複素内積と随伴行列の関係  

最終更新 2017年 5月27日
  任意の $n$ 次複素ベクトル $\mathbf{x}, \mathbf{y}$ の内積を
複素内積と随伴行列の関係
と定義するとき、任意の正方行列 $A$ は、
を満たす。
  ここで、$A^{\dagger}$ は $A$ の随伴行列であり、$x_{i}^{*}$ はベクトルの成分 $x_{i}$ の複素共役である。

  証明

  複素ベクトルの内積の定義より、 ベクトル $\mathbf{x}$ と $A \mathbf{y}$ の間の内積は、
と表せる。 ここで $(A \mathbf{y})_{i}$ は、 ベクトル $A \mathbf{y}$ の第 $i$ 成分であり、 行列とベクトルの積の定義により、
と表せることを用いた。
  ところで、行列 $A$ の随伴行列 $A^{\dagger}$ とは、 $A$ の転置行列の各成分を複素共役にしたものである。 すなわち、 $A$ の各成分を $A_{ji}$ と書き表すとき、 $A^{\dagger}$ の各成分 $A^{\dagger}_{ji}$ は、
である。 これと複素数の複素共役の複素共役が元の値に等しいこと $(z^{*})^{*} = z$ を用いると、
が成立するので、 $(1)$ に代入すると、
と表せる。 ここで $\sum_{i=1}^{n} A^{\dagger}_{ji} x_{i}$ は、ベクトル $A^{\dagger}\mathbf{x}$ の第 $j$ 成分であるので、すなわち、
であるので、
と表せる。 最後に複素内積の定義から
が成立することが分かる。
補足:
  本サイトでは、 随伴の記号に $\dagger$ を用い、 複素共役に $*$ を用いているが、 これは物理学や一部の工学の慣習に従っている。 一方で数学の世界では、 随伴の記号に $*$ を用い、 複素共役にバー ( 例: $\overline{A}$ ) を用いることが多い。
  また、 随伴行列 (adjoint matrix) はエルミート共役行列 (Hermiter conjugate matrix) と呼ばれることもある。