シュワルツの不等式

  任意の実ベクトル $\mathbf{u}$, $\mathbf{v}$ に対して、次の不等式が成立する。

シュワルツの不等式00

これをシュワルツの不等式 (Schwarz inequality) という。
最終更新 2016年 2月13日


  準備   実ベクトルの内積

  実ベクトルの内積は次の性質を満たすものとして定義される。

$(1)$   任意の $\mathbf{u}$, $\mathbf{v}$ に対して、

シュワルツの不等式01

$(2)$   任意の $\mathbf{u}$, $\mathbf{v}$, $\mathbf{z}$ に対して、

シュワルツの不等式02


$(3)$   任意の $\mathbf{u}$, $\mathbf{v}$, 実数 $\alpha$ に対して、

シュワルツの不等式03


$(4)$   任意の $\mathbf{u}$ に対して、

シュワルツの不等式04

が成立する。ここで $\|\mathbf{u} \|^2 = (\mathbf{u}, \mathbf{u})$ である。 等号が成立するのは、$\mathbf{u} = 0$ のときのみ。すなわち、

シュワルツの不等式05

$(1)$ と $(3)$ から、任意の $\mathbf{u}$, $\mathbf{v}$, 実数 $\alpha$ に対して、

シュワルツの不等式06

が成立する。
  これらの性質を用いて、シュワルツの不等式を証明する。

  証明

  $\mathbf{u}$, $\mathbf{v}$ を任意の実ベクトル、$s$ を任意の実数とする。 このとき、$s$ の関数

シュワルツの不等式07

を定義すると、性質 $(4)$ より、

シュワルツの不等式08

を満たす。
  一方 $F(s)$ は $(1)$ $(2)$ $(3)$ により、

シュワルツの不等式09

と表せるので、

シュワルツの不等式10

が成立する。
  上の不等式の左辺は $s$ の 2 次式であるので、不等式が任意の $s$ に対して成立するための必要十分条件は、 左辺の2 次式に対する判別式 $D$ が

シュワルツの不等式11

を満たすことである。すなわち、

シュワルツの不等式12

である。 これより

シュワルツの不等式13

を得る。


  等号成立条件

    シュワルツの不等式の等号が成立するための必要十分条件を求める。
  まず $\mathbf{u} = 0$ または $\mathbf{v} = 0$ の場合は、等号が成立する。そこで、 $\mathbf{u} \neq 0$ かつ $\mathbf{v} \neq 0$ の場合を考える。はじめに等号が成立すると仮定する。すなわち、

シュワルツの不等式14

を仮定する。また、

シュワルツの不等式15

と置く。 このとき、 $(*)$ から

シュワルツの不等式16

が成立する。
  ここで

シュワルツの不等式17

と置くと、$\beta$ は実数であり、内積の性質 $(1)$ $(2)$ $(3)$ $(*)$ から

シュワルツの不等式18

が成立する。 この関係は $(*3)$ から

シュワルツの不等式19

と表される。右辺は、$\beta$ の定義 $(*4)$ と、$\lambda^2=1$ であることから、$0$ である。よって、

シュワルツの不等式20

が成立するので、性質 $(4)$ により

シュワルツの不等式21

を得る。
  $\frac{\beta}{\lambda} $ は実数であるので、 上の式から $\mathbf{v}$ と $\mathbf{u}$ が実数倍の関係で結ばれることが示された。 すなわち、$\frac{\beta}{\lambda} = \xi$ とすると、

シュワルツの不等式22

が成立することが示された。
  逆に、 $\mathbf{v}$ と $\mathbf{u}$ が実数倍の関係で結ばれると仮定する。 すなわち、任意の数 $\xi$ に対して、

シュワルツの不等式23

が成立すると仮定する。
  このとき、

シュワルツの不等式24

であり、一方で、

シュワルツの不等式25

であるので、

シュワルツの不等式26

が成立する。 よって、

シュワルツの不等式27

が成立する。
  以上より、シュワルツの不等式の等号が成立するための必要十分条件は、 $\mathbf{v}$ と $\mathbf{u}$ が実数倍の関係で結ばれることである。すなわち、

シュワルツの不等式28

が成立する。




シュワルツの不等式  複素ベクトルの場合







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