正規行列の対角化
任意の正規行列 $A$ は、対角化可能である。すなわち、
最終更新 2017年 12月12日
証明
任意の正規行列が対角化可能であることを、帰納法によって証明する。$A$ を $n$ 次正規行列とする。 $n=1$ の場合、どんな行列も対角行列であることから明らかである。
$n \geq 2$ の場合、$n-1$ 次正規行列が対角化可能であることを仮定し、 $n$ 次正規行列 $A$ が対角化可能であることを示す。
$A$ の固有値を $\lambda_{1}$ とし、大きさ $1$ の固有ベクトルを $\mathbf{u}_{1}$ とする。すなわち、

$\mathbf{u}_{1}$ を含む完全正規直交系を



また、基本ベクトル $\mathbf{e}_{1}$, $\mathbf{e}_{2}$, $\cdots$, $\mathbf{e}_{n}$ を


$(1)$ と $(3)$ によって、行列 $U_{n}$ を



これらの関係によって、 ベクトル $\mathbf{e}_{1}$ が行列 $U_{n}^{\dagger} A U_{n}$ の固有値 $\lambda_{1}$ の固有ベクトルであることが示される。 すなわち、

$ \mathbf{e}_{1} $ が $(3)$ で定義される基本ベクトルであるので、 $U_{n}^{\dagger} A U_{n}$ が $(7)$ の関係を持つためには、 次の形の行列でなくてはならない。

ところで、$A$ が正規行列であることから、

ここで、$U_{n}^{\dagger} A U_{n}$ の $1$ 行を $b_{1j}$ と表し、




これと $(10)$ から、$U_{n}^{\dagger} A U_{n}$ を

ここで、



帰納法の仮定により、任意の $n-1$ 次の正規行列は、対角化可能であるとしたので、 $A_{n-1}$ は対角化可能である。よって、

この $U_{n-1}$ を使って、


また、$(12)$$(13)$$(14)$ により、

ここで、右辺に現れた行列を



ここで、 $\Lambda_{n-1}$ が $n-1$ 次の対角行列であることから、 $\Lambda$ は $n$ 次対角行列である。 一方で、$U_{n} $ と $\overline{U_{n}}$ がユニタリー行列であることから、 $U$ もまたユニタリー行列である。すなわち、

以上から、$n$ 次正規行列 $A$ に対し、 $(16)$ を満たすユニタリー行列 $U$ と、対角行列 $\Lambda$ が存在することが示された。
帰納法により、任意の正規行列 $A$ は対角化可能である。