定積分・積分可能とは?
本ページでは、定積分・積分可能・不定積分とは何か?
について、分かり易く丁寧に解説しています。
また、そこから導かれる基本的な定理や性質が証明されています。
分割
閉区間
$[a ,b]$ 内の点 $x_{i}$
$(i=0,1,\cdots,n)$
が小さい順に
と並んでいるとする。
これらを用いると、
$[a ,b]$
を
$n$ 個の小さな閉区間
$[x_{i-1},\hspace{0.5mm} x_{i}]$
に分けられる。
これを閉区間
$[a ,b]$
の $n$
分割
(partition) といい、
のように $\Delta$ を用いて表される。
また、各 $x_{i}$ を分割 $\Delta$ の
分点という。
分割によって生じた各区間
$[x_{i-1},\hspace{0.5mm} x_{i}]$
を小区間または部分区間
(sub-interval)
という。
各小区間の中で最も大きな小区間を $| \Delta |$ と表す。
すなわち、
と表し、
分割の幅または分割の大きさ(ノルム)などと呼ばれる。
上限和・下限和
$f(x)$
を
閉区間
$[a, b]$
上の関数とする。
$[a, b]$
の
$n$ 分割
の各小区間
$[x_{i-1}, x_{i}]$
上での $f$ の上限を $M_{i}$ とする。
すなわち、
とする。 $[x_{i-1}, x_{i}]$
上での $f$ の下限 $m_{i}$ とする。すなわち、
とする。
各区間の幅 $x_{i} - x_{i-1}$ に上限 $M_{i}$ をかけ合わせた総和
を
上限和 (upper Darboux sum) という。
同様に
$x_{i} - x_{i-1}$ に下限 $m_{i}$ をかけ合わせた総和
を
下限和 (lower Darboux sum)
という。
分割 $\Delta$ に対する上限和は、
同じ分割
$\Delta$
に対する下限和以上である。
すなわち、
$$
\tag{2.1}
$$
が成り立つ。
細分
閉区間
$[a, b]$
の
分割
にさらに分点を追加して得られる分割を分割
$\Delta$
の
細分
(subdivision)
という。
$\Delta'$
を
$\Delta$
の細分とする。
このとき、
$\Delta$
の
上限和は
$\Delta'$
の上限和以上である。
すなわち、
$$
\tag{3.1}
$$
が成り立つ
(下図参、細かく刻む方が小さくなる)。
また、
$\Delta$
の
下限和は
$\Delta'$
の下限和以下である。
すなわち、
$$
\tag{3.2}
$$
が成り立つ
(下図参、細かく刻む方が大きくなる)。
下限和 ≦ 上限和
任意の
分割
$\Delta$
に対する連続関数 $f$ の
下限和は、
任意の分割 $\Delta'$ に対する
上限和以下である。
すなわち、
$$
\tag{4.1}
$$
が成り立つ。
(どんな分割を選ぼうと、下限和よりも上限和の方が大きい)
証明
分割 $\Delta$
の
分点と分割 $\Delta'$ の分点の
和集合を分点とする分割を
$ \Delta \cup \Delta' $
と表す (下図参考)。
分割
$ \Delta \cup \Delta' $
は分割 $\Delta$ の
細分である。
したがって、
$(3.2)$
より
が成り立つ。
また、
分割
$ \Delta \cup \Delta' $
は分割 $\Delta'$ の
細分でもある。
したがって、
$(3.1)$
より
が成り立つ。
また、
$(2.1)$
より、
分割
$\Delta \cup \Delta' $ の下限は同じ分割の上限以下である。
すなわち、
が成り立つ。
以上から、
を得る。
上限和の下限・下限和の上限
$(3.1)$ から分かるように、
細分すればするほど、
上限和は小さな値になりうる。
しかし
$(4.1)$
より、下に有界であるので、
どこまでも小さな値になるわけではなく下限が存在する
(「
上限・下限の存在」を参考)。
そこで、すべての分割
$\Delta$ に対する
$S(f,\Delta)$
の下限を
$S(f)$
と定義する。
すなわち、
と定義する。
同様に、
$(3.2)$ から分かるように、
細分すればするほど、
下限和は大きな値になりうる。
しかし
$(4.1)$
より、上に有界であるので、
どこまでも大きな値になるわけではなく上限が存在する
