部分空間とは?
部分空間の定義
実ベクトル空間に対して定義する。
$\mathcal{R}$ を実数全体、
$V$ を実ベクトル空間とする。
$V$ の空でない部分集合 $W$ が
を満たすとき、
$W$ を $V$ の
部分空間と呼ぶ。
例1: 平面
$V$ を3次元ベクトル空間とする。このとき、
集合
は $V$ の部分空間を成すことを証明する。
($V$ の部分空間ではない例は
こちら)
証明
$W$ の任意の元の二つを
とする。$\mathbf{r}_{1}\in W$, $\mathbf{r}_{2}\in W$
であるので、
が成り立つ。
このとき、
に対して、
が成り立つ。したがって、
である。
また、
に対して、
が成り立つ。したがって、
以上から、
$W$ は $V$ の
部分空間を成す。
補足
$W$
は
原点を通る
平面である。一般に原点を通る平面は
$V$ の部分空間を成す。
例2: 対角行列
$n \times n$ 行列の全体を $M_{n}$ とする。
$M_{n}$ は
ベクトル空間を成す。
対角行列全体の集合
$D_{n}$
が
$M_{n}$
の部分空間を成すことを証明する。
証明
任意の $n \times n$ の対角行列を
とする。
このとき、
であるので、
である。また、
であるので、
である。
よって、
$D_{n}$ は $M_{n}$ の
部分空間を成す。
例3: 平面 (部分空間でない)
$V$ を3次元ベクトル空間とする。このとき、
集合
は $V$ の部分空間でないことを証明する。
($V$ の部分空間である例は
こちら)
証明
$W$ の任意の元の二つを
とする。$\mathbf{r}_{1}\in W$, $\mathbf{r}_{2}\in W$
であるので、
が成り立つ。
このとき、
に対して、
が成り立つ。したがって、
であるので、
$W$ は $V$ の
部分空間ではない。
補足
$W$
は
原点を通らない平面であり、
$V$ の部分空間でない。
$W_{1} \cap W_{2}$ は部分空間
$W_{1}$ と $W_{2}$ を
ベクトル空間 $V$ の
部分空間とする。
このとき、
$W_{1} \cap W_{2}$ もまた $V$ の部分空間である。
証明
$a,b$ を任意の
$W_{1} \cap W_{2}$
の元とすると、
$a,b \in W_{1}$ であるから、
である。また、
$a,b \in W_{2}$ であるから、
である。
ゆえに、
であるので、
$W_{1} \cap W_{2}$ は $V$ の部分空間を成す。