連立一次方程式の解がただ一つであるための必要十分条件

  $A$ を $m\times n$ の行列、$\mathbf{x}$ と $\mathbf{b}$ を $n$ 次の列ベクトルとするとき、 連立一次方程式

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件00

の解が存在する場合、その解がただ一つであるための必要十分条件は、 $A$ のランクが $A$ の列の数に等しいことである。 すなわち、

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件01

が成立することである。  
最終更新 2016 年 1月2日


  準備

  係数行列 $A$ を簡約化した行列を $A^{e}$ とし、 それぞれの列ベクトルを、

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件02

と表す。また、 $n$ 個の基本ベクトル $\mathbf{e}_{i}$ を

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件03

と定義する。
  $\mathbf{x}$ を、
連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件04
と表すと、$(*)$ は、

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件05

と表される。
  この式は、拡大係数行列

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件06

の列ベクトルの間に成立する一次関係を表している。
  $(2)$ を行基本変形し、$1$ 列から $n$ 列までを簡約化すると、 $(2)$ の $A$ の部分が簡約化され、

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件07

と表される行列になる。ここで、$\mathbf{b}^{e}$ は、 行基本変形の結果として現れた列ベクトルである。
  一般に、 行基本変形によって、行列の列ベクトルの一次関係は不変に保たれるので、 $(3)$ の列ベクトルは、$(2)$ の列ベクトルの間で成立する一次関係 $(4)$ と同一の一次関係を持つ。すなわち、

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件08

と表され が成立する。
  これらを踏まえて証明に入るが、 $(*)$ の解が存在する場合のみ議論するので、

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件09

が成立するものと仮定する。 この条件は、解が存在するための必要十分条件である。


  証明

  はじめに

「連立一次方程式 $ (*) $ の解がただ一つ $\hspace{3mm} \Longleftarrow \hspace{3mm} \mathrm{rank} (A) = n$ 」
$$ \tag{5} $$ を証明する。
  一般に行列のランクは、簡約化した行列の主成分の数に等しいので、 $ \mathrm{rank} (A) = n $ である場合、$A^{e}$ は、$n$ 個の主成分を持つ。
  また、 簡約化した行列の列ベクトルは、基本ベクトルであるので、 $A^{e}$ は、$n$ 個の基本ベクトルを列ベクトルに持つ。
  一方で、$A^{e}$ は、$n$ 列の行列であるので、 $n$ 個の基本ベクトルを列ベクトルに持つためには、 全ての列が基本ベクトルでなくてならない。 従って、$A^{e}$ は、次の形をした行列である。

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件10
これより、
連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件11
であるので、$(4)$ は、

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件12

と表される。 これより、

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件13

を得る。 この式は、$(*)$ の解がただ一つだけ求まっていることを表している。ゆえに、$(5)$ が成立する。


次に
「連立一次方程式 $ (*) $ の解がただ一つ $\hspace{3mm} \Longrightarrow \hspace{3mm} \mathrm{rank} (A) = n$ 」
$$ \tag{6} $$ を証明する。
  方針としては、

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件14

を仮定し、$(9)$ の対偶が成立することを示す。すなわち、

「連立一次方程式 $(*)$ の解がただ一つではない $\hspace{3mm} \Longleftarrow \hspace{3mm} \mathrm{rank} (A) \neq n $ 」
$$ \tag{7} $$ を証明する。
  係数行列を $A$ とする同次連立一次方程式の解を $\mathbf{y}$ とする。すなわち、

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件15

とする。
  $(8)$ と $(*)$ を足し合わせることにより、

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件16

が成立する。よって、$\mathbf{x} - \mathbf{y}$ もまた、$(*)$ の解である。
  一般に $n$ 列の係数行列を持つ同次連立方程式の解空間の次元は、 $n$ から係数行列のランクを引いたものであるので、 $(8)$ の解空間の次元は、

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件17

である。このことは、$(11)$ の解 $\mathbf{y}$ が、 $n-\mathrm{rank} (A)$ 個の線形独立なベクトルの線形結合で表されることを意味する。すなわち、

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件18

と表される。ここで、$\mathrm{rank} (A) = r$ であり、$\alpha_{1}, \cdots, \alpha_{n-r}$ は任意の数である。 また、$\mathbf{b}_{1}, \cdots, \mathbf{b}_{n-r}$ は、$n-r$ 個の線形独立なベクトルである。
  したがって、$(9)$ は、

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件19

と表される。これは、$(*)$ の解が、

連立一次方程式の解が唯一つであるための必要十分条件20

と表され、$n-r$ 個の任意の数 $\alpha_{1}, \cdots, \alpha_{n-r}$ に依存していることを意味する。
  $\alpha_{1}, \cdots, \alpha_{n-r}$ がどんな値であっても、$(10)$ が $(*)$ の解であることから、 $(*)$ の解は一つだけではない。ゆえに、$(7)$ が成立する。$(7)$ は、$(6)$ の対偶であるので、$(6)$ が成立する。

  以上の $(5)(6)$ により、
「連立一次方程式 $ (*) $ の解がただ一つ $\hspace{3mm} \Longleftrightarrow \hspace{3mm} \mathrm{rank} (A) = n$ 」
が成立する。

  補足:   解が一つでない必要十分条件

  一般に $m \times n$ の行列のランクは $n$ 以下であるから、



である。 解が存在する場合に、 解が一つであるための必要十分条件が



であるので、 解が一つではない必要十分条件は、


である。




連立一次方程式が解を持つための必要十分条件





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