減衰振動の解の求め方
運動方程式
速度に比例する抵抗力を受ける調和振動子系の運動方程式は、
と記述される(下図参考)。
ここで
$m$ は質量、$k$ と $b$ は実定数であり、
$\ddot{x} = \frac{\mathrm{d}^2 x }{\mathrm{d} t^2 }$、
$\dot{x} = \frac{\mathrm{d} x }{\mathrm{d} t }$ である。
以下では、この運動方程式の初期条件
のもとでの解を求める。
ただし、任意の $t$ に対して $x(t) = 0$ (常に静止している状態) ではないものと仮定する。
運動方程式を書き換えると、
である。
これは定数係数の線形斉次微分方程式であり、
と置くと解が求まることが知られている。
このとき、
であるので、
運動方程式は
と表される。これを書き直すと、
であるが、
任意の $t$ に対して $x(t) = 0$ ではないという仮定から、
$x(t) \neq 0$ となる $t$ が存在するので、
が成り立つ。
この式は二次方程式であるため、
解が
と求まる。
この解は、平方根内の符号によって、次の三つの場合分けがされうる。
以下では、それぞれの場合に対する解を与え、
最後に三つの解の比較を行う。
(A) $ \small \hspace{2mm} b^{2} \lt 4mk \hspace{2mm}$ の場合 (減衰振動)
はじめに
と置き、
二次方程式 $(2)$ の二つの解 をそれぞれ
と表すと、
は、ともに $(1)$ の解である
(実際に $(1)$ に代入すると確かめられる)。これらを特解という。
$(1)$ の一般解は、
特解の線形結合で表されることが知られている。
すなわち、
が $(1)$ の一般解である。
ここで $C_{+}$ と $C_{-}$ は線形結合の係数である。
この一般解を
オイラーの公式
を用いて
書き換えると、
と表せる。
ここで
$C_{+} + C_{-}$ の実部を $A_{R}$、
虚部を $A_{I}$ と置き、また
$i(C_{+} -C_{-})$ の実部を $B_{R}$、
虚部を $B_{I}$ と置くと、
すなわち、
と置くと、
一般解は、
と表される。
また $x$ が物体の位置を表す物理量であるので、
解が実数であることを仮定すると、
任意の時刻 $t$ に対して一般解の虚部が $0$ になっていなくてはならない。
すなわち、
が成り立つ。
任意の $t$ に対して $e^{-\Gamma t } \neq 0$ であるので、
が成り立つ。
これが任意の時刻 $t$ について成り立つことから、
である (例えば $t=0$ から $A_{I}=0$ が求まり、$t=\pi/2$ から $B_{I}=0$ が求まる)。
これより、物理的に許される解は、
と表される。
また、速度は
であるので、
初期条件
$x(0) = 0$
と
$\dot{x}(0) = v$
を表すと、
である。
これより、
であるので、
物体の運動が
と表されることが分かる。
図で表すと、
である。
この運動を
減衰振動と呼ぶ。
(B) $ \small \hspace{2mm} b^{2} \gt 4mk \hspace{2mm}$ の場合 (過減衰)
はじめに
と置き、
二次方程式 $(2)$ の二つの解をそれぞれ
と表すと、
は、ともに $(1)$ の解である
(実際に $(1)$ に代入すると確かめられる)。これらを特解という。
$(1)$ の一般解は、
特解の線形結合で表されることが知られている。
すなわち、
が $(1)$ の一般解である。
ここで $D_{+}$ と $D_{-}$ は線形結合の係数である。
これより、速度は
であるので、
初期条件
$x(0) = 0$
と
$\dot{x}(0) = v$
を表すと、
である。
ここから
が導かれるので、
物体の運動が
と表されることが分かる。
図で表すと、
である。
この運動を
過減衰と呼ぶ。
(C) $ \small \hspace{2mm} b^{2} = 4mk \hspace{2mm}$ の場合 (臨界振動)
はじめに
と置くと、
二次方程式の解 $(2)$ の解は
であり、重解である。
この場合、
微分方程式
$(1)$ の一般解は、
となることが知られている。
ここで $E_{1}$ と $E_{2}$ は線形結合の係数である。
これより、速度は
であるので、
初期条件
$x(0) = 0$
と
$\dot{x}(0) = v$
を表すと、
である。
したがって
であるので、
物体の運動が
と表されることが分かる。
図で表すと、
である。
この運動を
臨界減衰と呼ぶ。
まとめ
以上の結果より、
速度に比例する抵抗力を受ける調和振動子系、
の初期条件
のもとでの解は、
である。
これらの3種類の運動のうち、物体が振動するものは $(\mathrm{A})$ の減衰振動のみである。
また、いずれの場合も十分に時間が経過すると $ (t \rightarrow +\infty) $、
$x=0$ に収束する。