クラメルの公式 ~証明と具体例~
クラメルの公式と証明
$n$ x $n$ の係数行列 $A$ を持つ連立 $1$ 次方程式
の解は、
である。
ここで、$x_{k}$ は $\mathbf{x}$ の第 $k$ 番目の成分である。
また、$\mathbf{a}_{i}$ は行列 $A$ の $i$ 番目の列ベクトルであり、
$|A|\neq 0$ とする。
この公式は、
クラメルの公式(Cramer's rule)と呼ばれる。
証明を以下に記す。
証明
一般に、
行列式が $0$ の行列は逆行列を持つので、
$|A| \neq 0$
であることから、
$A$ には逆行列 $A^{-1}$ が存在する。
これを
の両辺に掛けると、
となる。
また一般に、
任意の行列とその余因子行列の積は、
単位行列に行列式を掛けたものに等しいことが知られている。
すなわち、
$A$ の余因子行列を $\tilde{A}$ と表すと、
これらの間には、
が成り立つ。
これと
$|A| \neq 0$ であることから、
が成り立つ。
この式は、
行列 $\frac{1}{|A|}\tilde{A}$ が $A$ の
逆行列 であることを表している。
すなわち、
である。
これを $(1)$ に代入すると、
と表される。
この式の 第 $k$ 成分は、
である。
$\tilde{A}_{kl}$ は、
余因子行列の定義より、
である ( 添え字の順序に注意 )。
ここで $M_{lk}$ は、行列 $A$ から $l$ 行 と $k$ 列を取り除いて得られる小行列
であり、$|M_{lk}|$ はその行列式である ( $a_{ij}$ は $A$ の $i$ 行 $j$ 列成分である ) 。
これらより、$(2)$ は、
と表される。
右辺の
$\sum_{l=1}^{n}(-1)^{k+l} b_{l} |M_{lk}| $
の部分は、 行列式
の $k$ 列に関する
余因子展開になっている。
実際に
余因子展開してみると、
である。
これを $(3)$ に代入すると、
を得る。
すなわち、
連立 $1$ 次方程式の解の第 $k$ 成分は、
係数行列 $A$ の $k$ 列を $\mathbf{b}$ で置き換えた行列式を、
$A$ の行列式で割ったものに等しい。
これを
クラメルの公式と呼ぶ。
クラメルの公式を使う具体例
$3$ 変数の連立 $1$ 次方程式
の解を
クラメルの公式を用いて求める。
解答例
行列 $A$ とベクトル $\mathbf{x}$ と $\mathbf{b}$ を
とするとき、
連立 $1$ 次方程式
の解は、
クラメルの公式によると、
である。
これを連立 $1$ 次方程式
に対して適用する。
この場合、
であるから、
$(1)$ より、
解は、
である。
行列式 $|A|$ を、 $1$ 列に関する
余因子展開と
$2$ x $2$ の行列式の計算から求めると、
であるので、
解は
と表される。
これらに含まれる各行列式を同じように求めると、
であることから、
解 $x_{1}$, $x_{2}$, $x_{3}$ は、それぞれ
である。
計算機
計算機
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解が表示されます。