数列の和の極限・積の極限・商の極限

最終更新 2018年 11月17日
数列の極限とは
  数列の極限を表す記号
とは、次の命題が成り立つことを表している。
  すなわち、 任意の正の数 $\epsilon$ に対して、 ある整数 $N$ が存在し、 その $N$ よりも大きな全ての整数 $n$ に対して、
$$ \tag{1} $$ が成り立つ (下図)。
$\epsilon$ は任意の正の数であるので、 $(1)$ の幅は幾らでも小さく考えてもよい。 そういう意味で数列の極限は次のように解釈できる。 すなわち、数列 $a_{n}$ は $n$ を大きくしてゆくと、 $\alpha$ を中心とするどんな小さな幅の中にも収まってしまう。
  $(1)$ を書き直すと、
であるので、 この極限の定義を論理記号を用いて、
と表すことができる。 ここで $\forall$ は「任意の」を表し、$\exists$ は「存在する」を表す。 また、$\mathbb{N}$ は整数を表す。
  この性質を満たす $\alpha$ を数列 $a_{n}$ の極限(値)という。
和の極限
  数列の和の極限は、それぞれの極限値の和に等しい。 すなわち、
が成り立つ。

証明
  はじめに
であるとすると、極限の定義より 任意の正の $\epsilon_{a}$ と $\epsilon_{b}$ に対して、 ある整数 $N_{a}$ と $N_{b}$ が存在し、 $n > N_{a}$ であるならば、
$$ \tag{1} $$ が成り立ち、 $n > N_{b}$ であるならば、
$$ \tag{2} $$ が成り立つ。
  したがって、
と $N$ を定義すると、 $n > N$ であるならば、 $n > N_{a}$ かつ $n > N_{b}$ であるので、 $(1)$ と $(2)$ と 三角不等式により、
$$ \tag{3} $$ が成り立つ。
  ここで $\epsilon_{a}$ と $\epsilon_{b}$ は任意の正の数であるので、 $(3)$ は
$$ \tag{4} $$ の場合でも成り立つ。ここで $\epsilon$ は任意の正の数である。
  ゆえに、 $n>N$ であるならば、 $(3)$ が成り立ち、 $(4)$ を用いると、 任意の正の数 $\epsilon$ に対して
が成り立つ($N$ が存在する )。 したがって
である。

補題1
 
であるならば、 全ての $n$ に対して
を満たす数 $M$ が存在する。

証明
  極限の定義より
であるならば、 任意の正の $\epsilon$ に対して、 ある整数 $N$ が存在し、 $n > N$ である全ての $n$ に対して
が成り立つ。これより、
であるので、
と $M'$ を定義すると、$n > N$ の場合には、
が成り立つ。 一方で、$n \leq N$ の場合には成り立つとは限らない。
  そこで、$n \leq N$ の場合の $|a_{n}|$ に $M'$ を含めた集合の最大値を $M$ と定義すると、 すなわち、
とすると、$M$ は $n \leq N$ の場合の $|a_{n}|$ 以上であり、 なおかつ、$n > N$ の場合の $|a_{n}|$ よりも大きな数になる。 したがって、$M$ は全ての $n$ に対して、
を満たす数である。 ゆえに、このような $M$ が存在する。

積の極限
  数列の積の極限は、それぞれの極限値の積に等しい。 すなわち、
が成り立つ。

証明
 
とすると、 極限の定義より 任意の正の $\epsilon_{a}$ と $\epsilon_{b}$ に対して、 ある整数 $N_{a}$ と $N_{b}$ が存在し、 $n > N_{a}$ であるならば、
$$ \tag{1} $$ が成り立ち、 $n > N_{b}$ であるならば、
$$ \tag{2} $$ が成り立つ。 また補題1より、すべての $n$ に対して
$$ \tag{3} $$ を満たす $M$ が存在する。
  したがって、
と $N$ を定義すると、 $n > N$ であるならば、 $n > N_{a}$ かつ $n > N_{b}$ であるので、 $(1)$ $(2)$ $(3)$ と三角不等式により、
$$ \tag{4} $$ が成り立つ。
  $\epsilon_{a}$ と $\epsilon_{b}$ は任意の正の数であるので、 $(4)$ は
$$ \tag{5} $$ の場合でも成り立つ。 ここで $\epsilon$ は任意の正の数である ( ここで $\beta\neq 0$ としたが、 $\beta=0$ の場合には $\epsilon_{b}$ を任意の正の値とする)。
  ゆえに、 $n>N$ であるならば、 $(4)$ が成り立ち、 $(5)$ を用いると、 任意の正の数 $\epsilon$ に対して
が成り立つ ( $N$ が存在する )。 よって、
である。

補題2
 
であるならば、 全ての $n$ に対して
を満たす数 $L$ が存在する。

証明
  極限の定義より
であるならば、 任意の正の $\epsilon$ に対して、 $n > N$ であるならば、
が成り立つ整数 $N$ が存在する。これより、
が成り立つので、 $L' = \min[ |\alpha + \epsilon|, |\alpha - \epsilon| ] $ と定義すると、
が $n > N$ の場合に成り立つ。 一方で、$n \leq N$ の場合には成り立つとは限らない。
  そこで、$n \leq N$ の場合の $|a_{n}|$ に $L'$ を含めた集合の最小値を $L$ と定義すると、 すなわち、
とすると、$L$ は $n \leq N$ の場合の $|a_{n}|$ 以下であり、 なおかつ、$n > N$ の場合の $|a_{n}|$ よりも小さい数になる。 したがって、$L$ は全ての $n$ に対して、
を満たす数である。 よって、このような $L$ が存在することが示された。

商の極限
  数列の商の極限は、それぞれの極限値の商に等しい。 すなわち、
数列の商の極限
が成り立つ。 ただし、$\beta \neq 0$ とする。

証明
  $\beta \neq 0$ に対して、
とすると、 極限の定義より 任意の正の $\epsilon_{b}$ に対して、 ある整数 $N_{b}$ が存在し、、 $n > N_{b}$ であるならば、
$$ \tag{1} $$ が成り立つ。 また補題2より、すべての $n$ に対して
$$ \tag{2} $$ を満たす $L$ が存在する。
  これらを踏まえて初めに
を証明する。 $n >N_{b}$ を満たす $n$ には、 $(1)$ と $(2)$ より、
$$ \tag{3} $$ が成り立つ。 $\epsilon_{b}$ は任意の正の数であるので、
$$ \tag{4} $$ の場合でも $(3)$ は成り立つ。ここで $\epsilon$ は任意の正の数である。
  ゆえに、 $n>N_{b}$ であるならば、 $(3)$ が成り立ち、 $(4)$ を用いると、 任意の正の数 $\epsilon$ に対して
が成り立つ。よって、
$$ \tag{5} $$ である。
  続いて
を証明する。 $(5)$ において $\frac{1}{b_{n}} = c_{n}$ とすると、
である。 ここで
が成り立つとすると、 数列の積の極限の性質より、
である。 $\frac{1}{b_{n}} = c_{n}$ であったので、
である。