(「
上限・下限の存在」を参考)。
そこで、
すべての分割
$\Delta$ に対する
$s(f,\Delta)$
の上限を
$s(f)$
と定義する。
すなわち、
と定義する。
このとき、
$$
\tag{5.1}
$$
が成り立つ。
証明
と仮定して矛盾を導く。
$s(f)$
は
上限であるので、
$s(f)$
と
$S(f)$
の差がどんなに小さくても、
$s(f)$ と $S(f)$ の間の値をとる $s$ が存在する。
すなわち、
を満たす分割 $\Delta$ が存在する。
$S(f)$
は
下限であるので、
$S(f)$
と
$s(f, \Delta)$
の差がどんなに小さくても、
$S(f)$ と $s(f, \Delta)$ の間の値をとる $S$ が存在する。
すなわち、
を満たす分割 $\Delta'$ が存在する。
この結果は $(4.1)$ と矛盾する。
よって、
が成り立つ。
積分可能と定積分
閉区間 $[a,b]$ 上の関数 $f$ の
上限和の下限
$S(f)$
と
下限和の上限
$s(f)$
の差がどんな正の値よりも小さな正の値であるとき、
すなわち、任意の正の数 $\epsilon$ に対して
が成り立つとき、
と表し、
$f$ が閉区間 $[a,b]$
で
積分可能であるという。
また、$\int_{b}^{a} f(x) \mathrm{d}x$ の値を
区間
$[a,b]$ における
$f$ の
定積分という。
閉区間上の連続関数 ⇒ 積分可能
関数
$f(x)$
が閉区間
$[a,b]$
で
連続であるならば、
その区間で積分可能である。
証明
$f$ は閉区間上で連続であるので、
一様連続である
(「
閉区間で連続 ⇒ 一様連続」を参考)。
よって、任意の正の数 $\epsilon$ に対して正の数 $\delta$ が存在し、
区間 $[a,b]$ 内であればどんな二点 $x,x'$ であっても、
$$
\tag{7.1}
$$
が成り立つ。
分割
$\Delta$
を
とすると、
上限和は
である。ここで $M_{i}$ は各小区間
$[x_{i-1}, x_{i}]$
上の $f$ の上限であるが、
$f$ が連続関数であるから、
$f$ は各小区間内に最大値を持ち
(
「最大値最小値の定理」を参考)、
上限 $M_{i}$ がその最大値である。
最大値 $M_{i}$ を与える点を $x_{M_{i}}$ とする。すなわち、
とする。
下限和は
であるが、
$m_{i}$ は各小区間
$[x_{i-1}, x_{i}]$
上の下限であり、
$f$ が連続関数であるから、
$f$ は各小区間内に最小値を持ち
(
「最大値最小値の定理」を参考)、
下限 $m_{i}$ がその最小値である。
最小値 $m_{i}$ を与える点を $x_{m_{i}}$ とする。
すなわち、
とする。
以上から、
と表せる。
分割の幅が
$|\Delta| \lt \delta$
である場合、
を満たすので、
$(7.1)$ から
が成り立つ。
これと
三角不等式から
$$
\tag{7.2}
$$
が成り立つ。
さて、
$S(f)$
を
上限和の下限とすると、
が成り立ち、
$s(f)$
を
下限和の上限とすると、
が成り立つ。
また、
上限和の下限 ≧ 下限和の上限の関係があるので、
すなわち、
であるので、
が成り立つ。
以上から
が成り立つ。
$\epsilon$ は任意の正の数であるから、
$\epsilon (b-a)$ もまた任意の正の数である。
よって、
どんな小さな正の
$\epsilon (b-a)$
に対しても上の不等式が成り立つので、
$f$ は閉区間
$[a,b]$
で積分可能である。
$\int^{a}_{b} = -\int^{b}_{a}$
区間 $[a,b]$ における
定積分
に対して、$a$ と $b$ を入れ替えた
は、次のように
定義される。
(定義であって導かれるものではない)
$\int^{b}_{a} = \int^{c}_{a} + \int^{b}_{c}$
$f$ を区間 $I$ で
積分可能な関数とする。
このとき $a,b,c \in I$
であるならば、
区間
$[a,b]$
における定積分は、
区間
$[a,c]$
における定積分と
区間
$[c,b]$
における定積分の和に等しい。
すなわち、
が成り立つ。
証明
●
区間
$[a,b]$
内に点を $c$ がある場合
