関数列の一様収束
一様収束
区間
$I$
を定義域とする関数列
$$
\tag{1.1}
$$
が
$n$ を大きくするときに
ある関数 $f$
に近づいてゆくような状況を考える。
関数列
$(1.1)$
が
区間 $I$ 内のある一点
$x_{1}$
において関数
$f$ に
(一点)
収束するとは、
任意の正の数
$\epsilon$
に対して、
自然数 $N_{1}$ が存在し、
$N_{1}$ よりも大きな全ての自然数 $n$ に対して、
$$
\tag{1.2}
$$
が成り立つことである。
同じように、
区間
$I$
の別の点 $x_{2}$ で関数列
$(1.1)$
が $f$ に
(一点)
収束するとは、
任意の正の数
$\epsilon$
に対して、
自然数 $N_{2}$ が存在し、
$N_{2}$ よりも大きな全ての自然数 $n$ に対して、
$$
\tag{1.3}
$$
が成り立つことである。
$(1.2)$ が成り立つために必要な自然数
$N_{1}$
は、
$(1.3)$ が成り立つために必要な自然数
$N_{2}$
と一般的には異なる。
同じように、一点収束するために必要な自然数は、
区間
$I$
の各点ごとに異なる。
これに対し、
もしも区間
$I$
の全ての点に対して共通の $N$ が存在し、
$N$ よりも大きな全ての自然数 $n$ に対して、
が成り立つならば、
関数列
$(1.1)$
は区間
$I$
で $f$ に
一様収束するという。
具体例
関数列
と関数
に対して、
$(1)$
区間 $[0, c]$ $(c \lt 1)$ で $f_{n}$ が $f$
に
一様収束する。
$(2)$
区間 $I$ では、$f_{n}$ が $f$
に一様収束しないことを示す。
解答例
$(1)$
区間 $[0, c]$ $(c \lt 1)$
の任意の $x$ に対して、
が成り立ち、
また、
$c \lt 1$ であるので、
任意の正の数 $\epsilon$
に対して、
を満たす自然数 $N$ が存在する。
したがって、
を満たす $N$ が存在するので、
関数列 $f_{n}$
は区間
$[0, c]$
で
関数 $f$
に
一様収束する。
$(2)$
はじめに
であるので、
$x=1$
のとき、
任意の正の数 $\epsilon$ に対して、
自然数 $N$ が存在し、
$N$ よりも大きな全ての
$n$
に対して、
が成り立つ
($x=1$ では一様収束しないとはいえない)。
続いて
$x=1$ を除いた
区間
$$
\tag{2.1}
$$
を考える。
この範囲では、
であるので、
任意の正の数
$\epsilon$ に対して、
$N$ よりも大きな全ての $n$
に対して、
$$
\tag{2.2}
$$
が成り立つためには
($f_{n}$ が $f$ に一様収束するためには)、
$N$ よりも大きな全ての $n$
に対して、
$$
\tag{2.3}
$$
が成り立つよう十分に
$N$ が大きい必要がある。
ところが、
$(2.1)$
と
対数関数の性質によって、
$$
\tag{2.4}
$$
とすると分かるように、
ある $x$ に対して
$(2.4)$ を成り立たせる十分に大きな
$N$ であったとしても、
すなわち、
\begin{eqnarray}
n \gt N
\hspace{1mm}
& \Rightarrow &
\hspace{1mm}
n \gt \frac{\log \epsilon}{ \log x}
\end{eqnarray}
$$
\tag{2.5}
$$
が成り立ったとしても、
その $x$ よりも $1$ に近い別の $x$ に対しては
($\log x$ が $0$ に近づくから)、
その $N$ では
$(2.5)$ が (すなわち
$(2.2)$ が)
成り立たなくなる。
これは
区間 $(2.1)$ 内の全ての $x$ に渡って、
を成り立たせる共通の $N$ が存在しないことを意味する。
言い換えると、
区間 $(2.1)$
で
関数列
$f_{n}$ は
関数
$f$ に一様収束しない。
一様収束: $\sup$ による表現
以下の同値関係が成り立つ。
$$
\tag{3.1}
$$
証明
($(3.1)$ の $\Longrightarrow$ の証明)
区間 $I$
で
$f_{n}$
が
$f$ に
一様収束するならば、
任意の正の数 $\epsilon$ に対し、
ある自然数 $N$ が存在し、
全ての $x \in I$ に対して、
$N \lt n$ ならば、
が成り立つ。これが全ての
$x \in I$ に対して成り立つことから、
$N \lt n$ ならば、
$$
\tag{3.2}
$$
が成り立つ
(
$\sup$ の定義を参考) 。
任意の正の数 $\epsilon$ に対して、
$(3.2)$ を満たす自然数 $N$ が存在することが示されたので、
である。
($(3.1)$ の $\Longleftarrow$ の証明)
が成り立つとする。
これと全ての $x \in I$ に対して、
が成り立つ
(
$\sup$ の定義を参考)
ことから、
が成り立つ。
これを $\epsilon$ 論法で表すと、
任意の正の数
$\epsilon$
に対して、
ある自然数 $N$ が存在し、
$N \lt n$ であるならば、
全ての $x \in I$ に対して、
が成り立つことを表している。
よって、
$f_{n}$ が区間 $I$ で $f$ に
一様収束する。
\begin{eqnarray}
\big|f_{n}(x) - f(x) \big| \lt \epsilon
\end{eqnarray}
一様収束 ⇒ 各点収束
関数列
$$
\tag{4.1}
$$
が区間 $I$ 上で関数 $f$ に
一様収束するならば、
$I$ の上の各点で収束する。すなわち、
が成り立つ。
解説
区間
$I$
で
$f_{n}$
が
$f$ に
一様収束するので、
任意の正の $\epsilon$ に対して、
区間
$I$
の全ての点で共通の
$N$ が存在し、
$N$ よりも大きな全ての自然数 $n$ に対して、
が成り立つ。
したがって、この $N$ を用いると、
$I$ の各点において
$$
\tag{4.2}
$$
を成り立つ。
言い換えると、
$I$ の各点で
$(4.2)$ を成り立たせる自然数 $N$ が存在する。
よって、
である。