証明
$s \geq 1$ かつ $t \geq 1$ の場合、
ベータ関数の定義に含まれる非積分関数
は、積分範囲 $[0,1]$ で
連続な関数である。
一般に積分範囲で連続な関数は積分可能であるので、
ベータ関数は (発散せずに) 値を持つ
したがって、以下では、
$0 \lt s \lt 1$ または $0 \lt t \lt 1$ の場合のみを考察する。
その際、
$0 \lt m \lt 1$ を満たす実数を $m$ とし、
ベータ関数を定義する積分を、
$0$ から $m$ までの積分と、
$m$ から $1$ までの積分に分けて表す。
すなわち、
と表し、
積分 $I_{1}$ と積分 $I_{2}$ の収束性をそれぞれに分けて証明する。
積分 $I_{1}$ の収束
$0 \lt s \lt 1$ の場合、
$I_{1}$ の非積分関数
は、
$x=0$ で発散するので、
$I_{1}$ は
正確には広義積分によって
と定義される。
この積分が収束することを示す。
積分範囲 $ [r, m] $ において、
関数 $(1-x)^{t-1}$ は連続関数であるため、
最大値を持つ (
連続関数の最大値・最小値の定理)。これを $M_{1}$ とすると、
が成立する。
ここで関数 $f_{1}(x)$ を
と定義した。
$f_{1}(x)$ を $I_{1}$ と同じ積分範囲で積分すると、
であるので、積分の極限が
のように収束する(有限な値になる)。
以上より、
関数 $f_{1}(x)$ は $I_{1}$ と同じ積分範囲において、
を満たし、積分が収束するので、
$x^{s-1} (1-x)^{t-1} $ の優関数である。
一般に、
優関数を持つ関数の積分は収束するので、
積分 $I_{1}$ は収束する(優関数と積分の収束については
補足を参考)。
$s \geq 1$ かつ
$0 \lt t \lt 1$ の場合には、
積分範囲 $ [0, m] $ において、被積分関数 $x^{s-1} (1-x)^{t-1} $ が
連続なので、
$I_{1}$は積分可能である(有限な値を持つ)。
以上から、$0 \lt s \lt 1$ または $0 \lt t \lt 1$ の場合に
積分 $I_{1}$ は 収束する。
積分 $I_{2}$ の収束
$0 \lt t \lt 1$ の場合、
$I_{2}$ の非積分関数
は、
$x=1$ で発散するので、
積分 $I_{2}$ は広義積分によって、
と定義される。
積分範囲 $ [m, R] $ において、
関数 $x^{s-1}$ は連続関数であるため、
最大値を持つ (
連続関数の最大値・最小値の定理)。これを $M_{2}$ とすると、
が成立する。
ここで、関数 $f_{2}(x)$ を
と定義した。
$f_{2}(x)$ を $I_{2}$ と同じ積分範囲で積分すると、
となる。途中で $y=1-x$ と置いて置換積分を行った。
この積分の極限は
のように収束する (有限な値を持つ)。
以上より、
関数 $f_{2}(x)$ は
$I_{2}$ と同じ積分範囲において、
を満たし、積分が収束するので、
$x^{s-1} (1-x)^{t-1} $ の優関数である。
一般に、
優関数を持つ関数の積分は収束するので、
積分 $I_{2}$ は収束する(優関数と積分の収束については
補足を参考)。
$t \leq 1$ かつ $0 \lt s \lt 1$ の場合には、
積分範囲 $ [m, 1] $ において、被積分関数 $x^{s-1} (1-x)^{t-1} $ が連続なので、積分 $I_{2}$ は収束する。
以上から、$0 \lt s \lt 1$ または $0 \lt t \lt 1$ の場合、
積分 $I_{2}$ は収束する。
まとめ
以上より、積分 $I_{1}$ と $I_{2}$はそれぞれ任意の $s,t >0$ に対して収束する。
よって、ベータ関数 $B(s,t)$ は収束する
補足:優関数定理
区間 $(a, b \hspace{0.5mm}]$ で連続な関数 $h(x)$ と $k(x)$ が、
次の二つの性質
$(1)$ $0\leq h(x) \leq k(x)$
$(2)$
が収束する。
を満たすとき、
$k(x)$ を $h(x)$ の
優関数という。
このとき、積分
は収束する。
これを
優関数定理と呼ぶ。
上の議論では、
この定理を $a=0$, $b=m$, $h(x)=x^{s-1} (1-x)^{t-1}$, $k(x)=f_{1}(x)$ の場合に対して適用し、
積分 $I_{1}$ の収束性を証明した。
$I_{2}$ についても同様である。
によって
\begin{eqnarray}
B (s,t) = \frac{ \Gamma(s) \Gamma(t) }{\Gamma(s+t)}
\end{eqnarray}
と表される。