ベクトル解析の公式集 (証明付)
スカラー三重積
スカラー三重積には、恒等式
が成り立つ。
これを
スカラー三重積の循環性という。
スカラー四重積
スカラー四重積には、恒等式
が成り立つ。
ベクトル三重積
ベクトル三重積には、恒等式
が成り立つ。
ベクトル四重積
ベクトル四重積には、次の恒等式が成立する。
回転の発散
ベクトル場の回転の発散は恒等的に $0$ である。
すなわち、
が成り立つ。
証明:
ベクトル場 $\mathbf{A}$ の回転の各成分が
であることから、
回転の発散は
である。
最後の等号では、ベクトル場の微分が入れ替え可能であること
を用いた。
勾配の回転
スカラー関数の勾配の回転は $0$ である。
すなわち、
が成り立つ。
証明:
スカラー場 $\phi$ の回転の各成分が
であることから、
回転の発散は
である。
$=0$ の等号では、ベクトル場の微分が入れ替え可能であること
を用いた。
外積の発散
ベクトル場 $\mathbf{A} $ と $\mathbf{B}$ の外積の発散には
が成り立つ。
証明:
ベクトル場の発散の定義と
外積の定義から
が成り立つ。
最後の等号では
ドット積の定義を用いた。
回転の回転
ベクトルの回転の回転は
と表される。
証明:
ベクトル場 $\mathbf{A}$ の回転 $\nabla \times \mathbf{A}$ の各成分は、
レビチビタの記号を使って
と表すことができる。
同じように、回転の回転の各成分は
と表されるので、
と表せる。
最後の等号では、
レビチビタの記号の循環性
$
\epsilon_{ijk} = \epsilon_{kij}
$
を用いた。
さらに
レビチビタの記号が満たす恒等式
により
と表せる。ここで
クロネッカーのデルタの定義
に注意すると、
$$
\tag{1}
$$
と表せる。
最後の等号では、ベクトル場の微分が入れ替え可能であること
を用いた。ベクトル場の発散とラプラシアンが
であることを用いると、$(1)$ から
$$
\tag{2}
$$
を得る。
最後の等号では発散 $ (\nabla \cdot \mathbf{A})$ がスカラー関数であるので、
勾配の各成分が
であることを用いた。
外積の回転
ベクトル場の外積の回転は
と表される。
スカラーとベクトルの積の回転
スカラー関数 $\phi$ とベクトル場 $\mathbf{A}$ の積の回転は
と表される。
証明:
ベクトル場の回転の定義と
積の微分の公式から、
と表せるが、
スカラー場 $\phi$ の勾配 $\nabla \phi$ の各成分が
であることから、
と表せる。
同様の関係が他の成分についても成り立つので、
を得る。