ニュートン法の例: ルート3の近似値を与える方法
問題と準備
ニュートン法を使って、
$\sqrt{3}$ の近似値を計算すると、
5回の反復計算によって、
の値が得られる。
この値は真の値と10桁まで一致する。
ニュートン法とは、
方程式 $f(x)=0$ の解を反復計算によって求める一つの方法の一つであり、
各ステップの計算は、次の漸化式によって定義される。
ここで $n=0,1,2,\cdots$ である (
ニュートン法の定義を参考)。
この方法を用いると、
幾つかの問題では正しい数値解が得られることが知られており、
平方根を求める問題は、
その典型的な例である。
そこで以下では $\sqrt{3}$ の平方根の近似値をニュートン法で求め、
正しい値と比較してみる。
解説: $\small \sqrt{3}$ の値を求める
$\sqrt{3}$ は、
の解の一つであるので、
関数 $f(x)$ を
と定義して、
方程式
の解をニュートン法で求める。
初期値を
とする。
$f(x)$ の微分は
であるので、
第 1 ステップ後の値は、$(1)(2)(3)$ から、
である。第2ステップの値は、$(1)(3)(4)$ より、
である。第3ステップの値は、$(1)(3)(5)$ より、
である。第4ステップの値は、$(1)(3)(6)$ より、
である。
第5ステップの値は、$(1)(3)(7)$ より、
である。
真の値が
であるので、
第5ステップの値は、真の値と10桁ほど一致する。
このように繰り返してゆけば、
いくらでも計算を続けて行くことができるが、
ある段階で止めるための一つの方針は、
各ステップ間の変化量の絶対値が予め決めて置いた値 (閾値) よりも小さくなった場合に、
計算をストップさせることである。
例えば、
その閾値を $10^{-4}$ とした場合には、
であるから、$x_{5}$ と $x_{4}$ の差の絶対値が $10^{-4}$ 以下になる。
よって、計算を第5ステップでストップさせる。
平方根の計算機:
以下の入力フォームにもとの値 $x$ と、
初期値 $x_{0}$ を入力し、
「実行」ボタンを押してください。
$x$ の平方根を計算するためのニュートン法の結果が第5ステップの値まで表示されます。
収束について
一般には、ニュートン法によって正しい解が得られるとは限らない。
それどころか、解が収束するかどうかも分からない。
ただし、幾つかの条件がある場合には、正しい解に収束することが知られている。
その条件の一つが、以下のものである。
関数 $f(x)$ が $2$ 階微分可能であり、
ある点 $x_{0}$ において
を満たし、
$x_{0}$ より小さな点 $a$ において、
を満たす。また区間 $[a, x_{0}]$ において $f$ が単調増加で下に凸な関数である。
すなわち、
を満たす。
このような場合にニュートン法は $f(x)=0$ となる $x$ に収束する
(証明については、
ニュートン法の収束を参考)。
ここでは、$\sqrt{3}$ の値を求めるニュートン法がこれらの条件を満たすこと確かめよう。$x_{0}=5$ とすると、 $(1)$ より、
であるため、条件 $(9)$ を満たす。
$a=1$ とすると、再び $(1)$ から
であるため、条件 $(10)$ を満たす。
また、区間 $[a, x_{0}]$ において、
であるため、条件 $(11)(12)$ を満たすので、全ての条件を満たす。
このことは、反復計算を続けたとしても、
誤った解が算出されることは決してなく、
計算結果が必ず収束し、収束値が $\sqrt{3}$ になることを保証している。