$ (a \lt c \lt b)$
区間
$[a,b]$
の
分割のうち、
分点 $c$ を含む分割を
$\Delta_{c}$
と表す。すなわち、
と表す。
$\Delta_{c}$ による $f$ の
下限和
$$
\tag{9.2}
$$
の
$\Delta_{c}$ 全体に渡る上限を
とし、
区間 $[a,b]$ の全ての分割に渡る上限を
と表すと、
$\Delta_{c}$
全体は、
区間 $[a,b]$ の分割の全体の一部であるため、
$$
\tag{9.3}
$$
が成り立つ。
$\Delta_{c}$ の
$k$ 番目の分点が
$c$
であるとし
($x_{k} = c$)、
$(9.2)$
の下限和のうち、
点 $a$ から
点 $c$ までの下限和を
と表し、
点 $c$ から点 $b$ までの下限和を
と表す。
ここで、
$\Delta_{ac}$
と
$\Delta_{cb}$
はそれぞれ区間
$[a,c]$
と
区間
$[c,b]$
の分割である (下の図を参考)。
加えて、
右辺のそれぞれの
下限和の上限を
と定義する。
ここで、
と仮定すると、
右辺 $ s_{ac}(f) + s_{cb}(f) $ が
分割 $\Delta_{c}$ に対する下限和であるので、
左辺
$s_{c}(f)$ が
$\Delta_{c}$ に対する下限和の上限であることに矛盾する。
よって、
$$
\tag{9.4}
$$
が成り立つ。
ところで、
$s(f)$ と
$s_{ac}(f)$
と
$s_{cb}(f) $
はそれぞれ区間 $[a, b]$ と区間 $[a,c]$ と区間 $[c,b]$
における
定積分である。すなわち、
である。
以上 $(9.3)$ $(9.4)$ より、
$$
\tag{9.5}
$$
が成り立つ。
下限和の上限を上限和の下限に入れ替えて同様の議論を展開する。
$\Delta_{c}$ による $f$ の
上限和
$$
\tag{9.6}
$$
の
$\Delta_{c}$ 全体に渡る下限を
とし、
区間 $[a,b]$ の全ての分割に渡る下限を
と表すと、
$\Delta_{c}$ 全体は、 区間 $[a,b]$ の分割の全体の一部であるため、
$$
\tag{9.7}
$$
が成り立つ。
$(9.6)$
の上限和のうち、
点 $a$ から
点 $c$ までの上限和を
と表し、
点 $c$ から点 $b$ までの上限和を
と表す。
加えて、
右辺のそれぞれの上限和の
下限を
と定義する。
ここで、
と仮定すると、
右辺 $ S_{ac}(f) + S_{cb}(f) $ が分割 $\Delta_{c}$ に対する上限和であるので、
左辺
$S_{c}(f)$ が
$\Delta_{c}$ に対する上限和の下限であることに矛盾する。
よって、
$$
\tag{9.8}
$$
が成り立つ。
ところで、
$S(f)$ と
$S_{ac}(f)$
と $S_{cb}(f) $
はそれぞれ区間 $[a, b]$ と区間 $[a,c]$ と区間 $[c,b]$
における
定積分である。すなわち、
である。
以上 $(9.7)$ $(9.9)$ より、
$$
\tag{9.9}
$$
が成り立つ。
$(9.5)$
と
$(9.8)$
から
を得る。
●
区間
$b \lt c$
の場合
$ (a \lt b \lt c)$
$ a \lt b \lt c$ であるので、
と表せる。また
$\int_{c}^{b} = - \int_{b}^{c}$
であるので、
●
区間
$c \lt a$
の場合
$ (c \lt a \lt b )$
$ c \lt a \lt b$ であるので、
と表せる。また
$\int_{c}^{a} = - \int_{a}^{c} $
であるので、
$\int^{a}_{a} = 0$
$f$ を区間 $I$
で
連続な関数とすると、
区間 $I$ の
閉区間で積分可能である。
このとき、
区間の幅が $0$ の
定積分の値は $0$ である。
すなわち、
が成り立つ。
証明
定積分が閉区間の
上限和または
下限和から定義されるので区間の幅が
$0$ の定積分の値が $0$ であることは明らかである。一方、
以下のように示すこともできる。
$h \gt 0$ とすると、
が成り立つ。
$f(x)$ は閉区間で $[a,a+h]$ で連続であるので、
この区間内に最大値と最小値が存在する
(「
最大値・最小値の定理 」を参考)。
それぞれを
