磁場中の荷電粒子の運動とサイクロトロン振動数
各成分の運動方程式の導出
質量 $m$ の荷電粒子が定磁場中を運動している。
粒子の位置を $\mathbf{r}(t)$ と表すとき、
運動方程式は、
である (電場なしのローレンツ力)。
ここで、
$q$ は粒子の持つ電荷量であり、
$\mathbf{B}$ は 一様な磁場である。
また、
$\dot{\mathbf{r}}(t)$ は粒子の位置の一階の時間微分(すなわち速度)であり、
$\ddot{\mathbf{r}}(t)$ は二階の時間微分(すなわち加速度)である。
位置 $\mathbf{r}(t)$ の各成分を
と表すことにし、
$3$ 次元空間の基底ベクトルを
と定義すると、
位置と速度と加速度は、
それぞれ
と表される。
これを用いると、
運動方程式は、
と表される。
ここで議論を簡潔にするため、
一様磁場 $\mathbf{B}$ が $Z$ 方向を向いているものとする。
すなわち、
であるとする。
この場合、
運動方程式は、
である。
さて、基底ベクトル同士の外積が
であることを用いると、
運動方程式は、
と表される。
この式を成分で表示すると、
となる。
このように一様な磁場中を運動する荷電粒子の運動方程式は、
連立線形微分方程式になる。
粒子の位置と速度が時刻 $t=0$ において、
であったという初期条件を課すと、
この微分方程式は以下のように解かれる。
運動方程式を解く
各成分の運動方程式 $(1)$ を時間について積分した式は、
である。
ここで $C_{x}, C_{y}, C_{z}$ は時間に依らない定数であるが、
時刻 $t=0$ の場合を考えると、
初期条件 $(2)$ によって、
と求まる。
これらを代入することにより、
を得る。
これらを
運動方程式 $(1)$ に代入すると、
となる。
これより、
$x(t)$ と $y(t)$ は、
微分方程式
に従うことが分かる。
$(4)$ の一般解は、
これを満たす一つの解(特解)と
右辺を $0$ とした微分方程式
の一般解との和で与えられることが知られている。
そこで、それらの解を求めると次のようになる。
まず、
$(4)$ を満たす一つの解は、
である ($(4)$ に実際に代入すると確かめられる。
また $(4)$ のように右辺が定数になる場合には、
特解が定数になることが知られている )。
一方、
微分方程式 $(5)$ の一般解は、
であることが知られている。
ここで、
$D_{x}, E_{x}, D_{y}, E_{y}$ は定数であり、
である。
したがって、微分方程式 $(3)$ の一般解は、
である。
定数 $D_{x}, E_{x}, D_{y}, E_{y}$ は、
初期条件 $(2)$ により、次のように求まる。
まず $(7)$ において $t=0$ とすると、
$(2)$ により、
となる。
また、
$(7)$ を時間で微分し、
とした上で、
$t=0$ とすることにより、
$(2)$ から
となることが分かる。
以上のように求まった $D_{x}, E_{x}, D_{y}, E_{y}$ を
$(7)$ に代入することにより、
$x(t)$ と $y(t)$ の解
を得る。
この結果から
が成り立つ。
これは、中心が $(\frac{v_{y}}{\omega}, - \frac{v_{x}}{\omega})$ であり、
半径が $\frac{1}{\omega} \sqrt{v_{x}^2 + v_{y}^2} $ である円の方程式であるので、
$x(t), y(t)$ の描く軌道は円運動であることが分かる。
また、
$(8)$ を時間微分すると、
であることから、
が成り立つので、
円運動の速さは一定である。
加えて、
$(8)$ から任意の時刻 $t$ に対して
が成立するので、
$x(t)$ と $y(t)$ は
の周期を持つ周期運動であることが分かる。
これより、
$x(t)$ と $y(t)$ の角振動数は、
である。
ここで $(6)$ を用いた。
以上から $x(t)$ と $y(t)$ の描く軌跡が、
角振動数 $\frac{qB}{m}$ の
等速円運動であることが示された。
一方で $z(t)$ は、
$(3)$ を時間について積分した式
に初期条件 $(2)$ を課すことによって、
であることが分かるので、
となる。
したがって、粒子は $Z$ 方向に等速運動をする。
まとめ
以上より、
$Z$ 方向に一様な磁場中の荷電粒子は、
$Z$ 方向に等速で進み、$XY$ 座標が等速円運動を行う
らせん軌道を描くこと分かる (下図)。
この運動は
サイクロトロン運動は呼ばれ、
円運動の角振動数
は
サイクロトロン振動数と呼ばれる。