ベクトル三重積の恒等式

  $3$ 次元ベクトル $\mathbf{a}$、$\mathbf{b}$、$\mathbf{c}$ による積
ベクトル三重積 (vector triple product) と呼ぶ。
  ベクトル三重積は次の恒等式を満たす。
ベクトル三重積
これをラグランジュの公式 (Lagrange's formula) という。

証明

$\mathbf{a} \times ( \mathbf{b} \times \mathbf{c}) = (\mathbf{a}, \mathbf{c}) \mathbf{b} - (\mathbf{a}, \mathbf{b}) \mathbf{c}$ の証明
  $3$ 次元ベクトル $\mathbf{a}$ と $\mathbf{b}$ と $\mathbf{c}$を
と表す。
  外積の定義より、 $\mathbf{b} \times \mathbf{c}$ の各成分は、
である。 これより、
が成り立つ。 同様に他の成分についても、
が成り立つ。 以上をまとめると、
である。
$(\mathbf{a} \times \mathbf{b}) \times \mathbf{c} = ( \mathbf{a}, \mathbf{c}) \mathbf{b} - ( \mathbf{b}, \mathbf{c}) \mathbf{a} $ の証明
  外積の定義より、 $\mathbf{a} \times \mathbf{b}$ の各成分は、
である。 これより、
が成り立つ。 同様に他の成分についても、
が成り立つ。 以上をまとめると、
である。
補足:   レビ・チビタの記号を使って証明
  外積を $\mathbf{b} \times \mathbf{c}$ をレビチビタの記号を使って表すと、
である (「外積とレビチビタの記号」を参考)。 ここで $k=1,2,3$ である。
  これより、
となる。 最後の等式では Levi-Civita の記号の巡回性
を用いた。
  さらにレビチビタの記号の恒等式
(証明はレビチビタの記号の性質を参考) を用いると、
と表せる。
  クロネッカーのデルタの定義
に注意しながら、各項を書き換えると、
となる。
  同様に
も証明される。