連立一次方程式が解を持つための必要十分条件

  $A$ を $m\times n$ の行列、$\mathbf{x}$ と $\mathbf{b}$ を $n$ 次の列ベクトルとするとき、 連立一次方程式

連立一次方程式が解を持つための必要十分条件00

が解を持つための必要十分条件は、係数行列 $A$ と拡大係数行列 $ \left[A \hspace{1mm} \mathbf{b} \right] $ のランクが等しいことである。すなわち、

連立一次方程式が解を持つための必要十分条件01

が成立することである。
  この定理をルーシェ・カペリの定理 (Rouche-Capelli theorem) という。

最終更新 2016 年 11 月 27 日


  証明


準備
  係数行列 $A$ の列ベクトルを

連立一次方程式が解を持つための必要十分条件02

と表すと、拡大係数行列 $[A \hspace{1mm} \mathbf{b}]$ は、

連立一次方程式が解を持つための必要十分条件03

である。 これは、 係数行列 $A$ よりも $1$ 列だけ多い $m \times (n+1)$ の行列である。
  行列のランクとは、 「その行列に含まれる互いに線形独立な列ベクトルの数の最大値」 であるので、 $1$ 列だけ列ベクトルの多い行列は、 もとの行列のランクよりも $1$ だけ大きいか、 同じであるかのどちらかである。 従って、$[A \hspace{1mm} \mathbf{b} ]$ のランクは、 $$ \mathrm{rank}\left(\left[A \hspace{1mm} \mathbf{b} \right] \right) = \mathrm{rank}(A) +1 $$ であるか、 $$ \mathrm{rank}\left(\left[A \hspace{1mm} \mathbf{b} \right] \right) = \mathrm{rank}(A) $$ であるかのどちらかである。 以下では、 この性質を参考にして証明を行う。


  証明
  ● 係数行列 $A$ が $$ \mathrm{rank}\left(\left[A \hspace{1mm} \mathbf{b} \right] \right) = \mathrm{rank}(A) $$ を満たすと仮定し、 連立一次方程式 $$ A \mathbf{x} = \mathbf{b} $$ が解を持つことを証明する。

  この仮定は、 行列 $A$ に $\mathbf{b}$ を追加して、 $[A \hspace{1mm} \mathbf{b} ]$ としても、 ランクが変わらないことを表している。 行列のランクとは、その行列に含まれる互いに線形独立な列ベクトルの数の最大値であるので、 $A$ に $1$ 列追加してできる行列のランクが変わらないならば、 $A$ の列ベクトルと $\mathbf{b}$ が線形従属でなくてはならない (もしも線形独立であるならば、$A$ のランクよりも $[A \hspace{1mm} \mathbf{b} ]$ のランクの方が $1$ だけ大きくなる)。 このことは、 $\mathbf{b}$ が $A$ の列の線形結合によって表せることを意味する。 すなわち、

連立一次方程式が解を持つための必要十分条件08

を満たす係数 $t_{1}, t_{2}, \cdots, t_{n}$ が存在する。 この式は、$ \mathbf{t} = [t_{1}, t_{2}, \cdots, t_{n} ]^{T}$ と定義することにより、 次のように言い表される。すなわち、

連立一次方程式が解を持つための必要十分条件09

を満たす $\mathbf{t}$ が存在する。 これは、 連立一次方程式 $ A \mathbf{x} = \mathbf{b} $ が解 $\mathbf{x} = \mathbf{t}$ を持つことを表している。


  ● 連立一次方程式 $$ A \mathbf{x} = \mathbf{b} $$ が解を持つと仮定し、 $$ \mathrm{rank}(A) = \mathrm{rank}\left( \left[A \hspace{1mm} \mathbf{b} \right] \right) $$ が成立することを証明する。

  上の連立一次方程式が解を持つとは、 $$ A \mathbf{t} = \mathbf{b} $$ を満たす $\mathbf{t}$ が存在することである。 ここで、 $ \mathbf{t} = [t_{1}, t_{2}, \cdots, t_{n} ]^{T}$ である。
  この式は、 $A$ の列ベクトル $\mathbf{a}_{1}, \cdots \mathbf{a}_{n}$ によって、

連立一次方程式が解を持つための必要十分条件08

と表されるので、 $A$ の列ベクトルと $\mathbf{b}$ は、 互いに線形従属である。
  よって、 ベクトルの組 $$ \mathbf{a}_{1}, \mathbf{a}_{2}, \cdots \mathbf{a}_{n} $$ に $\mathbf{b}$ を追加して、 $$ \mathbf{a}_{1}, \mathbf{a}_{2}, \cdots \mathbf{a}_{n}, \hspace{0.5mm} \mathbf{b} $$ としても、 互いに線形独立なベクトルの数は変わらない。
  ゆえに、 ランクの定義(列ベクトルの中に含まれる互いに線形独立なベクトルの数の最大値)から、 \begin{eqnarray} \mathrm{rank} \left([A \hspace{1mm} \mathbf{b} ]\right) &=&\mathrm{rank} \left( [ \mathbf{a}_{1} \cdots \mathbf{a}_{n} \hspace{1mm} \mathbf{b} ] \right) \\ &=&\mathrm{rank} \left([ \mathbf{a}_{1} \cdots \mathbf{a}_{n} ]\right) \\ &=&\mathrm{rank} (A) \end{eqnarray} が成立する。


以上より、 連立一次方程式 $$ A \mathbf{x} = \mathbf{b} $$ が解を持つために必要十分条件は、 $$ \mathrm{rank}(A) = \mathrm{rank}\left( \left[A \hspace{1mm} \mathbf{b} \right] \right) $$ が成立することである。




連立一次方程式の解がただ一つであるための必要十分条件





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