実対称行列の対角化

  任意の実対称行列 $A$ は、対角化可能である。すなわち、

実対称行列の対角化00

を満たす対角行列 $\Lambda$ と直交行列 $R$ が存在する。
最終更新 2017年 12月 9日


  証明  

  任意の $n$ 次実対称行列が対角化可能であることを、帰納法によって証明する。
  $n=1$ の場合は、任意の行列が対角行列であるため明らかである。
  そこで、 $n-1$ 次実対称行列が対角化可能であることを仮定し、 $n$ 次実対称行列 $A$ が対角化可能であることを示す。
  $A$ の固有値を $\lambda_{1}$ とし、大きさ $1$ の固有ベクトルを $\mathbf{u}_{1}$ とする。すなわち、

実対称行列の対角化01

とする。
  一般に、$0$ でない任意のベクトルを含むように、正規直交基底を構成することができることから、 $\mathbf{u}_{1}$ を含む正規直交基底

実対称行列の対角化02

と表す。 このとき、 それぞれには

実対称行列の対角化03

が成り立つ。 ここで $i,j = 1,2,\cdots,n$ であり、 $\delta_{ij}$ はクロネッカーのデルタである。 すなわち、

実対称行列の対角化04

である。
  また、 基本ベクトル $\mathbf{e}_{1}$, $\mathbf{e}_{2}$, $\cdots$, $\mathbf{e}_{n}$ を

実対称行列の対角化05

と定義すると、 これらも正規直交基底を成す。 すなわち、

実対称行列の対角化06

が成立する。
  $(1)$ と $(3)$ によって、 行列 $R_{n}$ を

実対称行列の対角化07

と定義すると、 $(2)$ と $(4)$ より、 $R_{n}$ は直交行列であることが示される。 すなわち、

実対称行列の対角化08

が成立する。 また $R_{n}$ の定義 $(5)$ から

実対称行列の対角化09

を満たされる。 ここで $i=1,2,\cdots, n$ である。
  これらの関係によって、 ベクトル $\mathbf{e}_{1}$ が行列 $R_{n}^{T} A R_{n}$ の固有値 $\lambda_{1}$ の固有ベクトルであることが示される。 すなわち、

実対称行列の対角化10

が成立する。 $ \mathbf{e}_{1} $ が $(3)$ で定義される基本ベクトルであるので、 $(7)$ から、行列 $R_{n}^{T} A R_{n}$ は、次の形を持つ行列でなくてはならない。

実対称行列の対角化11

すなわち、1 列の 2 行以降の成分が全て 0 でなくてはならない。
  ところで、 $A$ が対称行列であることから、

実対称行列の対角化12

が成立する。よって、$R_{n}^{T} A R_{n}$ もまた対称行列である。 この事と、$(8)$ により、$R_{n}^{T} A R_{n}$ は、次の形を持つ行列でなくてはならない。

実対称行列の対角化13

ここで、

実対称行列の対角化14

の部分は、$n-1$ 次正方行列であり、$R_{n}^{T} A R_{n}$ が対称行列であることから、 この部分もまた対称行列である。 そこで、この部分を $A_{n-1}$ と置くと、$(9)$ は

実対称行列の対角化15

と表され、$A_{n-1}^{T} = A_{n-1}$ が成立する。 ここで点線は、便宜上のものに過ぎない。
  帰納法の仮定により、任意の $n-1$ 次の実対称行列は、対角化可能であるとしたので、 $A_{n-1}$ は対角化可能である。すなわち、

実対称行列の対角化16

を満たす $n-1$ 次の直交行列 $R_{n-1}$ と対角行列 $\Lambda_{n-1}$ が存在する。
  この $R_{n-1}$ を使って、

実対称行列の対角化17

を定義すると、

実対称行列の対角化18

が満たされる。 同様に $\overline{R_{n}} \hspace{1mm} \overline{R_{n}}^{T} = I$ も満たされるので、 $\overline{R_{n}}$ は直交行列である。
  また、$(10)$$(11)$$(12)$ により、

実対称行列の対角化19

が成立する。
  ここで、右辺に現れた行列を

実対称行列の対角化20

と定義すると、 $\Lambda_{n-1}$ が $n-1$ 次の対角行列であることから、 $\Lambda$ は $n$ 次対角行列である。
  一方、$R$ を

実対称行列の対角化21

と定義すると、$R_{n} $ と $\overline{R_{n}}$ が直交行列であることから、$R$ もまた直交行列である。すなわち、

実対称行列の対角化22

と、$R R^{T} = I $ を満たす。
  これらにより、 $(13)$ は、

実対称行列の対角化23

と表され、$R$ が直交行列であり、$\Lambda$ が対角行列である。 よって、$A$ は対角化可能である。

  以上より、帰納法によって、任意の実対称行列 $A$ が対角化可能であることが示された。







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