と表す。
$\Delta$ を区間 $[x,x+h]$
の
分割、
$a_{i}$ $(i=1,2,\cdots)$
を分割
$\Delta$
の
分点、
$M_{i}$ を
小区間 $[a_{i},a_{i-1}]$
の
上限
( $f$ が連続なので上限=最大値)
とすると、小区間の最大値よりも全体の最大値の方が大きいので
が成り立つ。
$S(f,\Delta)$ を $f$ の
上限和、
$S(f)$ を
上限和の下限とすると、
定積分の定義から、
が成り立つ。
同様に最小値 $m$ に対しては、
が成り立つ。
よって、
が成り立つ。
これと
はさみうちの定理から、
である。ゆえに、
である。
不定積分
$F(x)$ を
微分可能な関数とする。
$F(x)$ の微分を $f(x)$ と表すとき、
すなわち、
と表したとき、
$F(x)$ を $f(x)$ の
不定積分といい、
と表す。
具体例
(1)
$x^{2}$
は
$2x$ の不定積分である。実際
が成り立つ。
(2)
$\sin x$
は
$\cos x$ の不定積分である。実際
が成り立つ。
微積分学の基本定理
$f(x)$ を区間 $I$ で
連続な関数とする。
$I$ に含まれる閉区間 $[a, x]$
における
$f(x)$
の
定積分を
$F(x)$
とすると、
すなわち、
とすると、
$F(x)$ は
$f(x)$ の
不定積分である。
すなわち、
$$
\tag{11.1}
$$
が成り立つ。
$f(x)$ の定積分 $F(x)$ が $f(x)$ の不定積分でもあることを表すこの定理は、
微積分学の基本定理
(fundamental theorem of calculus)
と呼ばれる。
証明
$h \gt 0$ とし、$x+h \in I$ とする。
定積分の性質から
$$
\tag{11.2}
$$
である。
$f(x)$ は閉区間で $[x,x+h]$ で連続であるので、
この区間内に最大値と最小値が存在する
(「
最大値・最小値の定理 」を参考)。
それぞれを
$$
\tag{11.3}
$$
と表す。
$\Delta$ を区間 $[x,x+h]$
の
分割、
$x_{i}$ $(i=1,2,\cdots)$
を分割
$\Delta$
の
分点、
$M_{i}$ を
小区間 $[x_{i-1},x_{i}]$
の
上限
( $f$ が連続なので上限=最大値)
とすると、小区間の最大値よりも全体の最大値の方が大きいので
が成り立つ。
$S(f,\Delta)$ を $f$ の
上限和、
$S(f)$ を
上限和の下限とすると、
定積分の定義から、
が成り立つ。
同様に最小値 $m$ に対しては、
$$
\tag{11.4}
$$
が成り立つ。
以上まとめると、
である
(下図)。
$(11.2)(11.4)$
から、
$$
\tag{11.5}
$$
が成り立つ。
$(11.3)$ から分かるように、
であるので、
これらと $(11.5)$
と
はさみうちの定理から
が成り立つ。
よって、
$F(x)$
は
微分可能であり、
その微分が $f(x)$ に等しい。すなわち、
が成り立つ。
和の積分
$f(x)$ と
$g(x)$
を区間 $I$ で
連続な関数とする。
$I$ に含まれる閉区間 $[a, b]$
で
$
f(x) + g(x)
$
は
積分可能であり、
が成り立つ。
定数倍の積分
$f(x)$
を区間 $I$ で
連続な関数とする。
$I$ に含まれる閉区間 $[a, b]$
で
$
k f(x)
$
は
積分可能であり、
が成り立つ。
定積分の不定積分による表現
$f(x)$
を区間 $I$ で
積分可能な関数とする。
$I$ に含まれる閉区間 $[a, b]$ における定積分
\begin{eqnarray}
\int_{a}^{b} f(x) \mathrm{d}x
\end{eqnarray}
は、$f(x)$ の
不定積分 (の一つ) $F(x)$ によって、
と表せる。
$ \small f(x)\leq g(x) \Rightarrow \int f(x)\mathrm{d}x \leq \int g(x)\mathrm{d}x$
$f(x)$ と
$g(x)$
を区間 $I$ で
連続な関数とする。
このとき、
$I$ に含まれる閉区間
$[a, b]$
において、
であるならば、
が成り立つ。
証明
とすると、
区間 $[a,b]$
において、
$$
\tag{15.1}
