上三角行列の逆行列もまた上三角行列

最終更新 2017年 10月28日
  上三角行列
上三角行列の逆行列もまた上三角行列
の逆行列もまた上三角行列である。 以下に証明を記す。

  証明

  $A$ の余因子行列を $\tilde{A}$ とすると、 $A$ の逆行列 $A^{-1}$ は、余因子行列を行列式で割ったものである。 すなわち、
である (証明は余因子行列と行列式の関係を参考)。
  一般に余因子行列の成分 $\tilde{A}_{ij}$ は、 次のように定義される。 行列 $A$ を $n$ x $n$ の正方行列とし、 各成分を
と表す。 このとき、 $A$ から $i$ 行と $j$ 列を取り除いた小行列 $M_{ij}$ を、
とし、 $M_{ji}$ の行列式によって、
と定義される(添え字が逆になっていることに注意)。
  行列 $A$ が上三角行列、
である場合に、余因子行列 $\tilde{A}$ の下三角の部分を考える。 すなわち、$i>j$ の場合の $\tilde{A}_{ij}$ を考える。
  $\tilde{A}_{ij}$ は 、$A$ から $j$ 行と $i$ 列を取り除いた小行列 $ M_{ji} $ によって、$(2)$ のように定義されるが、 $A$ が上三角行列であり、 $i>j$ の場合、 $ M_{ji} $ は対角成分に 必ず $0$ が現れる次のような形の上三角行列になる。
四角で囲った部分が、 値が $0$ の対角成分である。 このことは、4行4列などの例で確かめると分かり易い。 例えば 4行4列の上三角行列
から $2$ 行 と $3$ 列を取り除いた小行列 $M_{23}$ は、
であり、 対角成分に $0$ が現れる上三角行列になる。
  このように、 行列 $A$ が上三角行列であり、 なおかつ $i > j$ の場合には、 小行列 $M_{ji}$ が $0$ の対角成分を持つ上三角行列になる。 ところで、 一般に上三角行列の行列式は対角成分の積であることから、 $M_{ji}$ の行列式は、
と表される。 ここで、 $M_{ji}$ の対角成分を $(M_{ji})_{kk}$ のように表した。
  すると、 $M_{ji}$ の 対角成分には必ず $0$ が含まれるという性質 $(2)$ から、 $|M_{ji}|$ が
であることが分かる。
  従って、 $(2)$ から
である。 これより、 $(1)$ から、
をある。
  以上から、 $A$ が上三角行列である場合、 $A$ の逆行列 $A^{-1}$ の下三角部分にある成分($i>j$ の成分)は $0$ であること示された。 ゆえに、 $A^{-1}$ は上三角行列である。