接平面
接平面の式
関数 $f(x, y)$ が $C^{1} 級$ の関数(偏微分可能であり、偏微分が連続)であるとき、
点 $(a, b)$ における $f(x, y)$ の接平面は、
と表される (
定義を参考)。
ここで $f_{x}$ と $f_{y}$ はそれぞれ $f$ の $x$ と $y$ の偏微分である。
接平面の計算例
半径 $1$ の球
上の点 $A$ $(\frac{1}{3}, \frac{2}{3}, \frac{2}{3})$ 上の接平面を求める。
点 $A$ 付近において
であるので、
$z=f(x,y)$ と表すと、
であることから、
であるので、
接平面の方程式は、
である。
整理すると、
である。
近接点を通る平面 = 接平面 (定性的な議論)
関数 $z=f(x,y)$ 上の $3$ 点
を通る平面の $\Delta x, \Delta y \rightarrow 0$ の極限は
接平面の式
と一致する。
ここで、
点 $X$ は
点 $A$ から
$x$ 座標が $\Delta x$ だけずれた位置にある点であり、
点 $Y$ は
$A$ から
$y$ 座標が $\Delta y$ だけずれた位置にある点である。
証明
3 点 $A$, $B$, $C$ の位置ベクトルをそれぞれ
と表すとき、
3点を通る平面の方程式は、
と表される。
ここで $\vec{r}$ は
であり、平面上の点を表す。
また $(\cdot, \cdot)$ と $\times$ は
それぞれ 3 次元ベクトルの内積と
外積である。
計算して行くと、
であり、
であるので、
$(1)$ より平面の方程式は、
となる。
整理すると、
である。
この式は、
$\Delta x, \Delta y \rightarrow 0$ の極限において、
となる。
このように、
$3$ 点を通る平面の極限として接平面の式が導かれるが、
ここで使われた $3$ 点は着目している点 $A$ と $x$ 座標だけ異なる点 $X$ と $y$ 座標だけ異なる点 $Y$ である。
従って、
$x$ 座標も $y$ 座標も異なる任意の点を使って同様の議論が成り立つかどうか、またそのための条件が何なのかについては、
はっきりと示されていない。
そこで一般的には次のように接平面を定義し、接平面の式が導かれる。
接平面の定義
関数 $f(x,y)$ 上の点 $A$: $(a,b, f(a,b))$ を通る平面
を $P$ とする。
また、$f(x,y)$ と $P$ との差 $\epsilon $ を
と定義する。このとき
を $0$ にする極限において、
を満たす平面を関数
$f(x,y)$ 上の点 $A$ における
接平面と定義する。
解説
接平面の定義を満たす平面が実際に関数 $f(x,y)$ と接することを示す。
関数 $f(x,y)$ 上の二点の位置ベクトルを
と表す。
このとき、
であるので、
が成り立つ。
したがって、
であるならば、
が成り立つ。
ここで
を用いた。
分母にある $|\epsilon|$ は定義から、
と表せる。ここで $\vec{N}$ は平面 $P$ の法線ベクトル
である。
したがって、
$|\epsilon|$ は点 $\vec{R}$
と平面 $P$ との間の
距離 (垂線の足の長さ) を表す。
そこで
$\vec{R}-\vec{A}$ と平面との成す角を $\theta$ とすると、
$(1)$ は、
と表される。
これより、
を得る。
ここで
$\tan \theta$ は、
平面 $P$ に対する ベクトル $\vec{R} - \vec{A}$ の傾きである。
したがって、
この傾きが $0$ に近づくということは、
$\vec{R}$ が $\vec{A}$ に近づくにつれて、
$f(x,y)$ の傾きと平面 $P$ の傾きが等しくなって行くことを意味する。
このような意味で
を満たす平面は $f(x,y)$ の接する平面である。
この接平面の定義と次の定理から
接平面の式が導かれる。
偏微分が連続 ⇒ 全微分可能
二変数関数 $f(x,y)$ が偏微分可能であり、
その偏微分が連続関数であるならば、
$f(x,y)$ は全微分可能な関数であり、
によって定義される $\epsilon$ に対して、
が成り立つ。
ここで $r$ は
である。
接平面の式の導出:
ここで
と置くと、
これは関数 $f(x,y)$ 上の点 $(a, b , f(a,b))$ を通り、
法線ベクトルが
である平面を表す式である。
これを用いると、上の定理は次のように表される。
すなわち、
によって定義される $\epsilon$ に対して、
が成り立つ。
したがって、
接平面の定義により、
平面 $(2)$ は点 $(a,b, f(a,b))$ 上での関数 $f(x,y)$ の接平面である。