シュワルツの不等式

  $\mathbf{x}$, $\mathbf{y}$ を内積の定義された複素ベクトルとするとき、

複素内積に対するシュワルツの不等式00

が成立する。これをシュワルツの不等式(Schwarz inequality)という。
最終更新 2016 年 4月 19日


  証明


準備
    複素ベクトルの内積は次の性質を満たすものとして定義される。

$(1)$   任意の $\mathbf{x}$, $\mathbf{y}$ に対して、

複素内積に対するシュワルツの不等式01


$(2)$   任意の $\mathbf{x}$, $\mathbf{y}$, $\mathbf{z}$ に対して、

複素内積に対するシュワルツの不等式02


$(3)$   任意の $\mathbf{x}$, $\mathbf{y}$, 複素数 $\alpha$ に対して、

複素内積に対するシュワルツの不等式03


$(4)$   任意の $\mathbf{x}$ に対して、

複素内積に対するシュワルツの不等式04


が成立する。 ここで $\|\mathbf{x} \|^2 = (\mathbf{x}, \mathbf{x})$ である。 等号が成立するのは、$\mathbf{x} = 0$ のときのみ。すなわち、

複素内積に対するシュワルツの不等式05



$(1)$ と $(3)$ から、任意の $\mathbf{x}$, $\mathbf{y}$, 複素数 $\alpha$ に対して、

複素内積に対するシュワルツの不等式06


が成立する。
  これらの性質を用いて、シュワルツの不等式を証明する。



証明
  $\mathbf{x}, \mathbf{y}$ を任意の複素ベクトル、$\alpha$ を任意の複素数とする。 このとき、内積の性質 $(2)$ により、

複素内積に対するシュワルツの不等式07

が成立する。ここで第二項は、性質 $(3)$ により、

複素内積に対するシュワルツの不等式08

である。 第三項は、性質 $(1)$ と $(*)$ により、

複素内積に対するシュワルツの不等式09

である。 第四項は、性質 $(3)$ と $(*)$ により、

複素内積に対するシュワルツの不等式09

である。よって、

複素内積に対するシュワルツの不等式11

と表される。
  一方で、性質 $(4)$ により、$\|\mathbf{x} + \alpha \mathbf{y}\|^2 \geq 0$ であるので、

複素内積に対するシュワルツの不等式12

が成立する。
  ここで、

複素内積に対するシュワルツの不等式14
と置くと、

複素内積に対するシュワルツの不等式15

である。
  この式が任意の複素数 $\alpha$ に対して成立するので、 $\alpha = \rho e^{-i\theta}$ ($\rho$ は任意の実数)の場合にも成立する。 よって、

複素内積に対するシュワルツの不等式16

が成立する。
  左辺が実数 $\rho$ の 2 次式であるので、不等式が成立するための必要十分条件は、 左辺の 2 次式の判別式が 0 以下になることである。すなわち、

複素内積に対するシュワルツの不等式17

である。
  $(*2)$ より、$r = |(\mathbf{x}, \mathbf{y} )|$ であるので、上式は、

複素内積に対するシュワルツの不等式18

と表される。これより、

複素内積に対するシュワルツの不等式19

を得る。


等号成立条件
  シュワルツの不等式の等号が成立するための必要十分条件を求める。
  まず $\mathbf{x} = 0$ または $\mathbf{y} = 0$ の場合は、等号が成立する。そこで、 $\mathbf{x} \neq 0$ かつ $\mathbf{y} \neq 0$ の場合を考える。

複素内積に対するシュワルツの不等式20

を仮定すると、$(*)$ と $(*2)$ から

複素内積に対するシュワルツの不等式21

が成立する。 ここで、両辺の複素共役をとると、

複素内積に対するシュワルツの不等式22

であるが、左辺の $\| \mathbf{x}\| \| \mathbf{y} \|$ は実数であるので、$(\| \mathbf{x}\| \| \mathbf{y} \|)^{*} = \| \mathbf{x}\| \| \mathbf{y} \|$ が成立し、 右辺は、性質 $(1)$ により、 $(e^{i\theta}\mathbf{x}, \mathbf{y} )^{*} = (\mathbf{y}, e^{i\theta}\mathbf{x})$ が成立する。 よって、上式は、

複素内積に対するシュワルツの不等式23

と表される。
  ここで

複素内積に対するシュワルツの不等式24

と置き、$\| \mathbf{y} - \beta e^{i\theta} \mathbf{x} \| ^2$ を計算する。 $\beta$ は実数であり、内積の諸性質から

複素内積に対するシュワルツの不等式25

と展開される。 この式は $(*3)$ と $(*4)$ から

複素内積に対するシュワルツの不等式26

と表される。 さらに $\beta$ の定義から、

複素内積に対するシュワルツの不等式27

を得る。
  これより、性質 $(4)$ から

複素内積に対するシュワルツの不等式28

である。
  ここで $\beta e^{i\theta}$ は複素数であるので、上の式から $\mathbf{y}$ と $\mathbf{x}$ は、 複素数倍の関係で結ばれることが示された。すなわち、$\beta e^{i\theta} = \xi$ と置くと、

複素内積に対するシュワルツの不等式29

が成立することが示された。
  逆に、$\mathbf{y}$ と $\mathbf{x}$ が複素数倍の関係で結ばれると仮定すると、すなわち、任意の複素数 $\xi$ に対して、

複素内積に対するシュワルツの不等式30

が成立すると仮定する。
  このとき、

複素内積に対するシュワルツの不等式31

であり、一方で、

複素内積に対するシュワルツの不等式32

であるので、

複素内積に対するシュワルツの不等式33

が成立する。 よって、


複素内積に対するシュワルツの不等式34

が成立する。
  以上より、シュワルツの不等式の等号が成立するための必要十分条件は、 $\mathbf{y}$ と $\mathbf{x}$ が複素数倍の関係で結ばれることである。すなわち、

複素内積に対するシュワルツの不等式35
である。




シュワルツの不等式  実ベクトルの場合







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