$$
であり、
$h(x)$ は連続関数であるので、
区間 $[a,b]$ 内に最小値が存在する
(「
最大値・最小値の定理 」を参考)。
これを $m$ とすると、すなわち、
とすると、$(15.1)$ より、
である。
$\Delta$ を区間 $[a,b]$
の
分割、
$x_{i}$ $(i=1,2,\cdots)$
を分割
$\Delta$
の
分点、
$m_{i}$ を
小区間 $[x_{i-1},x_{i}]$
の
下限
( $h$ が連続なので下限=最小値)
とすると、小区間の最小値よりも全体の最小値の方が小さいので
が成り立つ。
$s(h,\Delta)$ を $h$ の
下限和、
$s(h)$ を
下限和の上限とすると、
定積分の定義から、
が成り立つ。よって、
であるが、これと
和の積分と
定数倍の積分の性質から、
と表せるので、
が成り立つ。
$ |\int f(x)\mathrm{d}x| \leq \int |f(x)|\mathrm{d}x$
$f(x)$
を区間 $I$ で
連続な関数とする。
このとき、
$I$ に含まれる閉区間
$[a, b]$
において、
が成り立つ。
解説
$a \lt c \lt b$ を満たす $c$ に対し、
$[a,c]$ では
$f(x)$ が $0$ 以上になるとし、
$[c,b]$ では
$f(x)$ が $0$ 以下になる場合を考える。
このとき、
定積分の基本的性質と
三角不等式から
が成り立つ。
ここで、$\Delta$ を区間 $[a,c]$
の
分割、
$x_{i}$ $(i=1,2,\cdots)$
を分割
$\Delta$
の
分点、
$M_{i}(f) $ を
小区間 $[x_{i-1},x_{i}]$
の $f$
の
上限
( $f$ が連続なので上限=最大値)
とし、
また
$S(f,\Delta)$ を $f$ の
上限和、
$S(f)$ を
上限和の下限とすると、
定積分の定義から、
$$
\tag{17.1}
$$
と表せる。
$f \geq 0$ であるから、$M_{i}(f) \geq 0$ である。よって、
絶対値内部の各項が全て $0$ 以上であるので、
が成り立つ。最後の等号では、区間 $[a,c]$ では
$f(x)\geq 0 $
であることを用いた。
区間
$[c,b]$ では $f(x) \leq 0$ であるので、
最後の等号は、
$(17.1)$ の $f$ を $|f|$ に取り換えて上記と同様の議論を行った結果である。以上から、
$$
\tag{17.2}
$$
が成り立つ。
ここでは、区間
$[a,c]$ で $f(x) \geq 0$ であり、
$[c,b]$ で $f(x) \leq 0$ である単純な場合を考えた。
より複雑に $f(x)$ の正負が入れ替わる場合には、
$f(x)$ が正の区間と $f(x)$ が負の区間に分けて同様の議論を展開すれば
$(17.2)$ が示される。
$ \small \int f(x) = 0, \hspace{1mm} f(x)\geq0 \Rightarrow f(x) =0 $
$f(x)$ を区間 $I$ で連続な関数とする。このとき、
$I$ に含まれる閉区間 $[a,b]$ において、
$$
\tag{18.1}
$$
かつ
$$
\tag{18.2}
$$
であるならば、
である。
証明
$\Delta$ を区間 $[a,b]$
の
分割、
$x_{i}$ $(i=1,2,\cdots)$
を分割
$\Delta$
の
分点、
$M_{i}$ を
小区間 $[x_{i-1},x_{i}]$
の
上限
( $f$ が連続なので上限=最大値)
とする。また、
$S(f,\Delta)$ を $f$ の
上限和、
$S(f)$ を
上限和の下限とすると、
定積分の定義から、
と表される。これと
$(18.1)$
より、
$$
\tag{18.3}
$$
である。
また
$(18.2)$
より、
$M_{i} \geq 0$ であるので、
$(18.3)$
から
である。よって、
$f(x)$ は上限が $0$ であり、かつ $0$ 以上の関数であるから、
である。
$ \small f(x) = 0 \Rightarrow \int f(x) \mathrm{d}x =0 $
以下の関係が成り立つ。
証明
定数倍の積分の性質
において、$k=0$ とすると、
と示される。
