双曲線関数~公式と性質~
定義
次の関数
を
双曲線関数という。
それぞれは、
$\sinh x$ を hyperbolic sine (ハイパボリック・サイン)、
$\cosh x$ を hyperbolic cosine (ハイパボリック・コサイン)、
$\tanh x$ を hyperbolic tangent (ハイパボリック・タンジェント)と呼ばれる。
$\cosh x =$ 青線、
$\sinh x =$ オレンジ線、
$\tanh x =$ 緑線
基本的な性質
双曲線関数の間には
の関係が成り立つ (
補足 参考)。
指数関数との関係
定義より、
が成り立つ。
不等式
双曲線関数には不等式
が成り立つ。
証明 ($\cosh$)
$e^{x}=X$ とおき、
と定義すると、
である。
$X > 0$ であることに注意すると、
$F'(X) = 0$ となるのは、
$X=1$ のときのみであり、
$X \lt 1$ のとき $F'(X) \lt 0$ であり、
$X > 1$ のとき $F'(X) > 0$ である。
以上を踏まえて、
$F(X)$ の増減表を表すと、
である。
これより
$
F(X) \geq 1
$
である。
すなわち、
である。
証明 ($\sinh$)
$e^{x}=X$ とおき、
と定義すると、
であるので、$G(x)$ は単調増加関数である。
また、
$
G(1) = 0
$
であるので、
$G(X)$ の増減表を表すと、
となる。
これより、
である。
したがって、
である。
証明 ($\tanh$)
$\tanh x$ を微分すると、
であるが、
上で示したように
$
\cosh x \geq 1
$
であるので、
である。
したがって、
$\tanh x$ は単調増加関数である。
このことと、$x \rightarrow +\infty$ の極限が
であることから、$\tanh x$ が $1$ 以上にならないことが分かる。
同様に $x \rightarrow -\infty$ の極限が
であることから、$\tanh x$ が $-1$ 以下にならないことが分かる。
以上より、
である。
偶/奇関数
- $\cosh x$ は偶関数である。
- $\sinh x$ と $\tanh x$ は奇関数である。
証明
関数 $f(x)$ が
を満たすとき、偶関数という。
一方、
を満たすとき、奇関数という (
偶関数と奇関数の性質 を参考)。
$\cosh x$ は
を満たすので偶関数である。
$\sinh x$ は
を満たすので奇関数である。
$\tanh x$ は
を満たすので奇関数である。
偶関数は $y$ 軸対称のグラフを描く。
奇関数は 原点対称のグラフを描く。
加法定理
双曲線関数には
の関係がある。
これを双曲線関数の加法定理という。
証明
定義から、
となる。
証明 ($\sinh$)
定義から、
となる。
証明 ($\tanh$)
定義 と $\cosh$ と $\sinh$ の加法定理から、
となる。最後の等式では $\cosh x \cosh y \geq 1$ であることを考慮して 分子分母を $\cosh x \cosh y $ で割った。
微分
双曲線関数の微分はそれぞれ
である。
積分
双曲線関数の(不定)積分は
である (
補足2を参考)。
証明
微分が
であることから、
である。
証明 ($\tanh$)
$\cosh x = t$ とおき、置換積分を実行する。
$t \geq 1$ であり (
不等式を参考)、
であることから (
逆双曲線関数を参考)、
である。
また
$x\geq 0$ の場合、$\sinh x \geq 0$ であるので、
である (
基本的性質と
不等式を参考)。
以上から、
を得る。
$\cosh$ の面積 = 長さ
$\cosh x$ の描く曲線の長さ
と
$ \cosh x $ と x 軸で囲まれた部分の領域の面積
は等しい。
証明
$\cosh x$ の積分に対し、
を用いると
(
不等式 と
基本的性質 と
微分 を参考)
が成り立つ。
一般に
面積は積分によって定義されること、
および、
関数 $f(x)$ の長さが
と表されることから、
上の式は
$ \cosh x $ と x 軸で囲まれた部分の領域の面積
が
$\cosh x$ の描く曲線の長さ
に等しいことを表している。
逆双曲線関数
各双曲線関数には次のような逆関数がある。
これらは
逆双曲線関数と呼ばれる。
証明 ($\cosh$)
はじめに
を証明する。
$ x\geq 0$ のもとで
とすると、
である (
不等式を参考)。
また、
であるので、
である。
ここで
が成り立つことに着目すると (
基本的性質を参考)、
と表されるが、
$x \geq 0$ のときは、
であるので
(
不等式を参考)、
である。
したがって、
である。
続いて
を証明する。
とする。
$y \geq 1$ であるので、
である。
したがって、
である。
また、
であることから、
が成り立つ。
したがって、
である。
証明 ($\sinh$)
はじめに
を証明する。
とする。
であるので、
である。
ここで
と
が成り立つことから (
基本的性質 と
不等式を参考)
と表される。
したがって、
である。
続いて
を証明する。
とすると、
であることから、
が成り立つ。
したがって、
である。
証明 ($\tanh$)
はじめに
を証明する。
定義から
であるので、
が成り立つ。ゆえに、
である。
続いて
を証明する。
とすると、
である。
これより、
が成り立つ。
補足1:
双曲線関数を
と表すと、
という関係は、
と表される。
したがって、$X$ と $Y$ は双曲線を成す。
補足2:
$\tanh x$ の積分を $x \geq 0$ の積分範囲に限定して求めたが、
$x \lt 0$ のの範囲を含めて値を求めたい場合には、
$\tanh x$ が
奇関数であることことから、
が成り立つことを利用して値を求めればよい。