正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系の存在

  $n$ 次正方行列 $A$ が正規行列であるならば、 $A$ の 固有ベクトルの中に、 完全正規直交系を成す $n$ 個のベクトルが存在する。 すなわち、

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系00

を満たす $A$ の固有ベクトル $\mathbf{u}_{1}, \mathbf{u}_{2}, \cdots, \mathbf{u}_{n}$ が存在する。
最終更新 2016年 10月 30日


  証明

  $n$ 次正方行列 $A$ の固有値を $\lambda$ とし、その固有値を持つ固有ベクトルを $\mathbf{u}$ と表す。

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系01

ここで、

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系02

である。 $(1)$ 式は、

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系03

と表される。
  $(3)$ は、同次連立一次方程式であるので、 $(2)$ を満たす解を持つならば、行列式が 0 である (同次連立一次方程式が自明な解以外のを持つことの必要十分条件を参考)。 よって、

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系04

が成立する。これを $A$ の特性方程式 (charasteristic equation) という。
  $(4)$ は $n$ 次方程式であるので、 代数学の基本定理によって、 複素数の範囲で $n$ 個の解を持つ。 それらを $\lambda_{1}, \cdots, \lambda_{n}$ とすると、$(4)$ は、

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系05

と表され、

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系06

である。
  解 $(6)$ が $p$ 通りの異なる解を持つとし(下のを参考)、 それらを $\overline{\lambda}_{1} \cdots \overline{\lambda}_{p}$ と表す。 また、各 $\overline{\lambda}_{i}$ の重複度を $n_{i}$ とすると、 $(5)$ は、

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系07

と表される。 重複度の合計は、解の総数に等しいので、

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系08

が成立する(下のを参考)。
  $A$ は正規行列であるので、対角化可能であり、 対角化可能な行列の各固有値の固有空間の次元は、 その固有値の重複度に等しい。よって、 $\overline{\lambda}_{i}$ の固有空間を $E_{\overline{\lambda}_{i}}$ と表すと、

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系09

が成立する。 これは、 固有値 $\overline{\lambda}_{i}$ を持つ任意の固有ベクトルを $\overline{\mathbf{u}}_{i}$ が、 $E_{\overline{\lambda}_{i}}$ に属する $n_{i}$ 個の線形独立なベクトル

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系10

の線形結合によって表せることを意味する。すなわち、

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系11

と表せることを意味する。 ここで $c_{\overline{\lambda}_{i}, 1}, c_{\overline{\lambda}_{2}, 2} \cdots c_{\overline{\lambda}_{i}, n_{i}}$ は、 係数である。
  ベクトル $(9)$ は、 互いに独立なので、 グラムシュミットの直交化法によって、 互いに直交する大きさ $1$ のベクトル

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系12

を生成することができる。グラムシュミットの方法によると、 各 $ \mathbf{v}_{\overline{\lambda}_{i}, j}$ は、 $(8)$ の線形結合によって定義されるので、固有空間 $E_{\overline{\lambda}_{i}}$ に属する。
  $(10)$ を各固有空間 $E_{\overline{\lambda}_{i}}$ ごとに並べると、

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系13

であるが、$(10)$ により、同じ固有値に属するもの同士は直交する一方で、 一般には、異なる固有値に属するベクトル同士が互いに直交するとは限らない (ただし、異なる固有値に属する固有ベクトルが線形独立であることは証明される)。 例えば、$(\mathbf{v}_{\overline{\lambda}_{2}, 1}, \hspace{1mm}\mathbf{v}_{\overline{\lambda}_{2}, 2}) = 0$ であるとは限らない。
  しかし、 $A$ が正規行列である場合には、 異なる固有値に属する固有ベクトルが直交するので、

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系14

が成立する。
  したがって、$(10)(12)$ により、 $A$ が正規行列である場合には、 $(11)$ で並べられたベクトル $\mathbf{v}_{\overline{\lambda}_{m}, k}$ の全ては、互いに直交する。 ところで、これらの総数は、

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系15

であるが、$(7)$ より、これは $n$ に等しい。
  以上から、$A$ が $n$ 次の正規行列である場合には、 それぞれの大きさが $1$ で、 互いに直交する $n$ 個の固有ベクトル $(11)$ が存在する。 すなわち、 $A$ の固有ベクトルによって構成される完全正規直交系が存在する。

  例

  一般に、解 $(6)$ の中には、同じ値の解を持つ解(重解)とそうでない解が含まれる。 例えば、解が

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系16

である場合、解 $1$ と $-2$ が重解であり、$4$ と $3$ が重解ではない。
  同じ値の解の数を重複度というので、 解 $1,4,-2,3$ の重複度がそれぞれ $2,1,3,1$ である。 また、$(6)$ には、 $1,4,-2,3$ の $4$ 通りの解がある。
  この例の場合、特性方程式は、 特性方程式が

正規行列の固有ベクトルで構成される完全正規直交系17

と表され、重複度の合計は、 $$ 2 + 1 + 3 +1 = 7 $$ となり、解の総数と一致する。








ページのトップへ戻る