三角関数の基本的性質
三角関数の定義
三角関数を指数関数によって
と定義する。
指数関数が複素数全体で定義される
滑らかな関数であることから、
三角関数もまた複素数全体で定義される滑らかな関数である。
オイラーの公式
三角関数の定義から
が成り立つ。これをオイラーの公式という。
加法定理
三角関数には次の関係が成り立つ。
これらを
加法定理という。
ピタゴラスの公式
三角関数には
が成り立つ。
ここで $\cos^2 z = (\cos z)^2$, $\sin^2 z = (\sin z)^2$ としている。
$\cos$ は偶関数、$\sin$ は奇関数
三角関数のうち $\cos$ は
偶関数であり、
$\sin$ は
奇関数である。
すなわち、
が成り立つ。
微分と微分方程式
三角関数の微分は、
である。また三角関数は微分方程式
の解である。
証明
三角関数の定義と指数関数の性質から、
が成り立つ。これより、
の解である。
級数による表現
三角関数は
と級数によって表される。
証明
指数関数が級数によって
と定義されることから、
三角関数の定義によって、
である。
弧の長さと $\pi$
$x$ が実数のとき、
$\sin x$ の $x$ は半径 $1$ の
円弧の長さである。
このことから、$\pi$ を定義すると、
を得る。また、$0 \leq x \leq \frac{\pi}{2}$ の区間で
が成り立つ。
解説
三角関数が
級数によって、
と表されるので、
$x$ が実数のとき、
三角関数は実関数である。
ここで
とおくと、
ピタゴラスの公式から
$$
\tag{1}
$$
であるから、
$(u,v)$ は半径 $1$ の円上の点である。
そこで、
上図の円弧の長さを $\theta(u)$ と表すと、
この付近では、
であるので、
$$
\tag{2}
$$
である。
$\theta(u)$ は 区間 $[0, 1)$ で $u$ に関する単調増加関数であるので、
この範囲にある限り逆関数 $u(\theta)$ が存在する。以下では
この関数が $\sin \theta$ であることを示す。
$\theta(u)$ の定義 $(2)$ から
であるので、
$u(\theta)$ の 微分は
である。
また、
二階の微分は、
である。
これらより、
を得る。
$\theta$ の定義 $(2)$ より
$
\theta (0) = 0
$
であるので、
である。これと $(1)$ より、
である。これらから、
である。
これを用いると、
$u$ の
$\theta=0$ における
テーラー展開が
であることが分かる。
右辺は
$\sin \theta$ の級数表示そのものであるので、
である。
したがって、
$\sin \theta$ の $\theta$ は半径 $1$ の弧の長さであることが分かった。
また同様に、
であることも示される。
$\theta$ が弧の長さであることが分かったので、
によって $\pi$ を定義する。
これより、
である。すなわち、
また、
である。
定義より
$\sin \theta $ は連続関数であり、
逆関数 $\theta(u)$ が区間 $[0, 1)$ で単調増加関数であることから、
$\sin \theta$ は
$0 \leq u(\theta) \lt 1$ である限り単調増加する関数である。
また
加法定理から
であること示され (
三角関数の代表的な値を参考)、
でもある (
$0$ のときの三角関数を参考)。
以上から、次の増減表を得る。
これより、
である。
また
定義から
$\cos \theta $ も連続関数であり、
微分が
であることから、
$0 \lt \theta \leq \frac{\pi}{2} $
で
$
\cos' \theta \lt 0
$
であるため、
この区間で単調減少関数である。
また
加法定理から
であること示され (
三角関数の代表的な値を参考)、
でもある (
$0$ のときの三角関数を参考)。
以上から、次の増減表を得る。
これより、
である。
周期 $2 \pi$ の周期関数
三角関数は周期 $2 \pi$ の関数である。
すなわち、
が成り立つ。
$\cos 0$ と $\sin 0$
$z=0$ のときの三角関数の値は、
である。
代表的な値 $\cos \frac{\pi}{3}$、$\cos \frac{\pi}{2}$、$\cos \pi$ など
三角関数の代表的な値は、
である。
倍角の公式
以下の関係は
倍角の公式と呼ばれる。
半角の公式
以下の関係は
半角の公式と呼ばれる。
和積の公式・積和の公式
以下の関係は
和積の公式と呼ばれる。
以下の関係は
積和の公式と呼ばれる。
証明
和積の公式
加法定理を用いると
となる。
積和の公式
同様に
加法定理
によって、明らかに
である。
補角 ($\pi - x$) と余角 $(\frac{\pi}{2}-\pi)$
補角 ($\pi - x$) に対して
が成り立ち、
余角に対して
が成り立つ。