代数学の基本定理

  複素係数 $a_{i}$ $(i=0,1,\cdots,n)$ に対する $n$ 次方程式

代数学の基本定理00

には、複素数の範囲に少なくとも一つの解がある。ここで $a_{n} \neq 1$ である。 これを代数学の基本定理 (fundamental theorem of algebra) という。

最終更新 2016 年 5 月 12日


  代数学の基本定理の証明

  $a_{n} = 1$ とする (後で $a_{n} \neq 1$ の場合を取り上げる。)。すなわち

代数学の基本定理01

とする。

代数学の基本定理02

と置くと、$x\neq 0$ の場合、$|f(x)|$ は

代数学の基本定理03

と表せる。ゆえに

代数学の基本定理04

が成立する。
  これより $|x|$ を十分に大きくすることによって、 定数 $a_{0} = |f(0)|$ よりも $|f(x)|$ を大きくすることが可能である。 よって、

代数学の基本定理05

を満たす $R >0$ が存在する。
  ここで $R<|x|$ とは、複素平面において原点を中心とする半径 $R$ の円の外側の領域である。一方で、 $|x| \geq R$ とは、同じ円の内側の閉領域を指す。この閉領域において $|f(x)|$ は連続であるので、 $|f(x)|$ は閉領域のどこかに最小値を持つ。
  そこで $|f(x)|$ が閉領域内の $x=\alpha$ において最小になるとする。 すなわち、

代数学の基本定理06

とする。
  このとき $x=0$ は、$|x| \leq R$ の領域にあるので、

代数学の基本定理07

が成立する。
  $(2)(3)$ により $|f(\alpha)|$ は、$R<|x|$ の領域内のどんな $|f(x)|$ よりも小さい。 一方で $|f(\alpha)|$ は、残りの $R\geq|x|$ の領域の最小値であるから、 $|f(\alpha)|$ は複素数全体に渡る $|f(x)|$ の最小値である。すなわち、

代数学の基本定理08

が成立する。
  以下では、 $f(\alpha) \neq 0$ と仮定し、矛盾が現れることを示すことによって、 $|f(\alpha)|$ が 0 であることを証明する。
  はじめに関数 $g(x)$ を

代数学の基本定理09

によって定義する。
  このとき $|g(x)|$ は $|f(x)|$ を複素数面内で並進させただけの関数であるので、 $|f(x)|$ と同じ最小値を持つ。すなわち、

代数学の基本定理10

が成立する。
  また、上の定義より、 $ |g(0)| =|f(\alpha)| $ であるので、$|g(x)|$ の最小値は $|g(0)|$ である。すなわち

代数学の基本定理11

が成立する。
  $g(x)$ は複素係数 $b_{i}$ $(i=0,1,\cdots,n)$ によって

代数学の基本定理12

と表せる。
  このとき、$g(0) = b_{0}$ であるので、

代数学の基本定理13

が成立する。 ここで $|f(\alpha)| \neq 0$ であるという仮定から、

代数学の基本定理14

である。
  $(4)$ のように $g(x)$ を表したときに、係数 $b_{1},b_{2},\cdots$ のうち、$0$ にならない最低次の次数を $m$ とする。すなわち、

代数学の基本定理15

とする。
  このとき $|g(x)|$ は

代数学の基本定理16

と表せる。
  $|b_{0}| \neq 0$ であるので、$|g(x)|$ は

代数学の基本定理17

と表せる。
  これより三角不等式によって、

代数学の基本定理18

が成立する。
  ここで

代数学の基本定理19

のうちの最大値を $M$ とすると、上の不等式から

代数学の基本定理20

が成立する。
  右辺の $ | x^{m+1}| + \cdots + |x^{n}| $ の部分を等比数列の和の公式によって整理すると、

代数学の基本定理21

と表せるので、

代数学の基本定理22

を得る。
  ここで $b_{m}/b_{0} = r \hspace{1mm}e^{i \theta}$ と表すと、この不等式は

代数学の基本定理23

と表されるが、任意の複素数 $x$ に対して成立するので、

代数学の基本定理24

の場合にも成立する。ここで $\rho$ は

代数学の基本定理25

を満たすとする($r$ がどんな値であっても上の二つの不等式を満たす $\rho$ は存在する)。
  このとき、

代数学の基本定理26

が成立するので、

代数学の基本定理27
を得る。
  $0<\rho<1$ であるので $1-\rho^{n-m} <1$ である。よって、

代数学の基本定理28
が成立する。
  右辺を整理すると、

代数学の基本定理29
と表せる。
  ここで
代数学の基本定理30

であることから、 $ \rho^{m} \left(r - \frac{M\rho}{1-\rho} \right) $ は $\rho$ を 0 に近づけることによって、いくらでも 0 に近い値をとることができる。 すなわち

代数学の基本定理31
が満たす $\rho$ が存在する。
  このような $\rho$ に対して

代数学の基本定理32

が成立する。
  しかし、これは $| b_0 |$ が $|g(x)|$ の最小値であることに矛盾する。ゆえに

代数学の基本定理33

である。すなわち、$|f(x)|$ の最小値は 0 である。
  したがって、関数 $f(x)$ には、

代数学の基本定理34

を満たす複素数 $\alpha$ が存在する。 言い換えると、 方程式 $f(x) = 0$ は、少なくとも一つの解 $\alpha$ を持つ。
  $a_{n} \neq 1$ の場合には、

代数学の基本定理35

が成立するので、$a_{n}=1$ の場合の上の議論がそのまま適用できる。
  以上より、複素係数を持つ任意の $n$ 次方程式

代数学の基本定理36

には、 少なくとも一つの解が複素数の範囲に存在する。


  $n$ 個の解を持つこと

  $f(x) = a_{n} x^{n} + a_{n-1}x^{n-1} + \cdots + a_{0} $ と置くと、上の議論より、

代数学の基本定理37

を満たす複数数 $\alpha_{0}$ が存在する。
  よって、 因数定理により、 $f(x)$ は $x-\alpha_{0}$ で割り切れる。 すなわち、

$$ f(x) = (x - \alpha_{0}) q_{1}(x) $$
と表せる。 ここで $q_{1}(x)$ は $n-1$ 次式である。
  $q_{1}(x)$ も多項式であるので、 同じように $q_{1}(\alpha_{1})=0$ を満たす $\alpha_{1}$ が存在する。 よって、 再び因数定理によって

$$ q_{1}(x) = (x - \alpha_{1}) q_{2}(x) $$
と表せる。ここで $q_{2}(x)$ は $n-2$ 次式である。
  これらより、 $$ f(x) = (x - \alpha_{0}) (x - \alpha_{1}) q_{2}(x) $$ と表せる。
  この操作を繰り返すと、$f(x)$ が

$$ f(x) = (x - \alpha_{0}) (x - \alpha_{1}) \cdots (x - \alpha_{n-1}) $$
と表される。
  ゆえに $f(x)$ には $n$ 個の解がある。







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