$ \small f(x) \geq 0 \Rightarrow \int f(x) \mathrm{d}x \geq 0 $
以下の関係が成り立つ。
有限個の点で不連続な関数 ⇒ 積分可能
区間 $[a,b]$
内の有限個の点で不連続で有界な関数 $f(x)$
は、区間 $[a,b]$ で
積分可能である。
証明
議論を簡単にするため、
区間 $[a,b]$ 内の一点 $c$ でのみ不連続であるとして、
$f(x)$ が区間
$[a,b]$ で
積分可能であることを証明する。はじめに、
$$
\tag{21.1}
$$
を満たす正の数を $\delta$ とする。
区間 $[a, c-\delta]$ で $f(x)$ は連続関数であるから、
上記の
$(7.2)$式で表されているように、
上限和と
下限和の差分が任意の正の数
$\epsilon_{1}$ よりも小さくなる
分割
$\Delta_{1}$ が存在する。すなわち、
$$
\tag{21.2}
$$
を満たす区間 $[a, c-\delta]$
の分割 $\Delta_{1}$ が存在する。
ここで $S$ は
上限和、$s$ は
下限和である。
補足:
$(7.2)$
の右辺は
$\epsilon(b-a)$ となっているが、
$\epsilon$ が任意の正の数であるから
$\epsilon(b-a)$ もまた任意の正の数である。よって、
$\epsilon(b-a)=\bar{\epsilon}$ とすると、
$(7.2)$ は任意の正の数 $\bar{\epsilon}$
に対して成り立つ不等式であり、$(21.2)$ と同様の意味を成す。
同じように、
区間 $[c+\delta, b]$ で $f(x)$ は連続関数であるから、
上限和と下限和の差分が任意の正の数
$ \epsilon_{2}$ よりも小さくなる分割
$\Delta_{2}$ が存在する。
すなわち、
$$
\tag{21.3}
$$
を満たす区間 $[c+\delta, b]$
の分割 $\Delta_{2}$ が存在する。
区間 $[c-\delta, c+\delta] $ を一つの小区間と見なし、
その小区間一つだけからなる
分割 を $\Delta'$ とする。
すなわち、
とする。
$f$ は
有界な関数であるので、
$f$ にはこの小区間に
上限と下限があり、
それぞれを $M$ と $m$ とすると、すなわち、
とすると (下図参考)、
分割 $\Delta'$
の上限和
と下限和
はそれぞれ
であり、上限和と下限和の差は
$$
\tag{21.4}
$$
である。
以上で現れた三つの分割
$\Delta_{1}$ と
$\Delta'$ と
$\Delta_{2}$ を合わせた分割を $\Delta$ とする。
すなわち、
とすると、
分割
$\Delta$
は区間
$[a,b]$ の分割の一つであり、$\Delta$
に対する $f$ の 上限和は、各部分の上限和の和に等しい。すなわち、
$$
\tag{21.5}
$$
である(
上限和の定義を参考)。
同様に下限和については、
$$
\tag{21.6}
$$
である(
上限和の定義を参考)。
以上の
$(21.2)$
~
$(21.6)$
から
$$
\tag{21.7}
$$
を得る。ここで右辺の
$$
\tag{21.8}
$$
に注目すると、
$\epsilon_{1}$ と $\epsilon_{2}$ は任意の正の数である。
また、
$\delta$ は
$(21.1)$ を満たす任意の正の数であるため、
十分に小さくすることにより、
$2(M-m)\delta$ をいくらでも小さい正の数にできる。
よって、
$(21.8)$ は任意の正の数を表し得る。
したがって、
$(21.7)$ は任意の正の数に対して成り立っている。
すなわち、
と置くと、
任意の正の数 $\epsilon$ に対して、
$$
\tag{21.9}
$$
を満たす区間 $[a,b]$ の分割 $\Delta$ が存在する。
ところで、区間 $[a,b]$ の
上限和の下限を $S(f)$ と表すと、
が成り立ち、
下限和の上限を $s(f)$ と表すと、
が成り立つ。これらより、
が成り立つので、
$(21.9)$ から
が成り立つことが分かる。
よって、
$f(x)$ は区間 $[a,b]$ で
積分可能である。
*
不連続な点が複数ある場合には、
以上の議論を応用すれば、
$f$ が積分可能であることが示される。