$\mathrm{C}^n$ 級関数・滑らかな関数
$\mathrm{C}^{1}$級関数と$\mathrm{C}^{n}$級関数
関数 $f(x)$ が
-
$1$ 階の導関数が存在 (= $1$ 回微分可能)
-
$1$ 階の導関数が連続
であるとき、
$f(x)$ を
$\mathrm{C}^{1}$ 級の関数 (class $\mathrm{C}^{1}$ function) という。
同じように関数 $g(x)$ が
-
$n$ 階の導関数が存在 (= $n$ 回微分可能)
-
$n$ 階の導関数が連続
であるとき、
$g(x)$ を
$\mathrm{C}^{n}$ 級の関数 (class $\mathrm{C}^{n}$ function) という。
具体例 ($\mathrm{C}^{1}$ 級関数)
関数
は $\mathrm{C}^{1}$ 級関数であるが、$\mathrm{C}^{2}$ 級関数ではない。
証明
はじめに $f(x)$ (下図) が実数全体で微分可能であることを確かめる。
微分の定義に従って考える。
$f(x)$ は $x \lt 0$ において、
であり、
$x > 0$ において、
であるので、これらの範囲で微分可能である。
また、$x=0$ においても
左極限と右極限が
となり、左極限と右極限が同じ値になるで、微分可能である。
したがって、$f(x)$ は実数全体で微分可能であり、
$1$ 階の導関数は
である。
関数 $f'(x)$ は $x \lt 0$ と $x>0$ において明らかに
連続であり、
$x=0$ においても
左極限と右極限が
となり、左極限と右極限がともに $f'(0)$ になるので、
連続である。
したがって、$f(x)$ は実数全体で
連続である。
以上から、$f(x)$ は $1$ 回微分可能で、なおかつ、
$1$ 階の導関数が連続関数であるため、
$\mathrm{C}^{1}$ 級関数である。
一方、$f'(x)$ の $x=0$ における微分の定義の左極限と右極限が
となり、左極限と右極限が同じ値にならないので、
微分可能ではない。
よって、
$f(x)$ は $2$ 階微分可能ではない。
以上から、$f(x)$ は
$\mathrm{C}^{1}$ 級関数であるが、$\mathrm{C}^{2}$ 級関数ではない。
具体例 ($\mathrm{C}^{1}$ 級関数でない例)
$(1)$ 関数
は微分可能でないので、
$\mathrm{C}^{1}$ 級関数でない。
$(2)$ 関数
は微分可能であるが、微分が不連続な関数であるため、
$\mathrm{C}^{1}$ 級関数ではない。
証明
$(1)$
$f(x)$ は $x=0$ における左極限と右極限が
となり、左極限と右極限が同じ値にならないので、
微分可能ではない。
よって、
$f(x)$ は
$\mathrm{C}^{1}$ 級関数ではない。
$(2)$
$g(x)$ は $x=0$ において、
であるので ($ |\sin\frac{1}{h}| \leq 1 $ を用いた) 、$x=0$ において微分可能であり、
である。
一方、$x \neq 0$ において
であるので、
$g'(x)$ は $x \rightarrow 0$ の極限で収束しない
(第二項の $\cos\frac{1}{x}$ が収束しない)。
したがって、
が成り立たないので、$g'(x)$ は $x=0$ で
連続ではない。
以上から $g(x)$ は$1$ 回微分可能である一方で、
一階の微分が連続ではないので
$\mathrm{C}^{1}$ 級関数ではない。
2変数関数の場合
関数 $f(x,y)$ が
-
$x$ と $y$ の両方について偏微分可能
-
$1$ 階の偏導関数 $f_{x}(x,y)$ と $f_{y}(x,y)$ が連続
であるとき、
$f(x,y)$ を
$\mathrm{C}^{1}$ 級の関数 という。
同じように関数 $g(x)$ が
-
$x$ と $y$ の $2$ 階の偏導関数が存在 (= $2$ 回偏微分可能)
-
$2$ 階の偏導関数 $f_{xx}(x,y)$ と $f_{yy}(x,y)$ と $f_{xy}(x,y)$ が連続
であるとき、
$g(x)$ を
$\mathrm{C}^{2}$ 級の関数 という。
$\mathrm{C}^{n}$ 級の関数についても同様に定義される。
$\mathrm{C}^{\infty}$ 級関数 = 滑らかな関数
関数 $f(x)$ が
-
任意階の導関数が存在 (= 任意回微分可能)
-
任意階の導関数が連続
であるとき、
$f(x)$ を
$\mathrm{C}^{\infty} 級の関数$ (class $C^{1}$ function)、
または「
滑らかな関数」という
具体例 (滑らかな関数)
$(1)$ 関数
は滑らかな関数である。
$(2)$ 関数
は滑らかな関数である。
証明
$(1)$
$f(x) = \sin x$ は、
何回でも微分可能であり、
それぞれの階数の導関数が (三角関数になるために)
連続であるので、
$\mathrm{C}^{\infty}$ 級関数(滑らかな関数)である。
$(2)$
$g(x) = e^{x}$ は、
何回でも微分可能であり、
それぞれの階数の導関数が ($e^{x}$ になるために)
連続であるので、
$\mathrm{C}^{\infty}$ 級関数(滑らかな関数)である。
具体例 (滑らかでない関数)
$(1)$ 関数
は $1$ 回微分可能でないので
$\mathrm{C}^{\infty}$ 級関数 (滑らかな関数) ではない (
上の例を参考)。
$(2)$ 関数
は $1$ 回微分可能であるが、
$2$ 回微分可能ではないので、
$\mathrm{C}^{\infty}$ 級関数 (滑らかな関数) ではない (
上の例を参考)。
補足:
物理学や工学でよく耳にする「滑らかな関数」とは、
実際に関数の形が滑らかであるだけでなく、
関数の定義域において
微分可能性や
連続性を気にせずに解析できる関数のこと表している。