代数学の基本定理
複素係数 $a_{i}$ $(i=0,1,\cdots,n)$ に対する $n$ 次方程式
最終更新 2019 年 1 月 13日
代数学の基本定理の証明
$a_{n} = 1$ とする (後で $a_{n} \neq 1$ の場合を取り上げる。)。すなわち



これより $|x|$ を十分に大きくすることによって、 定数 $a_{0} = |f(0)|$ よりも $|f(x)|$ を大きくすることが可能である。 よって、

ここで $R<|x|$ とは、複素平面において原点を中心とする半径 $R$ の円の外側の領域である。一方で、 $|x| \geq R$ とは、同じ円の内側の閉領域を指す。この閉領域において $|f(x)|$ は連続であるので、 $|f(x)|$ は閉領域のどこかに最小値を持つ (連続関数の最大値・最小値の定理)。
そこで $|f(x)|$ が閉領域内の $x=\alpha$ において最小になるとする。 すなわち、

このとき $x=0$ は、$|x| \leq R$ の領域にあるので、

$(2)(3)$ により $|f(\alpha)|$ は、$R<|x|$ の領域内のどんな $|f(x)|$ よりも小さい。 一方で $|f(\alpha)|$ は、残りの $R\geq|x|$ の領域の最小値であるから、 $|f(\alpha)|$ は複素数全体に渡る $|f(x)|$ の最小値である。すなわち、

以下では、 $f(\alpha) \neq 0$ と仮定し、矛盾が現れることを示すことによって、 $|f(\alpha)|$ が 0 であることを証明する。
はじめに関数 $g(x)$ を

このとき $|g(x)|$ は $|f(x)|$ を複素数面内で並進させただけの関数であるので、 $|f(x)|$ と同じ最小値を持つ。すなわち、

また、上の定義より、 $ |g(0)| =|f(\alpha)| $ であるので、$|g(x)|$ の最小値は $|g(0)|$ である。すなわち

$g(x)$ は複素係数 $b_{i}$ $(i=0,1,\cdots,n)$ によって

このとき、$g(0) = b_{0}$ であるので、


$(4)$ のように $g(x)$ を表したときに、係数 $b_{1},b_{2},\cdots$ のうち、$0$ にならない最低次の次数を $m$ とする。すなわち、

このとき $|g(x)|$ は

$|b_{0}| \neq 0$ であるので、$|g(x)|$ は

これより三角不等式によって、

ここで


右辺の $ | x^{m+1}| + \cdots + |x^{n}| $ の部分を等比数列の和の公式によって整理すると、


ここで $b_{m}/b_{0} = r \hspace{1mm}e^{i \theta}$ と表すと、この不等式は



このとき、


$0<\rho<1$ であるので $1-\rho^{n-m} <1$ である。よって、

右辺を整理すると、

ここで


このような $\rho$ に対して

しかし、これは $| b_0 |$ が $|g(x)|$ の最小値であることに矛盾する。ゆえに

したがって、関数 $f(x)$ には、

$a_{n} \neq 1$ の場合には、

以上より、複素係数を持つ任意の $n$ 次方程式

$n$ 個の解を持つこと
$f(x) = a_{n} x^{n} + a_{n-1}x^{n-1} + \cdots + a_{0} $ と置くと、上の議論より、
よって、 因数定理により、 $f(x)$ は $x-\alpha_{0}$ で割り切れる。 すなわち、
$$ f(x) = (x - \alpha_{0}) q_{1}(x) $$
と表せる。 ここで $q_{1}(x)$ は $n-1$ 次式である。
$q_{1}(x)$ も多項式であるので、 同じように $q_{1}(\alpha_{1})=0$ を満たす $\alpha_{1}$ が存在する。 よって、 再び因数定理によって
$$ q_{1}(x) = (x - \alpha_{1}) q_{2}(x) $$
と表せる。ここで $q_{2}(x)$ は $n-2$ 次式である。
これらより、 $$ f(x) = (x - \alpha_{0}) (x - \alpha_{1}) q_{2}(x) $$ と表せる。
この操作を繰り返すと、$f(x)$ が
$$ f(x) = (x - \alpha_{0}) (x - \alpha_{1}) \cdots (x - \alpha_{n-1}) $$
と表される。
ゆえに $f(x)$ には $n$ 個の解がある。