解説
$(1)$   $f_{1}(x) = -|x| \hspace{5mm} (-\infty \leq x \leq \infty)$
上に有界な関数の図
上のグラフから分かるように、 \begin{eqnarray} f_{1}(x) \leq 0 \end{eqnarray} であるので、上に有界である。


$(2)$   $f_{2}(x) = \frac{1}{x} \hspace{5mm} (0 \lt x )$
下に有界な関数の図
上のグラフから分かるように、 \begin{eqnarray} f_{2}(x) \geq 0 \end{eqnarray} であるので、下に有界である。


$(3)$   $f_{3}(x) = x^2 \hspace{5mm} (-1 \leq x \lt 2)$
有界な関数の図
上のグラフから分かるように、 \begin{eqnarray} 0 \leq f_{2}(x) \leq 4 \end{eqnarray} であるので、 $f_{2}(x)$ は有界である。